2012年12月25日火曜日

してやる させてもらう

みなさん、メリークリスマス!どんなクリスマスを過ごしていますか?日本ではクリスマスは祝日ではないですが、今年は23日の天皇誕生日が日曜日だったため、24日の月曜日が休日でした。それで、日本人も日本に住んでいる外国人もクリスマスパーティーを楽しんだのではないでしょうか?教会に祈りに行った方もたくさんいるでしょうね。
クリスマスの日に合いませんが、今日はお寺からのメッセージを紹介します。私の家の近くのお寺の入り口にある掲示板に、お坊さんからのメッセージが貼ってあります。それは仏教的、または宗教的な文章で、時々変わります。最近のメッセージは次の文でした。
してやる」は恩着せ。「させてもらう」は布施。
恩着せ(おんきせ):自分が相手にした好意に対して、感謝してもらうことを期待すること、to expect someone to be grateful for what you have done

布施(ふせ):仏教のお坊さんがお経を読んでくれたことなどのお礼として、信者がお金や物をあげること、 an offereing to a priest in return for his services

まず、「恩着せ」と「布施」の意味がわかったでしょうか?次に「してやる」と「させてもらう」ですが、「してやる」の「やる」は「あげる」です。(ここで「する」ではありませんよ。)
  1. してやる ⇒ する+あげる
  2. させてもらう ⇒ させる(するの使役形)+もらう
1) 「あげる」を使うことで、自分が相手より上の立場にいるニュアンスが出ます。例えば、友だちが困っていて、手伝いを必要としている時に、次のように言うと、「私はできる自信があるという感じが表わされます。
私がしてあげるよ。(もっとカジュアルに「やってあげるよ」と言うこともできます。)
 
これだけなら、必ずしも失礼な感じになるとは思いませんが、言い方によっては恩着せがましくなることがあります。
(あなたができないから、)私がしてあげたんだよ!
これは前半部分を言わなくても、「私がしたことをありがたいと思って」 というニュアンスが強く出ています。普通の場面で、相手はこれを言われると、「えっ、何?」と思うでしょうが、何度も失敗する相手にあなたがイライラしている時なら、これの方が気持ちに合っているでしょうか?

2) 一方、「させてもらう」の「させる」は使役形ですが、意味は強制ではなく、「許可」なので、「自分の行為に相手から許可をもらう」という場合に使われます。先の例と同じように、友だちが手伝いをしている時に、次のように言うと、「私もできるか、どうか、わからないけど、試すという感じです。
させてもらってもいい?/やらせてもらってもいい?
 
自分が上の立場にいるというニュアンスは全くなく、謙虚な言い方です。 他の例では、「私は田中さんと一緒に仕事をしています。」と言いたい時に、日本人はよく次のように言います。
私は田中さんと仕事をさせてもらっています。させていただいています
 
これは、「私は田中さんから学ぶことがたくさんあって、田中さんと一緒に働けることを感謝している」ことを表しています。実際に、そうでなくても、こう言っておけば、だれも悪い気持ちにはならないので、このような謙虚な表現は本当によく使われていると思います。ただ、使いすぎると、嘘っぽく聞こえることもあります。

この二つを使い分けるのはなかなか難しいと思いますが、相手と自分の関係、場面などがポイントです。でも、一番いいのは相手に対する自分の気持ちに正直になることかもしれませんね。

これで、今年のブログは終了です。この一年、読んでくださった方、本当にありがとうございました!皆さんの日本語の勉強への努力と日本への関心の深さに、いつも頭が下がります。そして、それはとてもありがたいことだと思っています。来年もこのブログを書き続けますので、質問などあれば、ぜひ教えてください。
2012年も残りわずかですね。よいお年をむかえてください!
 

2012年11月21日水曜日

「ない」の表現まとめ

間もなく日本語能力試験。今、一生けんめい勉強している人も多いでしょう。たくさんの漢字、単語、文法表現を覚えるのは大変ですよね。特に1~2級では「わけ・こと・よう・ない」など同じ言葉を使った表現が多いですから、混乱してしまいますね。表を作って、一度整理するといいかもしれません。

そこで、1~2級の中にある「ない」と同じ意味で、ちがう言葉を使う表現を表にしてみました。



ない

接続の形

「する」の場合


 

 
ない形

 

 
行かに~

~のみなら

~に(も)かかわら

 

 
ざる

 
ない形

 

 
行かざるを得ない

行くべからざる(*べき→べから)

 

 

 
ない形

 

 
行か

 

 
まい

 
辞書形

 
する

 
行くまい

~ではあるまい

 

