2017年12月13日水曜日

ずつ is an expression of sharing.

Christmas is a time for sharing. ですから、12月の投稿では公平な共有 (fair share) について書こうと思います。不公平ではいけません:)
早速、例を見てみましょう。
ここにクリスマスのクッキーが15個あります。そして、Aさん、Bさん、Cさん、3人がいます。このクッキーを3人で公平に共有しましょう。
  • Aさん ○○○○○
  • Bさん ○○○○○
  • Cさん ○○○○○
1人5個ずつクッキーをもらいました。
これが「ずつ」の使い方です。みんなが同じ数をもらわないといけないのです。
では、もう一つ例を見てみましょう。
ここに15人の子どもがいます。みんなでグループを作って、ゲームをします。 グループの人数は同じ数じゃないと、ゲームが公平にできないので、公平に15人を分けましょう
  • Aグループ 
  • Bグループ 
  • Cグループ 
1グループ5人ずつでゲームをします。または、5人ずつのグループでゲームをする、と言うこともできます。
私はよく美術館に行きます。美術館では鑑賞者が部屋に入って、作品を見たり、体験したりできる場合があります。 小さい部屋だと、部屋に入れる人数が限られていることが多いです。例えば、「一回2人ずつ」など。それは次のようになります。
  • 前回 
  • 今回  
  • 次回  
これも毎回同じ人数が入って、公平に作品を楽しめるようになっています。
「ずつ」のコンセプトがわかりましたか?キーワードは「公平な共有」です!

それから、「ずつ」と似ている他の表現もありますね。例えば、「につき」 (per) と「」 (each) なら次のようになります。
クッキーの例:1人につき5個、(*「各人」はおかしいので、使いません。)
子どもの例:1グループにつき5人、グループ5人(ずつ
美術館の例:1回につき2人、回2人(ずつ) 
また、「少しずつ」という表現は「少し」という一定の量を繰り返すという意味になります。
毎日少しずつ漢字を勉強する。
今日少し勉強して、明日も少し勉強して、あさっても少し勉強して・・・と同じぐらいの勉強量を毎日続けているということですね。「共有」と言うと変ですが、意味の関連性は感じられます。

今年のブログは今日で終わりです。今年もたくさん読んで頂き、本当にありがとうございました!語学の勉強は継続です。「継続は力なり」です!来年も日本語についてもっともっと考えていこうと思っているので、みなさんが日本語の勉強や研究を楽しみながら、続けてくれると嬉しいです。

それでは、”共有の精神で”クリスマスを楽しんでください。そして、良い冬休みをお過ごしください!!



2017年11月18日土曜日

日本語と Google Translate

最近は Google Translate をはじめ、漢字や単語を読んでくれるものなど、言語の翻訳に便利なツールがあふれていますね。みなさんも好きなツールを使いながら、日本語を勉強したり、日本での生活に役立てたりしていると思います。
でも、みなさんもすでにご存知のとおり、日本語→(主に)英語の訳は必ずしもうまく行くとは限りませんね。私も生徒から翻訳ツールを使ったんだろうなと推測できる日本語の文章(ちょっと不自然)でメッセージをもらうことがあります。また、「教科書のこの文を翻訳ツールで訳そうとしたけど、うまくできなかった」と聞いたこともあります。以前に読んだ記事では、翻訳機能を開発している会社が「日本語は主語を省略するので、主語の無い文を訳すのは難しい」と言っていたことを覚えています。

そこで、今日は翻訳機能がうまく使えない日本語の文について検証してみます。
私の生徒が Google Translate がきちんと使えなかったと教えてくれたのは『みんなの日本語1』(*1)の21課でした。教科書の日本語の例文と Google Translate の英訳を以下に書きます。
  1. 私は課長に会社をやめると言いました。 I told the section chief to quit the company.
  2. 私は課長に車をもっていないと言いました。 I said that I didn't have a car in the section chief.
  3. 私は課長にもう資料をつくったと言いました。 I told the section chief that he made the material.
  4. 私は課長に休みがほしいと言いました。 I told the section chief that I want a break.
  5. 私は課長に釣りがすきだと言いました。 I told the section chief that he likes fishing.
この中で正しく翻訳されたのは4の文だけです!1と3と5の間違いの理由は承知のとおり、「は会社をやめる」「はもう資料をつくった」「は釣りが好きだ」の「」が省略されているからです。2の間違いは「課長」の「」が色々な意味になり得るからです。

