2013年12月23日月曜日

年末のあいさつ

クリスマスの週になりましたね。仕事は先週まで、今週末から休みという外国人が多いと思います。日本では今日は天皇誕生日で祝日ですから、クリスマスパーティーをする日本人が多いでしょう。クリスマスパーティーでは日本人も「メリークリスマス」と言って、乾杯をしたり、プレゼントを交換したりします。

でも、西洋の国と大きく違うのは12/26からは町や店からクリスマスの飾りが消えて、お正月の準備に入ることです。デパートやビルの入り口、個人の家でもクリスマスツリーから門松(かどまつ)に、つまり洋風から和風に変化します。

年末のあいさつは「よいお年を」。これについては以前も書いたことがありますが、「よいお年を」と「あけましておめでとう」の違いを知らない人は意外と多いので、もう一度書きます。
12月半ば頃から12/31の大みそかまでは「よいお年を」と言います。
1/1からは「あけましておめでとう」です。 「あけまして」というのは「新年が始まる」という意味です。
日本人は年賀状というお正月のあいさつのカードを出します。普通は12月末までに書いて、ポストに入れると、1/1~3には相手に届きます。この年賀状には「あけましておめでとう」と書きます。なぜなら、相手がカードを見るのはお正月になるからです。年末に書いているけど、「よいお年を」とは書きません。注意してくださいね。

みなさん、今年もこのブログを読んでくださって、ありがとうございます。また、コメントをくださった方たち、本当にありがとうございます。私がこのブログを続けていく励みになっています。来年もみなさんの日本語の勉強の助けになれるように、私も日々日本語について考えていきます。

では、まずはメリークリスマス! 家族や友達との時間を楽しんでください。
そして、よいお年を。いい気分で新年を迎えられますように。

2013年12月 
岡本美奈子 (Minako Okamoto)

2013年12月8日日曜日

Merci d'être qui vous êtes.

日本語能力試験が終わって、クリスマス休みが近づいて、みなさんの日本語の勉強も休憩モードになっているかもしれませんね。テストの勉強をしていた方、お疲れさまでした。勉強しながら、日本語のおもしろさや、母国語との違いなど色々な発見があったと思います。

外国語の間には翻訳しにくい、または直訳できない表現がたくさんありますね。でも、同じ人間なのですから、言いたいことは基本的に同じです。そんな表現は訳せないのではなくて、言語や文化の違いから異なる言い方で表されているのですよね。
例えば、今日の投稿のタイトルは "Merci d'être qui vous êtes." というフランス語で、これは英語に直訳することができます。 "Thank you for being who you are."  フランス語と英語は言語的に近いので、直訳できるのですね。でも、日本語には直訳することはできません。この "who" は「だれ」にはなりません。

できるだけ原文に近いままで訳すと、次のようになります。相手の存在と相手の持つクオリティに感謝している気持がよく表れています
あなたがあなたでいてくれて、ありがとう。
もっと自然に簡単に訳すと、次のようになります。
あなたがいてくれて、うれしい。/よかった。 
この文は相手のクオリティというより、相手の存在に感謝を表していますが、「あなたが (私と)一緒にいてくれて、うれしい。」 と言えば、"I am happy that you are with me." になって、「一緒にいること」への感謝に変わります。

あるフランス人は "Merci d'être qui vous êtes." が日本語に直訳できないことに気が付いたのでしょう。それで、この文を「(あなたが)生きていて、ありがとう」と意訳しました。これはとてもいいステップだと私は思います。母国語で考えていることを日本語で言えそうなことにうまく変えてみるというのは大切です。直訳するくせが付いている人は、辞書がないと話せない人になってしまうおそれがあります。母国語で頭に浮かんだ単語や表現が日本語でわからない時に、それに似ている単語や表現を探したり、自分の考えをシンプルにしてみるという作業をしてみてください。

ところが、「生きていて、ありがとう」という表現は実際に日本人が聞いたら、意味がわかるような、わからないようなあいまいな表現です。「生きていて、よかった。」の方が実際に使う表現だと思いますが、もう少し詳しく見てみましょう。
生きていて、よかった。
「生きている」=「死んでいない」ことに感謝を表しているので、事故や病気などの後で、元気になった場合などに使えます。ただ、この文が急に出てくると、「だれが生きていることがうれしいのか」が少しあいまいです。それで、ある単語を加えてみましょう。
生きていてくれて、よかった。
「くれて」を入れると、自分ではなく別の人が生きていることがうれしいというのがはっきりわかります。 「くれる」は自分の行動に対しては使いませんから。

自分が危ない場面を切り抜けて、自分の「生」に感謝する場合は、「生きていて、よかった。」だけでいいでしょう。場面や文脈からわかれば、「私」は必要ありません。また、自分がすごく感動したり、幸せを感じたりした時にもこの文は使えます。

今日は12月8日。信じられませんが、今年も間もなく終わります。みなさん、この一年はどうでしたか。自分の「生」に感謝して、「生きていて、よかった。」と思うことがたくさんありましたか。そんな人には幸せな年だったのでしょうね。
さらに、一年の終りに、大切な人に「生きていてくれて、よかった。」「一緒にいてくれて、よかった。」「あなたがあなたでいてくれて、よかった。」と感謝の気持ちを伝えられたら、すてきですね。



2013年11月20日水曜日

N4レベルで読む 日本の名作 『雨ニモマケズ』

今は11月下旬。東京の紅葉も美しくなり、間もなく12月の日本語能力試験ですね。テストの勉強をいっしょうけんめいしている方がたくさんいると思います。試験を受けるからには、合格したい、いい点がとりたいと思うのは当然のことですね。合格という目的を持って、集中して勉強することはとても効果的です。でも、仕事などで忙しい中、勉強していると「大変だな~、つまらないな~」と思うこともあるでしょう。私はみなさんにいつも楽しく勉強してほしいと思っています。