「~ず」や「~ざる」などを見たら、意味は「ない」だと思ってください。「~ざるを得ない」は「ない」が2つの二重否定なので、意味は強い肯定になります。

テストからは離れますが、話し言葉の「ない」も色々なパターンがあります。日本人の会話を注意深く聞いたり、マンガのテキストを読んだりすると、気がつくでしょう。



ない

接続の形


 
ねえ

 
ない形

 
行かねえ

食べねえ

 

 

 

ない形

 
行か

食べ

 
 
標準語ではこの表現は男言葉なので、女性は使わない方がいいでしょう。特に、「~ん」は年配の男性風、つまり「おじさんっぽい」感じがします。
(注意:方言では標準語と違う使い方をしますが、私は詳しくわからないので、標準語での使い方を書きました。地方によっては女性が使う場合もあるでしょう。)

最後は、みなさんがよく聞く、そしてよく使う「わかんない」についてです。このパターンは使える場合が限られています。



 
グループ1の「~ます」の動詞だけ
 
わかない → わかない
 
グループ2の動詞の可能形
 
食べらない → 食べらない

それでは、アメリカの方は感謝祭 (Thanks giving day) を楽しんでください。日本に住んでいる方は金曜日から楽しい3連休を過ごしてくださいね!今は日本中、紅葉が見頃なので、山に行きたいですね。


2012年10月19日金曜日

甘味、酸味、塩味、苦み、旨み+渋み

*English translation

前回の料理の動詞に続いて、今日は味の言葉について書きます。人間の味覚には基本の5つの味があります。「甘味、酸味、塩味、苦み、そして旨味」です。さらに、味を表すのによく使う形容詞には「辛い、おいしい、まずい、渋い」もあります。 それぞれの国で色々な料理が食べられていますが、これらの味覚は人類共通のものなので、説明は要らないと思いますが、「旨味と渋み」について簡単に説明しておきますね。

なぜなら、「旨味」は日本人が日本料理の中に発見した味だからです。1908年に日本人化学者がこんぶの中に旨味成分を発見し、その後、かつおぶしやしいたけからも発見されました。こんぶ、かつおぶし、しいたけを使っただしにその味を感じることができます。

また、「渋み」は日本独自の単語だそうです。渋い食べ物/飲み物と言えば、濃すぎるお茶やフルボディの赤ワインのタンニンの味。それに、日本には渋柿もあります。甘くない柿を食べた時、「わっ、無理。食べられない。」というひどい味があります。それが渋みですが、食べたことがないとわからないと思うので、機会があれば、試してみてください。(本当においしくないけど・・・) これらの味覚の言葉は「~味」の「み」を「い」に変えると、形容詞に活用することができます。そして、それらの形容詞の単語には味を表す以外の意味もあります。今日はそれを紹介します。

甘い(あまい)
これについては以前に書いたので、その投稿をご覧ください。

旨い(うまい)
「旨味」が形容詞の「うまい」になると、意味は「おいしい」と同じになります。男性なら「おいしい」の代わりに使うことができます。

他の意味A:上手な
例:彼は歌がうまい
他の意味B:都合がいい
例:最近、仕事がうまく行っている。
おいしい
他の意味:「旨い」のBと同じだが、特に利益になるという意味が強い。
例:その投資の件はおいしい話だ。

まずい
「うまい/おいしい」の反対の言葉
他の意味:不都合な
例:その話は他人に聞かれると、まずい

苦い(にがい)
他の意味:苦しい(くるしい)、つらい
例:あの失敗は苦い経験だった。
辛い(からい)
他の意味:きびしい
例:あの先生はきびしくて、生徒への評価も辛い
すっぱい
基本的には味を表すだけだが、下記の表現がある。
例:口をすっぱくして言う。→ 私はあんなに口をすっぱくして言ったのに、あなたはわかってくれなかった。
意味:何度も何度も同じことを忠告する。

渋い(しぶい)
他の意味A:先ほども書きましたが、「渋い」は日本独特の単語で、日本人の美意識を表す単語でもあります。明るい美しさではなく、落ち着いている雰囲気を美しいと思う感覚です。光ではなく影をきれいだと感じたり、若さではなく年配の大人らしさを素敵だと感じたりすることです。
例:この部屋のインテリアはグレーやベージュが多くて、渋い雰囲気だ。

他の意味B:ふゆかい。これは渋い味の物を食べた時に、不快な感じがすることと関係しているのでしょう。
例:彼は彼の友人の悪いうわさを聞いて、渋い顔をした。

今では各国の料理、特にアジア料理には旨味が入っていることが認識されています。だからこそ、日本料理で一番大切なだしの中においしさのポイントが凝縮されていることを日本人が経験的に知っていて、その上で旨味を発見したという事実は料理好きの私にとってはとても誇らしいことです。