確かに、「やめる」「つくった」「すきだ」の主語である「私」が省略されてしまうのは日本語の特徴で、翻訳の際に主語が推測しにくく、このような間違った訳は仕方ないでしょう。実際、 Google Translate も迷っているようです。「私」ではなく「わたし」と書くと正しい翻訳ができたり、似たような文で試すと時々正しい訳が出て来ることもあります:)いずれにしても、わかりにくいことは確かです。

では、もう少し複雑な文で試してみます。状況は下記の通りです。
Mary said, "I will wait." Tom was listening.
この状況を日本語で表そうとすると3つの方法があります。 方法の分類は direct speech (repeating the words spoken) と indirect speech (reporting the words spoken) です。

  1. メアリはトムに私は待つと言った。 (direct speech)
  2. メアリはトムに待つと言った。 (direct speech, 「私は」が省略)
  3. メアリはトムに彼女は待つと言った。 (indirect speech)

Google Translate で訳すと次のようになります。

  1. Mary told Tom I would wait. → 微妙ですが、"I" はMary ではない話し手の「私」になりそう。
  2. Mary told Tom to wait. → 完全に正しくない。
  3. Mary told Tom she would wait. → この状況を正しく表している。
1の日本語の文の「私」はだれを指しているのか、とてもわかりにくいですね。この文の中に人は二人いるのか、三人いるのか?でも、実際の会話で「メアリはトムに私は待つって言ったんだよー。」などと言うことはあるでしょう。「私は待つ」の部分が direct speech でメアリが言ったことです。

それから、2のような文は(『みんなの日本語』の1の文も同様)、 Google Translate が正しく訳せない文です。英語の訳に合わせるなら、日本語は次のようになります。
Mary told Tom to wait. → メアリはトムに待つように言った。 
I told the section chief to quit the company. → 私は課長に会社をやめるように言った。(私が社長じゃない限り、こんなことは有り得ないですね!)
結局、翻訳ツールにたよらず、皆さんが自分で日本語を訳したり、または日本語の文の意味を考えたりする必要がまだまだあるということです。その際に大切なことは「文脈から状況を想像すること」です!会話の流れ、もしくは前に書いてある内容から、この場面にはだれがいる?何人いる?だれがその行為をした?だれに対してその行為をした?などを判断する必要があります。それができないと、主語を省略する日本語の文の理解がとても難しくなります。一文だけを翻訳しようとすると、うまくいかないことがあるという訳です。それが現在の翻訳ツールが越えられない壁で、状況を把握した人にしか訳せない内容なのです。
その点に気を付けて、翻訳ツールを役立てるといいと思います。それでも、将来、優秀なAIは主語が省略された会話にもついていけるようになるのでしょうね!



*1『みんなの日本語 初級Ⅰ 第2版』、スリーエーネットワーク、2013年




2017年10月22日日曜日

I don't know. は「わからない」か「知らない」か?

今日は台風がせまっている日本です。台風が来る前から、一週間以上ずっと東京では雨が降っています。普通は雨の音が好きですが、毎日毎日聞いていると、この音も嫌になり、外へ出るたびに濡れるのにもうんざりしています。さわやかな秋晴れの空が恋しいです。

さて、多くの人は今回のテーマを見て、「やっと書くか!」と思っているかもしれません。日本語の勉強を始めてすぐ、「わかりません」="I don't understand." と習ったのに、「わかりません」は "I don't know." としても使われているんじゃないか?どっちが正しいの?みなさん、こう疑問に思ったことがあるはずです。説明が遅くなって、すみません。。。

まずは簡単な点から入りましょう。"understand" については、以下のように考えていいと思います。
I understand. =わかる。(理解している)
I don't understand. =わからない。(理解していない)
複雑なことは "I know." と "I don't know." に対して、「わかる」と「知っている」、「わからない」と「知らない」が使えることです。だから、どっちを使えばいいの?と迷ってしまうんですね。

まず、「知る」は情報を得るということで、「知っている」は情報を持っているという状態を指します。
"I know him." や "I know this restaurant." と言う場合、彼について、またはレストランについて情報があるという意味なので、日本語では次のようになります。
(私は)彼を知っている
(私は)このレストランを知っている
あるトピックについて聞いた/見た/読んだことがある場合は「知っている」を使えばいいと思います。「表面的な情報」があるということです。

