2012年2月21日火曜日

同音語クイズ

時々私が引用している金田一春彦(きんだいち はるひこ)の『ことばの歳時記』(ことばの さいじき)で見つけた同音異義語の例です。
今年もそろそろ税金申告の季節が近づいて来ました。税務署から例年まわってくるあの緑色の活字がいっぱい印刷されている紙を前にため息をついている家庭も多いことだろう。ある日、ある中学生が学校の国語の試験をしょんぼりとして持って帰って来た。どうしたのかというと、その子は漢字の書き取りで間違いをして、クラス全体から笑われたという。 
さて、「深刻な表情」と書くべきところに、この子はどの漢字を書いてしまったのでしょう?みなさんはわかりますか?

ちなみに、私は先日Facebookでおかしい写真を見ました。普通、日本の小学校のテストの答案用紙には次のように名前やクラスを書くようになっています。
  
2  ねん 1  くみ  なまえ おかもと みなこ 
でも、その写真では次のように書いてありました。
何 見てん ねん どこの くみ   なまえ 言ってみい
意味がわかりますか?これは関西のやくざが別のやくざに強い口調で、「なんで俺のことを見てる?お前、どこの(やくざの)組から来た?名前を言え。」 と言っているのです。
日本の文化と日本語がうまく組み合わされたおかしい冗談です!本当に小学生が考えたのかなあ?

2012年1月24日火曜日

Nihon or Nippon

先日、日経新聞(日本経済新聞)を読んでいたら「ニンとニッン、どっちを使うか?」という記事がありました。ニホンを使う場合とニッポンを使う場合の例や、言葉の歴史などが書かれていて、興味深かったです。皆さんも疑問に感じたことがありますか?

私が日本語を教えてきた経験では、Japan が日本語で何か知らない方もかなり多いですし、知っている方は Japan = Nippon と思っていることが多いです。私自身の日常生活では「ニン語を話す」「ニンに住んでいる」「ニン酒を飲む」など、「ニン」ばかり使って、「ニッン」を使うのはまれです。でも、特に会社名、学校名、団体名で「ニッン」が使われることが多いようです。新聞記事の中に、「2009年の閣議(内閣による議論)でニホンとニッポンはどちらも広く通用しているので、どちらでも構わない。統一する必要はない。」と決定されたと書いてありました。

私が「ニッン」を使う例として思い浮かぶのは、唯一私が好きなスポーツ、サッカー日本代表チームを応援する時に「がんばれ、ニッン!!」と言うことです。記事にもありましたが、スポーツの場合は「ニッポン」を使うことが多くて、それには言葉の印象が関係しているそうです。「ニン」はやわらかい印象、「ニッン」は力強い印象です。
この印象の違いはみなさんもわかりますか?やわらかい「ほ」の音に対して「ぽ」は力を入れて音を出しますね。この違いが日本語の特徴の一つである擬態語/擬音語を作る原点になっていると思います。

は行(はひふへほ)の印象はやわらかく、力が抜けている感じです。また、ぱ行(ぱぴぷぺぽ)の印象は軽く、はじける感じです。『日本語擬態語辞典』(*1)に書かれている例を見てみましょう。
ら:意味もなく軽薄に笑うさま。あいまいに笑うさま。また、言動が軽々しい感じ。 
これは楽しく笑うのとは違って、理由がないのにだらしなく笑っていることです。みんなが真剣に何かをしている時に、力を抜いて気味悪く笑っている人、時々いますね。
ら:①軽薄によくしゃべるさま。 ②外国語を流暢にしゃべるさま。 
外国語を上手に話すことを「ぺらぺら」というように、これにはある程度のスピードがあって 、テンポの良さが感じられます。
このようにそれぞれの行に音の特徴があります。特にわかりやすいのが「行」「行」と「行」「行」ではないでしょうか? 行は軽い、かたい感じで、行はさわやかな感じです。これに対して「」が付く行と行はあらい、不快な感じがあります。

そして、こういう音の印象は日本人だけが感じるものではなく、ある程度、万国共通だと私は思っています。例えば、英語の"pop"()という単語は先ほど述べた行の印象と同じで、「(軽く)はじける、(軽く)飛び出る」という意味がありますね。また、"crisp"(プ)も、の音から「かりかり」「さくさく」といった食べ物をかんだ時の軽快な音と同じ印象です。みなさんはどう思いますか?英語以外の言語でもこんなことがありますか?