また、「渋い」ものを美しいと思う感覚は日本の「わび・さび」の文化によく表されています。また、日本人作家、谷崎潤一郎の『陰翳礼讃』(いんえいらいさん)(Junichiro Tanizaki, “In praise of shadows”) の中でも興味深い分析がされているので、日本人的感覚を理解するのにおすすめの一冊です。

2012年9月30日日曜日

料理の言葉

みなさんは料理が好きですか?私は料理が好きで、よくしています。忙しい日にはかんたんな物しか作りませんが、忙しい時こそ、料理をすると気分転換になります。そして、休日には今までは買っていたジャムやパスタなども最近は自分でよく作っています。
大学生の時には、当時の英語の先生からアメリカの料理の本 "joy of cooking" をもらって、それを読むのが大好きでした。そのレシピを読みながら、アメリカの食卓風景を想像していました。今の私はぜったい日本料理の方が好きですが、当時は異文化に触れている感じが楽しかったのですね。それに、料理本を読むのは英語のいい勉強方法でした。

それで、今日は料理の動詞について書こうと思います。
焼き肉、焼き鳥、焼き魚、焼きおにぎり、お好み焼き、鉄板焼き、たまご焼きなど。
 
上記の料理は定番料理。みなさん、食べたことがあるでしょう。「焼き」は ここで "grill/ broil" 。

また、オーブンでケーキを焼く (bake) も、オーブンでチキンを焼く (roast) も、トースターでパンを焼く (toast) も、全部「焼く」が使えます。

「焼く」の定義は「食材に火に当てて、熱を通し食べられるようにする」なので、料理方法が幅広いのです。

でも、焼きそば、焼きうどんの実際の料理方法は「炒める/いためる」 (stir-fry) ですが、名前には「焼き」が付いています。ご飯を炒めて作るチャーハンは漢字で炒飯です。

炒める」という料理法が油を少量使うのに対して、「揚げる/あげる」場合は大量の油の中に食材を落として調理します。鶏のから揚げ、串揚げ、天ぷら、とんかつなどですね。

油っぽい料理が苦手な人は蒸し物を食べるといいでしょう。食材に湯気を当てて、火を通して、「蒸す/むす」 (steam) ので油を使いません。茶わん蒸しや、肉まんがいい例です。そして、日本の夏の不快な「蒸し暑さ」も料理の「蒸す」と同じ状態のようですね。

「焼く」は広範囲に使える動詞ですが、反対に細かい分類がある調理方法を紹介します。まず、水を温めて、お湯にすることは「沸かす/わかす」 (boil) です。「お湯を沸かす」と言います。(注意:「水を沸かす」ではない。)
次に、水またはお湯の中に食材を入れて、火を通すことは「ゆでる」です。うどんや枝豆をゆでる。これは、食材に火を通すというのが目的です。
でも、だしやスープなど味の付いている液体の中に食材を入れて、味を付けるという目的がある場合には「煮る/にる」を使います。野菜の煮物、煮魚など。日本料理にはだし、しょうゆ、砂糖などで味付けし、煮る料理が多いですね。
今、「ゆでたまご」と「煮たまご」の違いがわかりますね?

最後に、日本人にとっての特別な食材「お米」の調理法は何でしょう?米を「炊く/たく」。「炊く」はお米についてのみ使われます。(西日本では「煮る」と同じように使われることもある。)お米を炊く時に使う便利な機器は「炊飯器/すいはんき」。日本人の必需品ですね。

今はおいしい秋の食べ物がたくさん出ていますから、秋の味覚を味わってください。

2012年9月10日月曜日

夏の旅行記

みなさん、楽しい夏を過しましたか?夏休みは終わりましたが、日本は残暑がきびしくて、まだまだ暑い夏が続いています。

私は8月末に青森県は弘前市(ひろさきし)に行って来ました。ここはりんごで有名な所ですね。小さい町ですが、桜で有名な弘前城が町の中心にあり、明治時代に建てられた洋館が所々に残っていて、昭和っぽい雰囲気の街並みもあったりして、いい所でした。
弘前に洋館がたくさん作られた理由は、明治時代に弘前市が教育に力を入れて、外国人教師をたくさん招いたためだそうです。そして、キリスト教も伝わってきて、教会も多く作られました。
いつも思うのですが、飛行機や電車、もちろんインターネットもない時代に外国で暮らすことは本当に大変だったでしょうね。今と比べれば、辞書の内容も劣っていて、外国語の学習も苦労が多かったはずです。