一方、"I know what you mean." や "I know how you feel." と言う場合は、私も同じことを経験したから、あなたの気持ちが理解できるという意味が入っていますね。これは「表面的な情報」ではなく、「深さ」が感じられます。そんな場合は「わかる」を使うといいと思います。
(私はあなたの)言いたいことがわかる
(私はあなたの)気持ちがわかる
次の例を比べてみましょう。
① Do you know where he lives? → No, I don't know. 
② Do you know what you are doing? → Yes, I do.  
① 彼がどこに住んでいるか、知っている? → ううん、知らない
② 自分が何をしているか、わかっているの? → うん、わかっている
①には「表面的な情報の有無」だけ、②には「深さ」がありますよね?

では、「情報があるか、ないか」という視点を持って次の例を考えてみましょう。
③このニュースを知っている? → うん、知っている。(情報がある)/ううん、知らない。(情報がない
簡単ですね。
では、次の例はどうでしょうか。
④この辺に駅がありますか? → はい、あります。(駅が近くにあることを知っている)/いいえ、ありません。(駅が近くにないことを知っている)
答えが「はい」でも「いいえ」でも、駅の場所についての情報があるということになります。
そして、もう一つの答えの選択肢は「わかりません」。 これは "I don't understand your question." ではなくて、"I don't know if there is a station nearby." という意味です。それなら、情報がないのだから、「知りません」と答えた方がいいじゃないか?という疑問がわきます。
④この辺に駅がありますか? → さあ、知りませんね
この答えはまちがいではないと思います。ただ、日本人は普通「さあ、わかりませんね。」と言うでしょう。それはなぜか?「知りません」を使うと、「私はその情報がない」と冷たく答えている印象があります。これに対して、「わかりません」を使うと、「駅は近くにあるかもしれないけど、調べていないから、またはこの辺の地理に詳しくないから、答えられない・・・」などという意味が含まれていると思います。「知りません!」(I have no information!) という代わりに、「わかりません」と言って、やんわり「No」と言っているのでしょうか。「魚が好きですか?→魚はちょっと・・・」と言ったり、「明日飲みに行かない?→明日はちょっと難しいな・・・」と言ったりして、はっきり「No」と言わない表現と似ているのかもしれません。

もう一つの例で答えの印象の違いを見てみましょう。
⑤(あなたは)今週末、何をするの? → 知らない。(この質問に関心がない感じ
⑤(あなたは)今週末、何をするの? → わからない。(予定をまだ決めていないから、今は答えられない
最後に、「わからない」と「知らない」の使い分けの簡単なポイントを書きます。"I don't know." の答え方で迷ったら、聞かれた質問の形に注目してください。
  1. ~を知っている?」と聞かれたら(①)、「知らない」で答える。
  2. ~がわかる/わかっている?」と聞かれたら(②)、「わからない」で答える。
  3. "Do you know?" という部分がない質問を聞かれたら(③と④と⑤)、「わからない」で答える。
相手の質問をよく聞いて、それに合わせて答えることは、この場合に限らず大切なポイントです!

2017年9月22日金曜日

Japanese verbs 3 「行っている」の意味

毎年、今週は日本でシルバーウィークと言われている週で、休日が多いはずなんですが、今年は休日と明日の土曜日が重なったため、休みが減ってしまいました。残念!これ以上、国の休日を増やさなくてもいいから、休日が土曜日になった場合は金曜日を休みにする法律を作って欲しいです。国民みんながそう思っているでしょう!