*1 『日本語擬態語辞典』、五味太郎(ごみ たろう)、講談社、2004年
新聞記事を読みたい方はこちらをクリック⇒ 日本経済新聞の記事 

2012年1月12日木曜日

今 読んでます



Qがかわいいので、思わずのせてしまいました!
村上春樹の小説、ぜひ日本語でチャレンジしてみてください。

2012年1月1日日曜日

2012年元旦


明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
2012年が皆さんと世界にとって、すばらしい一年になりますように。
健やかに、楽しく毎日を過ごしましょうね。

岡本 美奈子 (Minako Okamoto)


2011年12月23日金曜日

良いお年を

わー、もう年末ですね。クリスマス休みが始まった人も多いでしょうね。2011年は日本にとって厳しい年でしたね。地震、津波、原発の被害のために苦しい思いをしている方が大勢いますし、自然の脅威には勝てないのだという事実を目の当たりにしました。また、原子力発電という当然のように利用していた物への疑問や今後のあり方を考えざるを得なくなりました。あの大きな地震の揺れと、止められない津波の威力、失ったものの大きさ、放射能の不安を通して、日本人はみんな今までとは違う目で「生きること」を見るようになったと思います。 みなさんの一年はどうでしたか?いい年でしたか?

さて、今日は「いい」をキーワードに書いてみます。もちろん、いい=good, nice, ok の使い方は知っていますね。普通、「いい」は好意的な意味として使われています。Facebook の日本語版では "like" が「いいね」となっています。たしかに、この"like" を「好き」と訳してしまうのは変なので、いいね」が適訳です。

しかし「いい」は好意的な使い方だけではなく、「皮肉」や「非難」を込めた言い方でもよく使われています。今から、いくつかの例を紹介します。
約束を何回も破った人が言い訳ばかり言っています。
そんな時、こう言い返したくなりますね。
  • 言い訳はもういい
この意味は「あなたの言い訳はもう聞きたくない。もう必要ない。」ということ。この「いい」には皮肉/非難が含まれています。  
「これはいい」も似ている使い方です。
クリスマスプレゼントをたくさん選んでいる時に、こんな風に言うかもしれません。
  • これとこれとこれを買うけど、これはいいや。
ここで「これはいい」= "This is good." ではありません。
「これは必要ない」という意味ですが、皮肉/非難の感じはありません
でも、「これはいい」= "This is good." の場合もあるので、文脈や場面、話し手の言い方を理解してはじめて、本当の意味がわかります。
他には、「迷惑」など、決して「いい」ものではない単語に「いい」を付ける場合もあります。
年末だからって、隣の人は毎晩パーティーをするので、うるさい。
  • 本当にいい迷惑だよ!
「いい」がなくても、文が成り立ちますが、「いい」を付けると、皮肉/非難が強まります
「いい年」という表現もあります。ここで「年」=年齢のことです。その年齢にふさわしくないことをしている場合に使われます。
  • 山田さんは30才。でも、彼はいい年して、まだ一度も 働いたことがない。
「30才なら働いているべき。20才の大学生なら、遊んでいていいけど、30才はそれほど若くないよ」という意味です。皮肉/非難がたっぷりです
最後に「いい加減」を紹介しましょう。加減=状態、程度なので、文字どおり訳すと、「いい加減」=程良い。でも、こちらの意味で使われることは少なく、主に皮肉/非難を込めた使い方になります。
いい加減な人=無責任な人
  • 彼はいつまでたっても貸したお金を返してくれない。いい加減な人だ。 
  • 彼女に仕事を頼むと、いつも間違えが多い。彼女はいい加減に仕事をしている。
気を配らずに、適当に何かをするという意味です。

ただ、「いい加減にして」は「いい」の2つの意味が混じっている感じがあります。
文句ばかり言っている友人に対して、いらいらした場合。 
  • 文句はいい加減にして
これには「程良いところでやめてください+いつまで文句を言っているんですか?(皮肉/非難)」の2つが表わされているような気がします。 
 たくさん例があって、長くなってしまいましたが、 「いい」には否定的な使い方があることはわかってもらえましたか?英語でも "That's great." を「すごい!」という意味ではなく、嫌みたっぷりで使うことがありますよね。ですから「いい」という単語を聞いても/見ても、それが必ずしも "good or nice" ではないことを覚えておいて、文脈の中で意味を確認してみてください

では、これが今年最後の投稿となります。今年、私のブログを読んでくれた方たちに感謝します。みなさんの日本語への興味がもっと高まるよう、来年もおもしろいテーマを探すつもりです。質問もお待ちしています。

Merry Christmas !  そして、良いお正月を迎えてくださいね。

2011年11月16日水曜日

極度乾燥?