旧弘前市立図書館

日本キリスト教団弘前教会
 
旧東奥義塾外人教師館


ところで、有名な日本人作家・太宰治(だざい おさむ)は青森県出身で、弘前市の高校に通っていて、1927~30年まで弘前に住んでいました。彼は弘前のことを著書の中でこう言っています。(*1)
弘前市の決定的な美点、弘前城の独特の強さを描写する事はついにできなかった。重ねて言う。ここは津軽人の魂の拠りどころである。何かあるはずである。日本全国、どこを捜しても見つからぬ特異の見事な伝統があるはずである。私はそれを、たしかに予感しているのであるが、それがなんであるか、形にあらわして、はっきりこれと読者に誇示できないのが、くやしくてたまらない。
 
好きだけど、良さが何だかわからない。いやなところもあるけど、嫌いにはなれない。ふるさとを思う気持ちは複雑なんですね。

また、東北は米の産地なので、青森でたくさんの田んぼを見ました。8月上旬に行った新潟にもきれいな緑の田んぼがいっぱいありました。田んぼには稲という植物が育ちますが、稲の実が米です。この「米」という漢字は「八・十・八」からできています。(最初の「八」は上下が逆になっていますが。)

ある本(*2)によると、「八・十・八」とは農家の人たちが88の手間をかけて米を作るという意味があるそうです。他にも、稲には88の利用法があるという別の意味もあります。

そして、白い米を炊いたものが「ごはん」(御飯)になります。江戸時代、日本では玄米が主流だったのですが、江戸(今の東京)の人々だけは庶民でも白米を食べていたそうです。当時の経済基盤は米で、武士の給料も米で払われていたため、江戸には大量の米が集まっていました。それで、江戸市民は将軍と同じ白米=ごはん(御飯)を食べていたそうです。敬語の「御」が付いているので、白米に価値があったことがわかりますね。
ちなみに、私は「日本産の白米しか食べたくない主義」です。玄米は好きじゃありません。そして、日本産の米は外国産より断然おいしいですからね。

つらつらと、とりとめのないことを書きましたが、みなさんの休みの話も聞いてみたいです。

日本海と田んぼ
 
 
*1 『津軽』、太宰治、新潮文庫、1951年
*2 『うつくしく、やさしく、おろかなり―私の惚れた江戸』、杉浦日向子、ちくま文庫、2009年
 
 

2012年8月15日水曜日

医者に行く

日本は今週お盆です。東京の駅や電車に人が少なくて、町が静かだなあと感じます。私の家族は祖母が生きていた時はお盆の習慣が残っていましたが、その祖母が他界した後はそれもなくなりました。

ところで、今日は日本語と英語の直訳ができないという例を一つ挙げようと思います。簡単な文ですが、意外と日本語上級者でも間違える表現です。間違えて言っても、意味がわかるので、きっと周りの人が直さないのでしょう。
医者を見る。
もちろん、"I will see a doctor. "の訳ですね。でも、これは間違いです。"see" は必ずしも「見る」に訳せないからです。特に "see" が "meeting" の意味を含む時は気をつけましょう。
① be near and recognize somebody, meet somebody by chance
例) I saw your mother in town today.
訳1) 今日 町であなたのお母さんを見たよ。→ 見ただけで、話さなかった。「偶然」の意味が含まれている
訳2) 今日 町であなたのお母さんに偶然会ったよ。 → あいさつだけかもしれないが、話をした
② visit, have a meeting witon somebody
例) I am seeing my lawyer tomorrow.
訳) 明日 弁護士に会う
③ receive a call or visit
例) She is too ill to see anyone.
訳) 彼女は具合が悪すぎて、だれにも会えない。 
④ spend time in the company of somebody
例) She doesn't want to see him any more.
訳)彼女は彼にもう会いたくない

つまり「だれかと話をしたり、何かをしたりするという目的がある」場合は「人に会う」を使います。 「人を見る」というのは「目を使って、人を視覚に入れる」という行為です。ですから、"I will see a doctor. " は「医者に会う」と言ってもいいのですが、「医者に行く」や「病院に行く」という言い方が普通だと思います。

また、医者が患者の体を調べて、健康状態や病状を判断することを「医者が患者を診る(みる)」と言います。漢字は違いますが、もちろん「見る」という行為の一例です。この場合、人の体を物として考えているのでしょうね。

それから、私が外国人と話している内に気が付いたことですが、英語では "hospital" と "clinic" を使い分けていますね。でも、日本語では「病院」と「診療所/クリニック」の定義に違いはあるものの、普段の会話ではその違いを気にしません。実際は「クリニックに行った」としても、「病院に行った」と言う場合が多いと思います。

8月後半もまだまだ夏は続きます。みなさん、楽しい夏をお過ごしください!