日本語上級者になれば、様々なテーマについて日本語で読んだり、聞いたり、話したりすることができます。それぞれの興味に合わせて、勉強することもできて、教科書的ではない日本語を知る機会が増えます。でも、初級や中級レベルだと本物の日本語(例えば、日本人向けの本や新聞、ニュースなど)を使って、勉強するのはなかなか難しいですね。教科書はもちろんいい教材ですが、教科書にのっている例文や読み物はほとんど同じテーマで、正直に言うとおもしろくないですよね。それで、私はいつも外国人が日本語の勉強に使える本物の日本語の教材を探しています。

今日は宮沢賢治(みやざわ けんじ)というとても有名な作家の短い作品を紹介しようと思います。
N4レベルの日本語学習者は辞書を使えばこの作品が読めます。それ以上の方たちには文法は簡単ですが、日本人ならだれでも聞いたことがある文章なので、ぜひ読んでみてください。
宮沢賢治(みやざわ けんじ)は1896年に東北の岩手県で生まれて、1933年に亡くなりました。紹介する作品は彼が死ぬ2年前に書かれました。
「雨にも負けず」 (あめにもまけず)
雨にも負けず 風にも負けず 雪にも夏の暑さにも負けぬ じょうぶな体を持ち 
欲(よく)はなく 決して怒らず(いからず) いつも静かに(しずかに)笑っている(わらっている)
一日に玄米(げんまい)四合(よんごう)と みそと少しの野菜を食べ 
あらゆることを 自分を 勘定(かんじょう)に入れずに
よく見、聞き、知、わかり そして忘れず
野原(のはら)の松(まつ)の林(はやし)のかげの  小さなかやぶきの小屋(こや)にいて
東に病気の子どもあれば 行って 看病(かんびょう)してやり 
西につかれた母あれば 行って その稲(いね)の束(たば)を負い(おい)
南に死にそうな人あれば 行って こわがらなくてもいいと言い
北にけんかや訴訟(そしょう)があれば つまらないからやめろと言い 
ひでりの時は なみだをながし 寒さの夏は おろおろ歩き
みんなに「でくのぼう」とよばれ ほめられもせず 苦(く)にもされず
そういう者に 私は なりたい 

以上です。
原文は漢字とカタカナの交じり文で、実は漢字はあまり使われていません。上の文章は読みやすくなるように私が漢字をもっと入れて、それ以外はひらがなで書きました。

 文法のポイントは「~ず」、「~ば」と受け身形 (passive form) です。漢字と単語は調べなければなりませんが、それがわかれば理解できるはずです。読んでみて、質問があればコメントを書いてください。また、日本語の質問だけではなく、こんな生き方についての意見もあれば、ぜひ聞かせてください。
 
 
 
 

2013年10月25日金曜日

村上春樹 Haruki Murakami

先日ノーベル賞の発表がありました。今年も村上春樹(むらかみ はるき)がノーベル文学賞を受賞することはできませんでしたが、彼が現代を代表する作家であること、世界中で多くの人が彼の作品を楽しんでいることに変わりはありませんね。

私にとっても、もちろん村上春樹は一番の作家です。彼の作品を読むたびに、彼と同じ時代に日本に生きて、同じ言語を共有しながら、彼の書いたものを理解できるという喜びを感じます。彼の作品は色々な言語に翻訳されているので、世界中の人たちが読むことができるのですが、やはりオリジナルの言語は日本語ですし、外国語に翻訳しにくい部分や、日本人なら当然のように受け入れられることも作品の中にはたくさんあるでしょう。そういう訳で、彼の書いたものをそのまま理解できるというのは「日本語を話す人の特権だ」と思うほど、彼の本が好きです。

今年、NHKのラジオ番組で『英語で読む村上春樹』という番組があります。「村上春樹の作品を日本語と英訳で読んでみよう」というものです。
この番組は英語を勉強する日本人向けに作られているのですが、番組用のテキストは日本語と英語を比べているので、日本語授業の教材としても使えます。
この番組で10月からは『かえるくん、東京を救う』という村上の作品を採りあげています。すると、さっそく、この「かえるくん」という言葉をどう翻訳するかという問題にぶつかります。どう訳しているか興味のある方はご自分の言語の翻訳版を見てみてください。さらに、みなさん自身の日本語訳と比べてみるのもおもしろいと思います。おもしろい違いを見つけたら、ぜひこのブログにコメントをして教えてください。

村上春樹はやはり、私の外国人生徒たちや友だちにも人気で、ほとんどの人たちが彼の本を一度は読んだことがあります。村上作品のファンだから日本に来たという観光客にも会ったことがあります。彼は本当に日本を代表する日本人ですよね!
私はよく村上のエッセイを教材として使っています。小説は長いので授業中に読むのはなかなか大変ですが、彼の書いたエッセイは2ページぐらいなので早く読めますし、小説には現れていない村上の違う面を知ることができるのです。何より、村上ファンの生徒たちが楽しんで読んでくれます。そして、彼の日本語を教える立場から読んでみると、複雑な文を書いていないことがよくわかります。
エッセイは日本語ではたくさん出版されているので、興味のある方は本屋などで探してみてください。

以前に教えていた生徒の一人は「ある夜、村上がよく行く東京のジャズバーで村上に会って、サインをしてもらった」という話をしてくれました。その時に「どうして私に電話で知らせてくれなかったの?!」と私は怒りましたが、実際会ったら何を話していいかわからないでしょうね。

みなさんは彼のどの作品が好きですか?私は一番を選ぶことができませんが・・・

村上の出身地 京都伏見(きょうと ふしみ)

村上が育った神戸周辺
 

2013年9月7日土曜日

someone =だれか? something =なにか?