10月末にNYはマンハッタンへ行って来ました。ちょうどアメリカ北東部に雪が降った時でした。ハロウィンの前の雪はめずらしいとアメリカの友人も言っていました。7年ぶりにNYに行ったのですが、前回には感じなかった「大都会での疲れ」を感じました。いつも東京のど真ん中で生活しているのに、変ですね。年をとった証拠でしょうか。
旅行出発前に、日本人の友人からある物を買ってきてと頼まれました。「superdry」というイギリスの服の店でTシャツなどを買ってきてほしいとのこと。「superdry」はアメリカにはお店があるのですが、日本にはまだないのです。日本で「superdry」と言えば、ビール「アサヒ・スーパードライ」ですよね。超辛口のビールという意味です。

さて、NYで「superdry」の店に行って、どんな服があるのかな?と見てみると、「superdry」という英語のロゴの他に、何やら漢字のロゴも商品に書かれています。
superdry = 極度乾燥(きょくどかんそう) 
 えーっ!何これ? 「極度」と「乾燥」の漢字の意味はそれぞれわかるけど、「極度乾燥」という単語は存在しないよ!でも、言いたいことはわかる。だから、正しくないけど、ありそうな日本語という点が絶妙なバランスで、すごくおかしい。
私もこの店に一緒に行った友だちもたくさんのおかしな日本語を見て、ケラケラ笑いながら、買い物を楽しみました。

「極度乾燥しなさい」と言われても・・・


しなさいは(   )の中。どうして?

同じように日本の商品や広告にも間違った英語やフランス語などがあふれていますね。みなさんも日本人のおかしな外国語の使い方に笑ったことがあるでしょう。商品化する時に正しいか、どうか、どうして調べないんだろうという疑問もありますが、実はそんな間違いが楽しいのですね。

「superdry」の服が欲しくなった人がいますか?もし、お店に行ったら、「極度乾燥」と書いてある商品を選んだ方がいいですよ。他にも色々な漢字入りの商品があるのですが、意味不明だったり、中国語(多分正しくない中国語)だったりして、日本人から見ると、かっこよくない。だから、「極度乾燥」を買いましょう。

2011年10月12日水曜日

「なさそう」と「なそう」

日本人が好きで、外国人が好きじゃない物といえば、何ですか?
なっとう?いいえ。なっとうは日本人でも嫌いな人がたくさんいるし、外国人で好きな人もいます。
それは「ビールの泡」です。日本人がビールを飲む時、レストランはもちろん家でもきれいな泡を作ることが大切です。金色のビールと白い泡の黄金比率は7:3で、細かい泡がビールをより美味しくするそうです。その泡の作り方は色々なところで教えられています。でも、30%も泡があると、「もったいない」という外国人もいるぐらい、外国人にとってビールの泡は価値がないんですね。おもしろいです。

さて、今回はリクエストがあった「~なさそう」と「~なそう」について説明します。『問題な日本語』(*1)という本を参考にします。

まず、「ない」を三つに分けます。
  1. 時間が ない、食べ物が ない、など:「ない」だけで一つの単語
  2. おいしくない、暑くない、など:形容詞のない形の一部
  3. できない、知らない、など:動詞のない形の一部
1の場合、「ない」+「そう」(様態/seem)は「い」が「さ」に変わります
明日 忙しいな。あなたと会う時間が なさそう
この店でみんな たばこを吸っているね。禁煙席が なさそう
2の場合も、1と同じで、「ない」+「そう」(様態/seem)は「い」が「さ」に変わります
このケーキは おいしくなさそう
今日は くもりだね。暑くなさそう
3の場合は、「ない」+「そう」(様態/seem)は「い」を取って、「そう」を付けます
このゲームは難しいね。子どもには できなそう
彼はこの町の人じゃないから、駅の場所を 知らなそう
これが基本の文法です。ただ、現在は3の場合にも1と2の「~なさそう」を使うようになってきています。そして、それを間違いとは言えず、言葉の変化と考えています。そして、両方が同じくらい使われていると思います。こうなった理由は日本人が「ない」を1、2と3に区別していないからだと思います。私も1、2と3の「ない」を別のものとしてほとんど考えません。

それから、様態 (seem) の「そう」の否定形はもう一つあります。二つの否定形を並べると、
A. 空が 明るくなった。雨が 降らなそう。 
B. 空が 明るくなった。雨が 降りそうにない。 
Aの文は「雨が降らない」ように見える「雨が降らない」可能性があるという意味。
Bの文は「雨が降る」ように見えない「雨が降る」可能性が低いという意味。

私はAとBの意味合いはほとんど同じで、どちらを使うかはその人次第、またはその場次第だと思います。

ところで、日本人がこだわるビールのきれいな泡の作り方に興味がある方はこちらをご覧ください。ビデオまでありますよ。
http://www.sapporobeer.jp/book/pleasure/chapter01/index.html

*1  『問題な日本語』、北原保雄編、大修館書店、2005年