さて、今日は「ている」に注目します。「ている」が表すことを大まかに3つに分けます。
  1. 今だけ続いている行動/今だけ続いている状態
  2. 長く続いている状態
  3. 習慣
例文は次のようになります。
  1. 私は今、本を読んでいる。/今、雨が降っている。
  2. 私は2年間日本に住んでいる。
  3. 私は毎日走っている。
私が "Japanese verbs 1 and 2" に書いたように、動詞の意味(行動?状態?変化?結果?)が正しく判断できれば、上の例はかんたんですね。
それで、今回は日本語特有のおもしろい「ている」の使い方を説明します。「行く、来る、帰る」の「ている」形です。
  • 行っている≠ I'm going.
  • 来ている≠ I'm coming.
  • 帰っている≠ I'm going back.
*主語は私、あなた、彼、彼女などだれでも同じです。
正しい使い方は次のとおりです。
A: Cさんはいつからハワイに行くの?
B: もう、行っているよ。2日前に行ったよ。
【解説】Cさんは2日前に飛行機に乗って、ハワイに着いた。今はハワイにいる。それで「行っている」は「行った/着いた後の状態」を表している。
A: Bさんの友だちはもう日本に来たの? 
B: うん、昨日から来ている
【解説】Bさんの友だちは昨日、日本に来た/着いた。今、日本にいる。「来ている」は「来た/着いた後の状態」を表している。 
一週間後
A: Cさんはまだハワイにいるの?
B: もう日本に帰っているよ。
【解説】Cさんはちょっと前に日本に帰って来た。 今、日本にいる。「帰っている」は「帰った後の状態」を表している。
つまり、3つ全部は「行った」「来た」「帰った」の後の状態を指しています。「行く、来る、帰る」は行動の動詞でも、自動詞なので、こういう意味になるのでしょう。 「疲れた」 (I got tired.) の後の状態が「疲れている」 (I'm tired/ I've been tired.) になる流れと同じです。「疲れた」という変化があったり、「行った」という行動が完了したりした後で、「ている」で表す状態になるのです。

そして、"in the process of going or coming" を日本語で表すには「向かう」を使うといいでしょう。
「Cさんは今、ハワイに向かっている。」と聞くと、今Cは日本の空港か、飛行機の中にいるかなと想像します。
でも、待って!「向かう」も目的語の「を」をとらないし、自動詞ですね。じゃあ、どうして「向かっている=in the process of going or coming 」になるのか?この疑問を持った人は語学のセンスが鋭いですね。
「行く」の意味は「目的地に着くこと」で、「家や空港を出ること」ではありません。
一方、「向かう」の意味は「目的地に向かって、出発すること」なので、家や空港を出た時には「目的地に向かった」とという行為が完了しています。その後、目的地まで続く行為が「向かっている」が指す部分です。そんなに長い状態ではないので、進行している行動と考えてもいいでしょう
なんだか、日本人の思考回路っておかしいですね。もっと単純に考えればいいのにと思ってしまいました。。。


2017年8月19日土曜日

Japanese verbs 2 自動詞と他動詞

みなさん、夏休みはどう過ごしていますか?東京の8月の天気は雨ばかりで、夜には秋の虫の声も聞こえるし、変な天気が続いています。
この夏、私は George Orwell の "1984" を少しずつ読んでいます。昨夜、この作品に出てくる言語「ニュースピーク」 (Newspeak) の定義の部分を読んで、「言語はそれを使う人の思想や文化を表しているものなんだ。そして、それは本当に大切な価値があるものなんだ」と改めて気が付きました。"1984" の世界のように、政府が言語をコントロールしていると、自由な思想や表現が世界から消えてしまうのですね。逆もあり得ます。自由な思想や表現に興味がない市民が増えれば、政府が言語を作り変えることも可能になりそうです。現実の世界のどこかでも、こんな現象が既に起きているのかもしれません。。。

さて、先月の投稿で「日本語の動詞のグループ分けは文法的な面①だけではなく、動詞の意味②からも考えるべきだ」と書きました。
①文法的なグループ分け: グループ1/U-verb、グループ2/Ru-verb、グループ3/irregular verb
②意味によるグループ分け: 行動 (action)、状態 (state) 、変化 (change)
今日のグループ分けも②に関係しています。日本語の動詞において、とても大切で、難しい点の一つでもある「自動詞」と「他動詞」の区別です。この二つの区別をきちんと理解して、動詞を覚えないと、正しい日本語を使うことができません。

大まかな区別は「他動詞=行動」、「自動詞=結果、状態、変化」ですね。
私はドア閉める(他動詞) I'm closing the door. ― ドア閉まる(自動詞) The door will be closing.
私は電気つける(他動詞) I'm switching on the light. ― 電気つく(自動詞) The light will be on. などなど
注意するべきことは「自動詞=自動的に、または自然に起こる」ことではないという点です。エレベーターや電車のドアは自動的に開いたり、閉まったりしますが、だからといって、「自動詞=自動的」ではないのです!人の行動ではないことがポイントです。
「電気をつける」というだれかの行動 → 「電気がつく」という結果 → 「電気がついている」という状態 
「パソコンが壊れる」という自然な変化 → 「パソコンが壊れている」という状態
しかし、自動詞の中には行動を表す動詞もいくつかあります!
行く、来る、帰る、入る、出る、歩く、起きる、寝る、などなど
どうして、「行く」や「来る」などは行動の動詞なのに、自動詞になるのでしょうか?それは、「行く」や「来る」が「目的語 (direct object)+を」と一緒に使われないからです。具体的な例を見てみましょう。
私はテレビ見る、私は本読む、私はドア閉める、私は電気つける
テレビ、本、ドア、電気は "What do you watch?", "What do you read?" の "What" の答えになる部分です。こういう部分を動詞の目的語と言います。多くの行動は目的語を必要としますが、そうではない場合もあります。
私は公園に行く、私は店に入る、私は6時に起きる
これらの文に「目的語 (direct object)+を」はありません。"What?" の質問と答えは無いというわけです。この場合、行動の動詞が自動詞になります