*English translation

みなさんは「伊勢神宮」(いせじんぐう)と「出雲大社」(いずもたいしゃ)を知っていますか?または、訪れたことがありますか?この二つは日本の二大神社で、なんと2013年は両方の神社で「神様のお引っ越し」があるんです。これは「式年遷宮」(しきねんせんぐう)と呼ばれ、伊勢では20年に1回、出雲では60年に1回行われます。
もっと詳しく言うと、伊勢では現在の神社のとなりに次の神社をそっくりそのまま造り、出雲では現在の建物を修理しながら新しくして、それから神様を引っ越しさせます。今年は20年と60年が重なったので、日本ではビッグイベントになっています。

さて、長い歴史を持つ神社の話は長くなるので、ここで一旦止めて、今日は「だれか、なにか」について考えてみます。「だれか=someone、なにか= something 」と訳すのが一般的ですが、これも単純に訳せない単語のようです。
英語ではよく次のように言いますよね。
I am busy tonight. I am going to meet someone.
これを日本語でどう言いますか?
今夜は忙しい。だれかと会うから。
う~ん、この訳は変です。日本人は次のように言うでしょう。
 今夜は忙しい。人と会うから。
だれか」という単語が「だれです」という質問からできていることから、「だれか」は「その人がだれだかわからない」という意味を含んでいます。その人を特定できないということ。
つまり、「だれかと会う」というのは「知らない人と会う」ということです。約束があるのに、だれだかわからない人に会うというのはおかしいですね。たとえ、ブラインドデートのように初めて会う相手でも、約束をしたからにはその人の情報があって、ある程度特定できています。

その代わりに、「人と会う」と言う場合は、話し手はその人を知っているが、聞き手がその人を知らないので、その名前や情報に言及していないだけです。もちろん、「友だちと会う、妹と会う、紹介してもらった人と会う」など具体的に言うことも可能です。

では、「だれか」を使う例文です。
  1. だれかが私の財布を拾ってくれた。
  2. (道に迷った時) だれかに道を聞こう。
二つとも相手の名前など情報がない場合ですよね。全く知らない人なのです。

次に、「なにか」と "something" も同じように考えてみましょう。例えば、ホームパーティーに招待された時に、ホストにこう聞きますね。
Should I bring you something?      なにか持って行きましょうか?
この場合は「を持って行く」まだわからないので、 その物を特定できないため、「なにか」を使います

では、旅行で買って来たおみやげを友だちにあげる場合はどう言いますか?
英語では "I brought you something." と言ったりしますよね?でも、ここで "something" を「なにか」と訳すことはできません。おみやげを買った人はそのおみやげの中身を知っているからです。自分が買った物を知らないということはあり得ませんね。それで、日本語はこうなります。
  • おみやげを持って来たよ。
  • (それがお菓子なら) お菓子を持って来たよ。
  • いい物を持って来たよ。
このテーマにおいては、日本語の方が英語より具体的な表現をするんですね。

最後に、また神社の話です。
伊勢ではこの神様の引っ越しの儀式が690年から20年ごとに続いています(戦争での中断はありましたが)。これってすごいと思いませんか?私は神様を信じているわけではありませんが、紀元前から伝えられている神話や歴史的事実に基づいて、今でも厳しゅくに、かつ大がかりに神様にまつわる儀式が行われているということは、とても興味深いです。来月2日と5日に伊勢神宮で式が行われるので、興味のある方は行ってみてはいかがですか?

2013年8月23日金曜日

夏休みの宿題

8月は残り1週間で、日本の学校の夏休みはまもなく終わります。そこで、ぎりぎりですが、夏休みの宿題を出そうと思います。みなさん、次の問題を考えてみてください。
  1. おばあさんは笑って改札口から出てくる孫を出迎えた。
  2. おばあさんは笑って改札口から出てくる孫を出迎えた。
この二つの文は完全に同じですが、この二つの文にそれぞれ点(、)を一つ入れて、違う意味の文にしてください。
  1. おばあさんが笑っている場合
  2. 孫が笑っている場合
答えがわかったら、コメントに投稿してくださいね。簡単かな?

*『ほんとはやさしい小論文』、北岡充子、文英堂、2011年

2013年8月5日月曜日

「ところ」と「ばかり」

暑中お見舞い申し上げます。
8月に入り、夏休み中の方も多いと思います。楽しい夏を過していますか。
私は先月、京都と神戸周辺を旅行して来ました。だれでも京都は好きだと思いますが、今回京都へ行って、「この町は100回訪れても、絶対に飽きないだろう」と感じました。見たい物や所がたくさんある上に、じっくりゆっくり見て回りたいので、京都を制覇するのには時間がかかるという訳です。