夏のわさび畑



2012年8月3日金曜日

ロンドン オリンピック

みなさん、ロンドンオリンピックを見ていますか?私は家にテレビがないから、全然見ていません。なでしこJAPAN(日本女子サッカーチーム)の試合を一回見ただけです。でも、色々な国の生徒たちとオリンピックの話を楽しくすると、世界中の人たちが同じ物を見て、興奮しているんだな~と感じて、嬉しくなります。ちなみに、オリンピックを漢字で書くと、「五輪」です。カタカナより短い上に、オリンピックのシンボルが明確に表されていますよね。

連日、みなさんが応援しているチームや選手が試合に勝ったり、負けたりしていますね。相手との差が大きかったり、選手の調子が悪かったり、色々な条件の下で試合が行われるので、勝ち方や負け方も色々ありますね。日本語では漢字の組み合わせで、勝敗の種類をかんたんに表すことができます。例を見てみましょう。
  1.  (らくしょう)
  2.  (かいしょう)
  3.  (しんしょう)
  4.  (かんぱい)
  5.  (ざんぱい)
  6.  (せきはい) などなど。
」は勝つ。「」は敗れる、つまり負けることです。

1. 楽な(らくな)
  • 意味: かんたんな
  • 例: あのテストは楽だった。
2. 快(かい)
  • 意味: 気持ちがいいこと
  • 例: 快適な生活
3. 辛い(つらい)
  • 意味: くるしい、困難な
  • 例: 毎日の練習が辛い。
4. 完(かん)
  • 意味: 完全に、すっかり
  • 例: 完全に失敗した。
5. 惨めな(みじめな)
  • 意味: かわいそうで見られない、ひどく悲しい
  • 例: 惨めな思いをした。
6. 惜しい(おしい)
  • 意味: もう少しのところで実現されずに終わり、残念だ
  • 例: 結果は3-2で、惜しい試合だった。 
このように、一つ目の漢字を変えることで、たくさんの勝敗結果が表わせるんです。漢字はやっぱり便利ですね。

今晩日本の午前1時から、なでしこJAPANとブラジルの試合が予定されています。とっても見たいのですが、明朝は6時に起きなければならないから、外に見に行くのは辛いです。どうしようかと今、考え中です!

2012年7月4日水曜日

消滅寸前言語

*English translation

7/1にJLPTを受けた方、お疲れさまでした。テストは難しかったですか?
日本語を母国語として話す人の数は日本の人口を基にして、約1億3000万人。世界の中で母国語人口が9番目に多いそうです。(1位は中国語、2位は英語) 
でも、日本語は日本でしか使えないので、便利な言語かどうかはわかりませんね。

先日私はたまたま手に取った『ナショナル・ジオグラフィック』の記事を読んで、とてもびっくりしました。
「2週間にひとつ、地球上から言語が消えている。」
現在世界には6000~7000の言語がありますが、100年以内にこの半数が消えるそうです。 ユネスコは約2500の言語が消滅の危機にさらされていると発表し、最も危険な言語は538あります。その中のひとつが日本の北海道などでわずかに話されているアイヌ語。何と、話者は15人程。

そして、日本の中には「重大な危険」または、「危険」と分類された言語が他に7つもあります。
  1. 八重山語 (やえやまご)
  2. 与那国語 (よなぐにご)
  3. 沖縄語  (おきなわご)
  4. 奄美語  (あまみご)
  5. 国頭語  (くにがみご)
  6. 宮古語  (みやこご)
  7. 八丈語  (はちじょうご)
7番の八丈語は東京の南方に位置する八丈島の言語ですが、それ以外は沖縄や鹿児島付近の言葉です。ユネスコはこれらの言語を「方言」ではなく、「独立の言語」と認めています。
恥ずかしながら、私は日本で標準語と違う言語はアイヌ語と沖縄語しか知りませんでした。でも、地理的に考えれば、島々では昔は人々の行き来が少なかった訳ですから、独自の言語が発達するのは当然ですね。

文字の発明は人類の発明の中で最も重要なものと言えます。そして、言語の発展はその言語を話す人々の歴史や文化の象徴です。何百年もかけて、成長してきた大切なものが無くなってしまうのは大変惜しいことです。