それで、他動詞と自動詞は2つの視点から区別します。
  1. 動詞の意味は行動?結果?変化?状態?
  2. 「目的語 (direct object)+を」と使うか、使わないか?
実際は2の視点からだけで判断できるのですが、やはり「ドアを閉める」と「ドアが閉まる」を比べる時には「これは人のアクションか、その結果か?」という視点は自然に現れるでしょうし、その点を理解しないと、正しい文を作ることができないでしょう。


"1984" の「ニュースピーク」 (Newspeak) のように、言語が簡素化されれば、自動詞や他動詞、漢字にも困ることはないでしょうが、日本語の複雑さは豊かで美しい表現方法だと思って、受け入れてください!!


2017年7月11日火曜日

Japanese verbs 行動と非行動

English translation

7月初めに日本語能力試験を受けた方、おつかれさまでした!試験はどうでしたか?
合格か不合格か、結果が大事な人もいるでしょう。合格でも、不合格でも、テストを目標に勉強したことが大事な人もいるでしょう。いずれにしても、ちょっと休憩して、夏を楽しんでほしいです。

さて、先月の投稿で「動詞のわかるは active verb ではない」と書きました。今月はこの点について、詳しく考えてみます。
日本語には動詞の様々なグループ分けがありますね。活用のためのグループ分けは複雑だけど規則性があります。(グループ1:行く、飲む、買うなど、グループ2:食べる、寝る、見るなど、グループ3:する、来る)これは覚えるしかないものです。
他のグループ分けは動詞の意味に関係していて、まずは自分の頭の中で「行動」(action) とは何か?「状態」 (state) とは何か?「変化」 (change) とは何か?など、概念の区別をする必要があります。

今回は動詞を二つのグループに分けます。
  1. active verbs行動の動詞)
  2. non-active verbs (行動ではない動詞)
active verbs はわかりやすいでしょう。「たべる、飲む、する、見る、行く」などです。

non-active verbs でわかりやすい例は、「ある、いる」。これらは action ではありません。存在 (existence) を表しています。

住んでいる」も同じです。これは行動だと考える人もいるかもしれませんが、「住んでいる」というのは一瞬の行動ではなく、長く続いている状態 (state) なのです。
―――――住んでいる―――――→ (time)

状態 (state) の他の例は、「疲れている、太っている、混んでいる」などです。

では、「疲れている、太っている、混んでいる」の辞書形「疲れる、太る、混む」はどんな意味合いでしょうか?これらは「変化」 (change) を表しています。
元気な状態 ――→ 疲れる 
細い状態 ――→ 太る
もちろん、「なる」も変化を表しています。

そして、可能形 (potential form) も non-active verbs です。
私は 日本語が 話せる。 (I can speak Japanese.) 
「話す」は行動ですが、「話せる」は「話す能力を持っている」という状態です。
泳げる、読める、サーフィンができる」などは、それぞれの能力や技術を持っているという意味です。

では、「見える」「聞こえる」は?"I can see" "I can hear" と訳すことが多いですが、これらも non-active verbs です。
ただ、実はこれらは人の能力ではなく、自然な状態なので、行動の動詞の「可能形」ではありません。
富士山が 見える。 (Mt. Fuji is visible.) 
「富士山がそこにある」から見えるのです。ここに意思のある行動は含まれていません。

結局、「見える」「聞こえる」は、「状態」ということになります。「わかる」も同様に考えることができます。
前回書きましたが、「わかる」は次のように考えてください。
(私は)日本語が わかる。  Japanese is understandable (to me).
「わかる」は行動ではなく、状態の動詞です。「勉強する、習う」はもちろん行動ですが、「わかる」は勉強した結果 (result) なんです。結果=状態です。