さて、今日は質問があった「ところ」と「ばかり」の違いを説明します。どちらも英語では "just" と訳されることが多いですね。では、まず「ところ」から始めましょう。
ところ:①今、②今の直前、③今の直後を指す。例えば、今が午前10:00なら「9:45~10:00~10:15」ぐらいの時間の幅でしょうか。「9:30~10:00~10:30」ぐらいもカバーできるかもしれません。
①は「しているところ」、②は「するところ」、③は「したところ 」というように、動詞の時制 (tense) を変えます。「ところ」の例文は7/11の投稿「"just" を日本語で言うと?」を見てください。
ばかり:「今」という瞬間を表す単語ではない。話し手が「ある行為をちょっと前にした」と表す時に使う。それで、過去のことしか表せない。
  1. 友だちと待ち合わせをして、友だちがちょっと遅れてきた。友だちに「ごめんね。待った?」と聞かれて、「5分前に着いたばかりだよ。」と答える。
  2. 日本にこれから3年間住む予定の人に「いつ日本に着いたんですか?」と聞く。その人は「1週間前に着いたばかりです。」と答える。
この例文1と2を比べると、「着いたばかり」という表現は同じでも、どのぐらい前に着いたかという「時間の幅」は大きく違いますね。もうひと組、例文を提示します。
  1. 昼ごはんをたくさん食べた後に、友だちがケーキを持って来た。私は友だちに「30分前に昼ごはんを食べたばかりだから、まだおなかが空いていないよ。」と言う。
  2. きのうレストランで天ぷらを食べたのに、今日の家での夕食も天ぷらのようだ。私は母に「きのう天ぷらを食べたばかりだよ。」と言う。
「ちょっと前」というのは明確に時間を決められません。人によって、または場合によって、時間の幅が変わるのです。「ちょっと前」も「ばかり」も人によって、感じ方が違う主観的な表現です。それで、ばかり」を使う時は「5分前」や「1日前」などの時の言葉を入れないと、その行為をいつしたかが聞き手にわかりません。

これに対してところ」は、「ちょうど」や「今から」、「さっき」という時の言葉がなくても、動詞が te-formか、dictionary formか、ta-form かを見れば、その行為が今行われているのか、または今の前か、今の後かがわかるようになっています。


暑い京都でもお寺では庭から涼しい風が吹き抜けます。


伏見稲荷大社(ふしみいなりたいしゃ)では夏祭りの準備ができていました。

2013年7月11日木曜日

"just" を日本語で言うと?

日本は猛暑です!先週の土曜日から急に気温が上がって、毎日35度以上。いつまで続くのでしょうか?
日本人は家の前に水をまくとか、窓の下に植物を育ててグリーンカーテンを作るとか、冷たいそばを食べるなどの暑さ対策をとりますが、みなさんの国ではどんなことをして、暑い夏を乗り切りますか?

話は変わって、英語の "just" を日本語に訳すのはなかなか難しいようです。日本語ではひとつの単語では不十分なんですね。英語の辞書で "just" を見てみると、使い方がたくさんあって、「ちょうど」と「だけ」の二つでは表せません。英語の辞書にそって、順番に見ていきましょう。

① exactly
  • It is just two o'clock.  ちょうどぴったり 2時です。
  • It is just my size.  ちょうど 私のサイズです。/私のサイズに ぴったりです。
  • This is just what I wanted.  これが ちょうど 欲しかった。
② exactly as, the same as, equally
  • She is just as beautiful as her sister.  彼女は 妹と 同じくらい きれいです。
③ barely, scarecely
  • I can just reach the shelf if I stand on tiptoe.  つま先で 立てば、かろうじてなんとか 棚に手が 届く。
④ -1 in the immediate past with た form
  • I have just seen John.  (ちょうど今) ジョンを 見た ところです。
④ -2 at this moment, now, immediately with 辞書 form
  • Please wait. I am just finishing a letter.  待ってください。(ちょうど今) 手紙を 書き終わる ところです。
④ -3 at this/that moment with て form
  • I was just having lunch when Bill rang.  ビルが 電話を かけてきた時、昼ごはんを (ちょうど)食べていた ところです。
④の場合は、「ちょうど今」や「ちょうど」と「ところです」を一緒に使ってもいいですし、どちらか一つだけでもいいです。

⑤ simply
  • Why not just wait and see what happens?  どうなるか ちょっと 待ってみたら どう?
  • Just listen what I am saying.  私の話を ちょっと 聞いて。
⑥ only, simply
  • There is just one way of saving him.  一つだけ 彼を 救う 方法が ある。/彼を 救う 方法は 一つ しかない
  • I waited an hour just to see you.  あなたに 会うため だけに 一時間 待っていた。
⑦ really, turly
  • The weather is just marvellous.  天気は 本当に すばらしい。

このように見てみると、「ちょうど」を使う場合は多いですが、「だけ」を使うのは意外と少ないんですね。「だけ」の意味は "only" (with no others of the same group, style, etc existing or present/ sole) と同じです。

2013年6月16日日曜日

雨の季節

このところ、東京の天気は雨が降ったり、止んだり、晴れたりしていますが、湿度はずっと高いですね。湿度が高くなると、不快指数も高くなるのですが、朝夕などのしっとりした空気感が私は好きです。湿気に慣れない外国人にはつらい季節かもしれませんが、今は梅雨ですから、雨が降って当たり前。この雨のおかげで、日本の山も田畑も潤うのですから、雨を嫌なものと思わず、日本の風土や文化の一部だと思ってくださいね。