でも、言語の世界も「弱肉強食の論理」が成り立つんですね。国が統一されていくのと共に、言語も主要な言語に取って代わられていく。日本国内なら日本語、世界を見れば、英語、中国語、ヒンディ―語などが話せれば、生活しやすい。つまり、少数言語は話す必要がなくなるのです。

現代の生活で飛行機の旅やインターネットなどが普及したことによって、世界がどんどん小さくなっていっています。また、都市化が進むことで、少数派の文化が主流の文化と同じ様なものになっていきます。その後ろに失われていく大切なものがあることを忘れてはいけませんね。

ところで、私が小学生の時、東京ディズニーランドができて、家族と遊びに行きました。ディズニーランドの乗り物のひとつに "It's a small world" というのがあって、お客さんはボートに乗りながら、アトラクション内を回ります。そこには世界中の民族衣装を着た人形がたくさん並べてあって、人形たちが "It's a small world" の歌を歌い、平和な世界が作りだされていました。
東京ディズニーランドなので、もちろんその歌は日本語でした。人形たちは「せ~かいは せまい~♪」と歌っていて、私は小学生ながらに違和感を感じたのを覚えています。「世界は狭いの?世界は広いから、おもしろいんじゃないの?見たことも、行ったこともない場所は広い世界にあるんじゃないの?」
さらに、普通「狭い」という単語は「家が狭い」とか「道が狭い」とか、否定的な意味で使われることが多いので、「せ~かいは せまい~♪」と明るく歌っていることが、余計におかしく感じたのです。

世界が狭くなればなるほど、独自の文化を持ち続けることは難しくなるのですね。それは避けられないことなのでしょう。

300年前の江戸の人々が話していた日本語が私にわかるでしょうか?


 

2012年6月8日金曜日

「さか」と「ざか」

*English translation

東京は坂の町です。私は坂の上に住んでいるので、どこに行く時も坂を上り下りしないといけません。 暑い日などはとても疲れるのですが、東京の坂にはファンや坂オタクがたくさんいます。それは、坂の名前を見ると、それに東京の歴史や文化が表れていることが多いからでしょう。うちの近所の坂には一つ一つくいが建てられていて、そこに坂名の由来が書いてあります。それらを読むと、「昔、この坂の上にこの名前のさむらいの屋敷があったのかあ。」などとわかって、興味深いです。「東京の通りには名前がなくても、どの坂にも名前がついている」ことをよく外国人に指摘されます。

ところで、日本に住んでいる人は自分の町の通りや橋の名前をいくつか知っていますね。都心に住んでいる人なら、「めいじおり」「あおやまおり」「にほん」などの名前を聞いたり、言ったりするでしょう。それで、自分で文を作る時に「このおりを右に曲がる。」とか「あのを渡ろう。」などと言ってしまいます。実は、これは間違えです。
  • street, road: おり (おりではない)
  • bridge:  (ではない)
ですので、「このおりを右に曲がる。」と「あのを渡ろう。」が正しい文です。

でも、「おり(通り)」や「(橋)」の前に特定の名前が付くと、漢字の発音が変わって、「めいじおり(通り)」や「にほん(橋)」になります。

こういう単語は他にもあるので、見てみましょう。
①特定の名前+単語の場合に、濁点が付く  (*例外もある)
  • 坂()→  【例】ふじみ (富士見坂)
  • 川()→  【例】すみだわ (隅田川)
②特定の名前+単語の場合に、漢字が訓読みから音読みに変わる  (*例外もある)
  • 山(やま)→ さん 【例】ふじさん (富士山)
  • 湖(みずうみ)→  【例】やまなかこ (山中湖)
  • 城(しろ)→ じょう 【例】おおさかじょう (大阪城)
したがって、外国人が「週末にに行った。」とか「大阪でじょうを見た。」と言うと、それを聞いた日本人は「???」となってしまいます。
正しくは「週末にみずうみに行った。」「大阪でしろを見た。」です。

また、富士山に関しては、おもしろい理解をしている外国人が多いです。ふじさんの「さん」は山の音読みですが、漢字を知らない人はふじさんの「さん」は人名の後につける「さん」と同じだと誤解することがあります。「日本人にとって、富士山は大切な山だから、尊敬を込めて、“ふじさん”と言っているんじゃないの?」と時々聞かれますが、そうではないんです。

ちなみに、東京の新宿にある大きい公園「新宿御苑(ぎょえん)」が、どうして「こうえん」ではなく、「ぎょえん」なのかというと、「御苑(ぎょえん)」の意味は"imperial park" で、そこは明治時代に皇室が管理していた場所だったからです。