さて、どうしてこんな説明をしてきたかと言うと、active verbs or non-active verbs の区別ができると、文法的な理解が簡単になるからです。
non-active verbs は基本的に「を」と一緒に使いません。「日本語をわかる」は正しくないと前回書きました。「車をある」「サーフィンをできる」「富士山を見える」も正しくありません。「を」ではなくて、「が」を使います。ただ、「日本語を話せる」や「漢字を読める」など可能形 (potential form) の場合は、「を」を使うこともできます。

それから、もう一つの違いも大切です。
  1. active verbs は話し手の意思 (intention) を含む
  2. non-active verbs は話し手の意思を含まない。状態 (state)、変化 (change)、能力 (ability)、結果 (result) を表す
例えば、「ために」と「ように」を比べてみてください。
  • 病気をなおすために、薬を飲む。
  • 病気がなおるように、薬を飲む。
また、「たら」と「ば」も比べてみましょう。
  • あの店に行ったら、有名なケーキを食べよう
  • あの店に行けば、おいしいケーキがある

このように、日本語の文法表現には「意思を含む動詞と使える場合、または使えない場合がある」という規則が多いです。active verbs と non-active verbs の区別がしっかりできれば、このような使い分けが簡単になります。

単語の意味だけを覚えるのは不十分です。その動詞が行動を表しているのか、状態か、変化か、なども考えるようにしてみてください!

東京は今日も暑いですね。Stay cool !



2017年5月25日木曜日

「わかる」について考えてみよう

English translation

早速ですが、今回のタイトルどおり、日本語の動詞 「わかる」について考えてください。
これは「食べる」「飲む」「する」のような active verb だと思いますか?

答えは、いいえ。「わかる」は active verb ではありません。「ある」「いる」「つかれる」などの動詞もactive verb ではありません。これらが同じグループである感覚がつかめるでしょうか。この感覚がつかめる場合、日本語の文法の理解はらくになります。つかめない場合は、そういうものだと受け入れてください。

active verb の最も単純な文は次のようになります。
私は そば 食べる。
私は お茶 飲む。
私は テニス する。
でも、「わかる」はactive verb ではないので、「私は 日本語を わかる。」とは言いません。
日本語 わかる。
これが正しい文です。カジュアルに話す時は、「日本語 わかる?」「わかるよ。」とか、「これ わかった?」「わからない。」などとなるため、助詞は「を」か「が」か、どちらが省略されているのか、見えなくなっていますね。でも、本当は「」が隠れているのです。

村上春樹(むらかみ はるき)の小説の英訳をたくさんしている Jay Rubin さんは彼の著書 "Making sense of Japanese" (*1) の中で、次のように説明しています。
People don't wakaru things; things themselves do wakaru: they "are clear" or they "are understandable,"
この説明にしたがうと、「日本語わかる」= "Japanese is clear/ understandable." ですね。このように見ると、どうして「日本語をわかる」が正しくないかが、はっきりします

それでは、「私は 日本語が わかる。」の「私は」はどうやって考えればいいんですか?という質問が来そうですね。
私は/には 日本語が わかる。= As for me/ To me, Japanese is understandable.
 Jay Rubin さんもこのように解説しています。

そして、「わかる」はとても多用される単語です。私もここまで書いて来て、何度も「わかる」を使いそうになりましたが、あえて他の動詞を使ってみました。うすいピンクでマークしてある動詞は「わかる」で置き変えることができます。

国語辞典(*2) の「わかる」の定義を見てみましょう。
①理解する  
例)わけがわからない。(It doesn't make sense.)
例)あなたの言いたいことは よくわかる。(What you mean is understandable.)
②事実がはっきりする、判明する
例)犯人の身元がわかる。(find out the criminal's identity.)
例)問題の答えがわかる。(discover the answer to the question.)
"Understandable" または "understand" だけではないことが明らかです。これらに加えて、"learn" や "realize" などになる場合もあります。

また、「わかる」はactive verb ではないことから、可能形(かのうけい、potential form) はありません。「わかれる」は存在しません。"I can understand" と言いたいなら、「理解できる」を使いましょう。(補足:「わかる」自体が "I can understand" になる場合もあります。)

「わかる」の使い方がわかりましたか?


*1 "Making sense of Japanese, What the textbooks don't tell you", Jay Rubin, Kodansha USA, Inc.
*2 『デジタル大辞泉』、小学館