日本は雨の国ですから、雨に関する言葉が多いのもみなさんは知っていますね。
例えば、「梅雨」(つゆ)。これは中国語も同じです。どうして「梅」の雨なのかというと、梅の実がなる頃に降る雨だからです。
2月に梅の花が咲いていた木を見ると、今は梅の実がついていますよ。まだ緑のもあれば、もう黄色くなって下に落ちているのもあります。
また「五月雨」(さみだれ)という単語もあります。陰暦で五月は今の六月。それで梅雨の頃に降る雨の呼び名です。 
そして、その雨がやんで、晴れ間が出ると、「五月晴れ」(さつきばれ)と言います。 「梅雨晴れ」は別の名前ですが、こちらがよく使われるでしょう。
なぜなら、「五月晴れ」は違う使い方もあるからです。現在の五月のさわやかな晴れの日という意味です。
二つの単語が重なっていますが、梅雨の合間の晴れは「梅雨晴れ」で、五月のさわやかな晴れは「五月晴れ」という使い方が最近では主流です。
やっと「梅雨」が終わって、晴れることは「梅雨明け」です。辞書によると、 「梅雨晴れ」とも言います。  
気象庁が「梅雨明け」宣言をすると、ニュースや天気予報がそれを報じて、日本各地で本格的な暑さが始まりますね。天気予報を日本語で見ている/聞いている人はこれらの言葉がよくわかるはずです。

ちなみに、もう一つ「五月」(さつき)を使った単語を紹介します。「五月闇」(さつきやみ)です。「闇」は "darkness" 。さつき、つまり陰暦の五月(今の六月)の夜は「一年の中で特に暗い夜」とされています。梅雨時で空に雲がかかっているので、月が出ない。それで、「さつきの夜は暗い」ことから「さつきやみ」という表現が生まれたのだそうです。
現代の世の中では電気の明かりがない夜を想像することさえ難しいですが、月明かりがない上に、湿って重い墨のような暗さを表す美しい表現だと思います。

今にも雨が降りそうな神戸

参考文献:『ことばの歳時記』、金田一春彦、新潮文庫、平成17年。


2013年6月9日日曜日

韓国

先週末 お隣の国、韓国はソウルに行って来ました。ソウルは東京から飛行機で2時間で行けますし、時差もないことから、週末の旅行が日本人の女性たちに人気です。私は約20年ぶりにソウルを訪れました。20年前の様子はあまり覚えていないので、今回この町の規模にびっくりしました!東京よりも人と車が多くて、建物も大きくて高い!東京は全体的に横に広がっている町ですが、ソウルはせまい面積に多くが集まっているので、自分がいる場所だけを見ると、東京より大きい町にいるような感じがしました。

そして、読めないハングル文字が町中に氾濫しているので、それに圧倒されました。ここ数年の私の海外渡航歴をさかのぼってみると、アメリカ、南アフリカ、フランスに行きました。アメリカと南アフリカは英語圏なので、問題なし。フランス語はほとんどわかりませんが、見慣れているアルファベットなので文字に圧倒されることはありません。
読めない文字に囲まれると、何だか不安になりますね。それと同時に不思議な感じもします。なぜなら、同じものを見ていても、私には全く意味をなさない文字が他の人たちには言葉として何かの情報を与えている。文字を知っているか知らないかで、町の風景がちがうものに見えているのですね。私はそういう体験を久々にしましたが、日本にいる外国人は日々そう感じていますよね。

???の韓国語


話すことに関しては、レストランやお店の人は日本語ができる人が多くて、あまり困りませんでした。日本と韓国はそれぞれ独自の文字を生み出しましたが、文法は類似点が大変多いと言われています。距離においても、歴史的な関係においても近い国ですから、言語も似ているのでしょう。漢字が基にある単語は発音も似ています。

よく生徒たちに「私は〇〇人だけど、私の国の人たちは日本語を学ぶのが早い?」とか、「どの国の人が一番早く日本語を学べるの?」などと聞かれます。そして、私は「韓国人は日本語が上手になるのがとても早いです。でも、韓国以外の国の人たちはみんな同じで、あなたがどのぐらい勉強するかによって、進歩は違います。」と答えます。

韓国人はびっくりする程早く日本語を話せるようになります。文法が似ているという点から、文を作る思考も共通点が多いのでしょうね。多少の間違いはあっても、すらすらと日本語が出てきます。ただ、話すことのレベルの高さに比べて、日本語を書くのは苦手なようです。濁点(゛)や促音(っ)の使い方が韓国語と日本語では違うのでしょう。

韓国人が日本語を早く学べるということは、日本人も韓国語を早く学べるということですね。他の外国語よりは比較的簡単なのだと思います。日本語が上手なみなさんなら、韓国語の勉強も楽しめるのではないでしょうか。

坂の町 ソウル
 

2013年5月11日土曜日

かわいそう ― "She looks pretty" doesn't exist in Japanese.

ゴールデンウィークが終わって、5月も半ばですね。東京ではさわやかな初夏の日があったり、気温が上がって夏のような日があったりしていますが、まだ蒸し暑さはなくて、快適です。ゴールデンウィーク最終日には京都大学で、日本人作家・村上春樹氏の講演がありました。抽選で選ばれた運がいい500人のみが聞きに行きましたが、もちろん私は抽選に当たる訳がなく、京都旅行の予定は消えてしまいました。

ところで、以前に「そう・らしい・よう」について書きましたが、今回は「そう」についてもう少し書いてみます。「~そう」と "look ...." を比べてみます。
例えば、「この料理はおいしそう。」という日本語を英語に訳すと、一般的には "This dish looks delicious." となりますね。

実は「~そう」と "look ...." には違いがあると私は思っています。同じ場合もあるけど、必ずしも同じではないのです。「そう」の定義は以下の通りです。
そうexpress the speaker's conjecture based on visual information. It concerns an event which might take place in the future or the present state of someone or something 
つまり、今見ているものの状態から、 そのものの本質やこれから起こる可能性を推測する場合に使うのではないでしょうか。
例1)この料理はおいしそう。:食べる前に料理を見て、これを食べたら「おいしいだろうな」と思う。
例2) この本は難しそう。:本を開いたら、漢字が多くて、この本を読むのは難しいという可能性があると思う。 
例3) 外は寒そう。:朝起きて、窓を開けて、雪が降っていたら、外の気温は低いだろうと推測する。
 