箱根の芦ノ湖(あしのこ)と富士山

2012年5月2日水曜日

News Web Easy

"News Web Easy"は NHKが公開している「やさしい日本語のニュース」です。
原稿にふりがなが付き、いくつかの単語の意味がポップアップですぐわかるようになっています。
アナウンサーがはっきりわかりやすく話しているので、音声を聞くのも大変よい練習になります。
ぜひ使ってみてください。

http://www3.nhk.or.jp/news/easy/index.html

2012年4月8日日曜日

「られる」の形~尊敬語と受身形

先ほど、尊敬語の「お+ます形+に なる」の投稿を書きましたが、まだ尊敬語について考えています。「れる/られる」のパターンについてです。グループ1の動詞は「あ段+れる」、グループ2の動詞は「ます形+られる」。この動詞の活用は受け身形の場合と同じですね。例文を見てみましょう。
  • 普通の文: 社長は 私に おつかれさまと 言った。
  • 尊敬語の文: 社長は 私に おつかれさまと 言われた
  • 受け身の文: 私は 社長に おつかれさまと 言われた
どうして、尊敬語と受け身形が同じなのでしょうか?これらの文の状況を想像すると、相手の行為(社長の行為)は話し手(私)の意思と関係ないところで行われています。相手の行為に敬意を表すために、尊敬語を使用します。

同時に、受け身形では主語は変わりますが、動詞は尊敬語と同じように「言われた」を使って、話し手が相手の行為を受けたことを表しています。その行為もやはり、話し手の意思と関係ないところで行われています。こういう共通点があることから、文の構造は違っても、「尊敬語」と「受け身形」の動詞の形が同じなのかもしれません。(私の推測です。)

それから、日本語では受け身形が多く使われます。ここには日本人の心理と日本語の特徴が表れている気がします。例えば、先日日本語のクラスで日本人写真家・杉本博司(すぎもと ひろし)のウェブサイトを読んでいた時、私たちは彼が受け身形を多用していることに気がつきました。
私は「蝋燭の一生」を記録してみることにした。ある真夏の深夜、すべての窓は開け放たれて、その夜の風が招き入れられた。蝋燭に火がともされると共に私のカメラのレンズも開かれる・・・   (http://www.sugimotohiroshi.com/praiseJP.html)

彼はここで4つ受け身形の動詞を使っていますが、実は全ての行為は写真をとる準備のために、彼が行ったことです。自分がしたことにも関わらず、受け身形を使う彼の心理は?この写真のプロジェクトで彼は暗闇の中、一本のろうそくの火を撮り続けます。電気がない真っ暗な夜はまさに神々が現れる時。その闇と火と見つめ合うことは、自然の力に敬意を抱き、その“超自然”なパワーをそのまま受け入れることなのだと思います。ですから、写真家は準備段階からすでに自然の力に飲み込まれていて、自分の行為さえも自然の力のもとでされたことと感じているのだと思います。

そして、このような受け身形の使い方は日本人にとって変ではありません。きっと日本人はこの写真家のような感覚を持っているのでしょう。

また、上記の文は文法的に説明すると、完全に受け身形なのですが、自然の力に敬意を表しているという点では尊敬語のような感じにもなるのかもしれませんね。

ちなみに、この写真家はバイリンガルなので英文のページもあります。でも、英文では受け身形で書かれていません。(http://www.sugimotohiroshi.com/praise.html

*『伊勢神宮の謎を解く―アマテラスと天皇の「発明」』、武澤秀一、ちくま書房、2011年





2012年4月7日土曜日

尊敬語

東京はすっかり春になりました。桜も見頃を迎えて、とてもきれいです。みなさんの町や国にも春が来ましたか。

今日は前回に続き、敬語の話をしますが、その前に「日本の神」について、少し触れます。先月末、私は伊勢(いせ)に旅行して来ました。伊勢には伊勢神宮という日本の神社の中心があり、そこに祀られている神様はアマテラスオオミカミという太陽の女神、これも一番の神様です。伊勢に行く前に、神道、神話、そして天皇との関係について本で勉強しました。

日本では大昔から森羅万象(しんらばんしょう)にひそむ超自然を崇拝してきました。特に蛇、太陽、高木、稲霊は人々がおそれ、神となり、敬意を表したものだそうです(*1)。これらをはじめに、自然の要素が持つ力が色々な神話を生み出しました。そして、天皇制が成立した時に、太陽神を天皇の祖先として、天皇創造の神話ができあがりました。