これに対して、英語の "looks + adjective" は今見ているものがどう見えているかを表すのに使うのだと思います。
look: appear, give the impression of being or doing something 
そのため、英語ではきれいな花を見て、"This looks pretty." と言ったり、大きい家を見て、"This looks big." と言いますね。でも、これらを「きれいそう。」や「大きそう。」と訳すのは間違いです。
なぜなら、ある花を見て、それをきれいだと思ったら、日本語では「この花はきれいです。」と言うからです。きれいなものを直接見ているのに、「この花はきれいだろう」という思考をしません。同様に、目の前に大きいものがあれば、可能性や推測は必要がなくて、「これは大きいです。」とはっきり言います

ですから、"She looks cute." は「彼女はかわいいです。」となります。かわいい人が目の前にいれば、「かわいいです」と断言します。くれぐれも「彼女はかわいそうだね。」と言わないようにしてください。これは間違いだけでなく、違う意味になってしまうからです。「かわいそうな」という形容詞の意味は "pitiful" で、「彼女はかわいそうだね。」は "I feel pity for her." です。

これに関係して、知り合いのアメリカ人からおもしろい話を聞いたことがあります。彼女の息子が公園で転んで、けがをして、大泣きをしていた時に、通りがかった日本人が泣いている息子に「かわいい~」と言っていたそうです。「こんな時でも日本人は外国人の子どもをかわいいと感じるのか」と彼女は思ったそうです。
この話を聞いた時、私は「違う」と思いました。実際日本人は「かわいそう~」と言っていたはずです。痛がっている子どもを気の毒に思って、そう言ったのです。でも、アメリカ人のお母さんは「かわい」と聞こえたので、「かわいい」と言われていると思ったのでしょう。おかしいですね。


2013年4月20日土曜日

オノマトペでつづる香川旅行記

4/13~4/15 2泊3日で四国の香川県に行きました。四国はなぜか大好きな所で、とっても楽しい旅行ができました。この旅行の思い出をオノマトペ、つまり擬態語、擬音語をできるだけ使って書きました。みなさんはオノマトペからどんな印象をうけるでしょうか?

この旅行は出発日の朝寝坊で始まりました。飛行機が早朝の便だったため、私は5時に起きる予定でした。でも、目覚まし時計をセットするのを忘れてしまったので、私は5時を過ぎたことを知らずに、グーグー寝ていた訳ですね。そこに、一緒に旅をする大阪の友人からメールが送られてきました。「今、関西で大きい地震があったよ!」と。私はそのメールで目を覚ましました。時刻を見ると、5:40!!
私は急いで起きて、ウキウキ準備をする間もなく、バタバタ家を出ました。どうにか、飛行機に間に合いました。関西や四国の状況は大丈夫かなと、ヒヤヒヤしましたが、幸い大きな地震の被害はありませんでした。でも、もし地震がなかったら、もし友人がメールをしてくれなかったら、旅行の計画は台無しになっていましたね。ヤレヤレ

私たちは香川県の直島(なおしま)と豊島(てしま)に行きました。目的はそこで現代美術を鑑賞すること。私は美術全般が好きですが、特に現代美術が大好きです。現代アートでは見るだけではなく、自分で色々な体験ができることや、身の周りにある普通のものが特別に見えることが魅力です。島でたくさんの作品にふれて、ドキドキワクワクしっぱなし。ポカポカの春の日に本当にいい時間を過ごしました。



二つの島は静かで、とてもきれいな所でした。でも、小さい島に一つ問題があるとすれば、「食べたい時に食事ができない」ということです。島には食堂が少ししかないし、営業時間も短いし、観光客で混んでいる場合や、フェリーやバスの時間をチョイチョイ気にしなければならない場合に、食事をするのがとても難しいのです。
1日目の夜から2日目の夜まで、私たちはコンビニで買ったおにぎりとパンしか食べられなくて、お腹がペコペコでした。お腹がすいていると、人はイライラするものですね。食事ができないことにプリプリ腹を立ててしまって、後で反省しました。いつもセカセカしている都会人と違って、島の人たちはゆったり、ほのぼのしています。それが田舎の良さなんですよね。

最終日の目的は歌舞伎(かぶき)を見ることでした。香川県琴平(ことひら)町には現存する最古の芝居小屋があります。江戸時代(1835年)に作られた木造の小さな劇場で歌舞伎を見るのは素敵だと思いませんか?ざぶとんに座って、幕が開くのをソワソワ待っていました。
間近で見られる歌舞伎役者のイキイキとした演技はすばらしくて、エネルギ―をガンガン感じました。観客はみんな、すばらしい場面ではパチパチ拍手をして、おかしい場面ではクスクス笑っていました。



歌舞伎の余韻にひたりながら、午後は隣のこんぴら宮(神社)へお参りしました。1368段の階段をテクテク上って、最後の奥社に着いた時は本当に気持ち良かったです。山の上ではさわやかな風がソヨソヨ吹いていました。神社のキリリとした神聖な空気は自分の心をスッキリきれいにしてくれる気がしますね。



やっぱり旅はいいものですね。次はどこに行こうかと考え中です。

2013年3月17日日曜日

駅のアナウンス

*English translation

東京には春が来ましたよ。みなさんの町はどうですか?昨日は東京の桜が開花しました。うちの近くの桜も少し咲いていました。暖かくなったのはうれしいですが、桜はやっぱり4月に咲いてほしいな~。
さて、日本に住んでいる人たちは毎日の通勤などで電車に乗る機会は多いですね。その時にはいつも駅や電車内でたくさんのアナウンスを聞きますね。「あのアナウンスは一体何を言っているの?」とよく生徒たちに聞かれるので、今日はその謎を解いてみましょう。

まず皆さんが最初に覚えて、自分で意味を推測している言葉は「まもなく」ではないですか?「まもなく」から始まる文は大体こんな風です。
①まもなく3番線に渋谷行きが参ります。(まもなく さんばんせんに しぶやゆきが まいります。)
まもなく:soon
三番線に:to platform number 3
渋谷行き:(a train) going to Shibuya
参ります:to come 「まいります」は「来る」の謙譲語(けんじょうご)です。駅員から見ると、電車は身内のもの。その電車はお客様が乗るために駅に来るので、ここで謙譲語を使っています。
 
 電車が近づくと危ないので、次のアナウンスはこうなります。
②白線/黄色い線の内側に下がって、お待ちください。(はくせん/きいろいせんの うちがわに さがって、おまちください。)
白線:the white line
黄色い線:the yellow line
内側に:on the inside
下がって:to move back 「さがって」は「さがる」のて形
お待ちください: Please wait. 「お」はていねい語。
 
ここからたくさんの注意が始まりますよ。
③手荷物をドアにはさまれないようご注意ください。(てにもつを ドアに はさまれないよう ごちゅうい ください。)
手荷物:handbag
ドアに:by the door
はさまれない:to put something between  はさまれる (a passive form): to be put between, to get caught in はさまれない(a negative passive form): not to get caught in
よう:do something in a such way that… はさまれないよう ご注意 ください: Be careful so that you don’t get your hands caught.
注意:care, attention ご注意ください:Please be careful, Please watch out, Please take caution.  「 ご」はていねい語。漢字の単語の前に使われます。
 
まだ注意が続きますよ。
④ドアが閉まります。ご注意ください。(ドアが しまります。ごちゅういください。 
閉まります: to close
 
ドアが閉まる時、次のことをしてはいけません。
⑤かけこみ乗車はお止めください。(かけこみ じょうしゃは おやめください。)
かけこみ: a dash/dart/rush
乗車: boarding
止めます: to stop/quit
 
次の注意はロンドンの地下鉄でもおなじみです。いつも聞いたので、私の頭の中に強く残っています。
⑥足元にご注意ください。(あしもとに ごちゅういください。)
足元: at your feet

その理由は次の通りです。
⑦電車とホームの間が広く開いております。(でんしゃと ホームの あいだが ひろく あいております。)
ホーム: a platform
間: between
広く: widely
開いています: to be open 開いております:「おります」は「います」の謙譲語。
 
そして、もちろん駅や乗り換えの案内もあります。
⑧次は新宿。乗り換えのご案内です。(つぎは しんじゅく。のりかえの ごあんないです。)
次: the next one/stop
乗り換え: a train transfer
案内: guidance, information 「 ご」はていねい語。漢字の単語の前に使われます。
 
少し手助けができたでしょうか?明日から駅や電車内、ちょっと気をつけてアナウンスを 聞いてみてください。きっと意味がわかると思います。

東京のラッシュ時の電車はとても混んでいて、耐えがたいですが、日本の電車は時間通りに来るし、テレビがついているし、感心することも多いです。
地方にはお客さんを集めるために、おもしろい電車もたくさんあります。私も青森で乗りましたが、三味線ライブのある「三味線電車」、寒い冬に車内で暖まる「こたつ電車」、おもちゃの博物館のような「おもちゃ電車」など。女子会寝台車もとても人気だそうです。
これから春の電車の旅を楽しむのもいいですね!



 

2013年2月17日日曜日

そう、らしい、よう、みたい

*English translation

暦(こよみ)の上ではもう春ですが、2月はまだまだ寒いですね。東京も毎日空気が冷たいです。ちなみに、「暦(こよみ)の上では」というのは「カレンダーでは」という意味で、天気のことを話す際に、よく使われます。

前に「そう、らしい、よう、みたい」の説明をしてくださいというリクエストをもらっていたので、今日はこれらについて書きます。私の授業でも時々聞かれる質問です。

まず、この4つの単語を「聞くこと」と「見ること」に分けましょう。「そう①」と「らしい」は「聞くこと」、「そう②」と「よう」と「みたい」は「見ること」になります。

では、「聞くこと―そう①、らしい」から。この2つの違いは「そう」は聞いた情報が確かな場合「らしい」は聞いた情報が不確かな場合と考えましょう。
天気予報を見た後で、その情報を友だちに教える場合:明日は雨が降るそうだよ。(教科書でもよくある例文ですね。) 
うわさを友だちに教える場合:田中さんは会社をやめるらしいよ。 

うわさ程度のことをだれかに伝える場合は「らしい」を使うと覚えれば、この2つの使い分けはそんなに難しくないですね。

次に、「見ること―そう②、よう、みたい」ですが、「よう」と「みたい」は同じだと考えてもいいので、「そう 」と「よう/みたい」を比べてみましょう。
空を見ていて、だんだん雲が広がり、空が暗くなってきた場合:もうすぐ雨が降りそうだね。 (It is likely to rain.)
 これは空を見ながら、雨が降る可能性を推測しています。つまり、今の状態を見て、将来の可能性を考えているのです。次の文もある店の状態を見ながら、先の可能性を推測しています。
いつもお客さんが全然いないのに、営業している店を見ている場合:この店はつぶれそうだね。 (It is likely that this store will close down.)
 
これに対して、今見ていることから何かを判断して、今の様子を伝える時には「よう/みたい」を使います。 次の例は「つぶれそう」という可能性を話しているのではありません。
今、店員がお店の中や品物を片づけているのを見ている場合:この店はつぶれるようだね。(It seems that this store is closing down.)
 
もう一組、例文を比較してみましょう。
友だちが毎日たくさん勉強しているのを見ている場合:彼はテストに合格しそうだね。(He is likely to pass an exam.) (将来の可能性の推測) 
テストの後、友だちがとても喜んでいるのを見た場合:彼はテストに合格したみたいだね。 (It seems that he has passed an exam.) (今見ている状態から判断し、今の状態を結論づける
 
最後に、これらの単語を実際に日本人がどうやって使い分けているかを紹介します。このブログを書く前に、私はどんな説明がいいかを考えていました。その時に、歴史の本には「確かな情報や不確かな情報、そして、ある状態を見て判断したこと」がたくさん書いてあることに気が付きました。それで、いくつかの文をある歴史研究の本(*1)から引用します。「三菱(みつびし)」という日本の会社はみなさんも知っていますね?この会社の創始者・岩崎弥太郎(いわさき やたろう)の子ども時代の話をここで引用します。

弥太郎が生まれた岩崎家は高知県安芸市(こうちけん あきし)に現存します。わらぶき屋根の簡素な家で、地位は武士(ぶし/さむらい)の身分を失った元武士でした。(これは事実です。)
岩崎家の生活は苦しかったようだ。 (著者が上の状態から判断したことですね。)
 
弥太郎は昼夜の別なく、 激しく泣きわめく癇の強い赤ん坊で、母の美和も困り果てたらしい(これは事実かもしれませんが、人から人へうわさのように伝わったことでしょう。)
  
 岩崎家には小さい庭があって、 そこには庭石がふしぎな形で置かれています。(事実です。)
これは日本列島をかたどったものだそうだ。居ながらにして日本全土を俯瞰(ふかん)しようと、弥太郎が自らつくったという 
(実際にその庭石が残っていることから、日本の地図を作ったという事実は100%確かじゃなくても、ある程度確かだと考えてもいいかもしれませんね。「という」は「そうだ」と「らしい」の間と言えるかな。確かとも不確かとも言えます。)
私たちは弥太郎が成長して達成した偉業と、子ども時代、貧しさに負けず一生懸命勉強したことを知っているので、「やはり彼が若い時から日本全体を視野に入れて、成功することを夢見ていた」と信じたいのですね。だから、最後の文はうそか本当かわからなくても、今まで伝わってきていることなのです。


註)そう①:any short form+そう、そう②:ます形+そう
*1 『岩崎弥太郎と三菱四代』、河合敦、幻冬舎新書、2010年


この投稿には続きがあります。興味がある方は「かわいそう―"She looks pretty" doesn't exist in Japanese.」も読んでみてください。
 

2013年1月12日土曜日

風が吹けば、桶屋が儲かる

お正月休みが終わりました。みなさんの休みは楽しかったですか?私はいつも通りのお正月で、家族とおせち料理や色々おいしい物を食べて、過ごしました。今年は着物を着たのがちょっと変化でしたね。
では、早速ですが、みなさんは次の表現を聞いたことがありますか?
風が吹けば、桶屋が儲かる。
    (かぜがふけば、おけやがもうかる。/おけ: wooden bucket )    

これは江戸時代に現れたことわざです。この一つの文だけでは意味を成さないので、全部を紹介します。
大風が吹けば (A)、土ぼこりが立つ。
土ぼこりが目に入れば、盲目の人が増える。
盲目の人たちは三味線を買う。(*当時、盲目の人たちの多くは三味線を作る仕事をしていた。)
三味線に使う猫の皮が必要になれば、猫が減る。
猫が減れば、ねずみが増える。
ねずみは桶をかじる。
桶がかじられて、桶の需要が増えれば桶屋がもうかる (B)。
 
このように長いストーリーがありますが、つまり「あること(A)が起こると、その影響がめぐりめぐって、意外なこと(B)にまで影響が及ぶこと」を意味しています。おもしろい表現ですよね。

A   ば、B   。」 A と B の関係は A が仮定で、A によって B がもたらされる。「~ば」は「~たら」、「~と」でも言い換えられます。ここで B は話し手の意思を持った行為ではありません。それとは無関係のことが起きるのです。話し手の意思で B をコントロールすることはできません。だから、「~と」も使うことができます。もし、 B が話し手の意思を持った行為の場合、「~と」は使えません。例えば、
風が吹けば、サーフィンに行こうと思う
風が吹いたら、サーフィンに行こうと思う
これが、「~ば」「~たら」「~と」の違いの一つです。

ちなみに、上記のことわざは北海道の海沿いの町では三味線や猫ではない話で伝わっているそうです。北海道(一部)版は次のとおりです。
北風が吹けば、流氷が来る。
流氷が来れば、急激に気温が下がる。
気温が氷点下まで下がれば、桶が凍って、壊れる。
桶の需要が増えれば、桶屋がもうかる
北海道の極寒の海の町ならではのストーリーです。過程は違っても、結果は同じ。言いたいことも同じです。ただ、その地方の特色が表わされていて、これもおもしろいですよね。
 

2013年1月4日金曜日

新年

あけましておめでとうございます!2013年(平成25年)が始まりましたね。
皆さん、ひとりひとりにとって、また世界にとって、良い年になるように願っています。
今年もよろしくお願いします。

岡本 美奈子 (Minako Okamoto)