それ以後、日本人は「人の力が及ぶことのできないパワー、自然的なパワーを持つものが神々、そして天皇だ」と考えるようになったと思われます。

では、ここで敬語の説明に移りましょう。ご存知のとおり、尊敬語には3つのパターンがあります。
  1. れる/られる
  2. お+ます形+に なる
  3. 不規則形
2のパターンと対照的なのが、謙譲語の「お+ます形+する」です。謙譲語は話し手の行為に使うので、そのアクティブな行為を表すために、「する」が使われているのはわかりやすいですね。
では、どうして尊敬語に「なる」を使うのでしょうか?
なる: 物事が できあがる、今までとちがった状態に変わる、など。
「なる」は、自然的な変化やその結果、 自分がコントロールできないことが起きた結果などを表すことができます。つまり、神々や天皇が行ったことは「なる」を使って表すというように考えることができます。この考えは「なる」を使って、相手の行為に敬意を表す尊敬語につながっている気がします。
ちなみに、日本で敬語は700年代から使われています。最初に始まったのは天皇などに対して使う尊敬語でした。

現在の「なる」を使う尊敬語が大昔のような意味合いで使われていることは決してありませんが、相手の行為は自分の手の届かないところで行われるので、自分の意思を含まない「なる」を使うのが日本人にはすんなり感じるのだと思います。

*1 『伊勢神宮の謎を解く―アマテラスと天皇の「発明」』、武澤秀一、ちくま新書、2011年


2012年3月3日土曜日

敬語!

みなさんは『美味しんぼ』というマンガをご存じですか?食について書かれたマンガで、昔から大人気の作品です。人間、だれでも食べることに興味はあると思いますが、日本人は特に食べ物や料理に関心が強いですね。

『美味しんぼ』では色々な食材や料理法が、徹底的なリサーチをもとに書いてあって、そこに登場人物たちのドラマが絡み合っています。今、私が読んでいる54巻は「日本酒の実力」という題名で、文字どおり、おいしい日本酒を紹介したり、日本酒業界の大きな問題を説明したりしています。日本酒好きのアメリカ人の生徒と一緒に読んでいます。

といっても、今日のテーマは日本酒のことでなくて、このマンガに出てきた敬語表現です。
マンガの中である有名な美食家(海原先生)とある銀行の頭取が話しています。二人とも社会的ステータスを持った人たちです。以下は美食家が銀行を訪問したシーンの会話です。
頭取: 海原先生、わざわざお越しいただくとは恐縮です。
(美食家が頭取にお土産を渡す)
美食家: 以前 李朝の白磁の壺をいただいたお礼です。自作で僭越(せんえつ)ですが、茶碗です。普段使いにお使いください。
頭取: うはああ。先生の御作をちょうだいするとは光栄です!あの白磁の壺はまり子(娘)の結婚披露宴に「至高のメニュー」を出してくださったお礼に差し上げたものです。そのお返しをいただくとは恐れ多い。
難しい単語がいっぱいあるのですが、調べて読んでくださいね。単語を調べると、二人の会話の内容がわかるでしょうか?尊敬語、謙譲語、丁寧語がふんだんに使われているので、どれがどれか分けてみましょう。

①尊敬語
  • お越し: 訪問
  • 御作(ぎょさく): 相手が作った物をうやまう
  • くださる: くれる
②謙譲語
  • いただく: もらう
  • 恐縮です: 相手に迷惑をかけたり、相手から何かをしてもらった時に 申しわけないと思う
  • せんえつ: 自分の立場を超えて、出すぎたことをしたとへりくだる
  • ちょうだいする: もらう
  • 差し上げる: あげる
  • 恐れ多い: 「恐縮」と同じ
③丁寧語
  • お礼
  • お使いください
  • お返し
 もし、私とこの二人のどちらかが話せば、私だけが尊敬語や謙譲語を使って、話さなければなりませんが、この二人のように同じくらいのレベルにある人たちが話す場合には、それぞれが相手を尊敬したり、自分を謙遜(けんそん)したりしながら、複雑に会話を進めます。

そして、敬語表現を読み解くポイントは「だれがだれに言っているか」、また「だれがその行為の主語か」を見つけることです。尊敬語を使うと、その動詞は相手の行為、謙譲語を使うと、その動詞は自分の行為だということを忘れないでください。これは暗黙の了解なので、「私は」「あなたは」などの単語が無くても、だれの行為かわかるようになっています。

では、先ほどの会話を普通語にして、主語と説明を入れて、見てみましょう。

頭取: 海原先生、わざわざ来てもらって、すみません。
(美食家が頭取にお土産を渡します)
美食家: 以前 私があなたから李朝の白磁の壺をもらったお礼です。自分で作った茶碗です。大した物ではありませんが、普段使いに使ってください。
頭取: うはああ。先生が作った物を、私がもらうとは光栄です!あの白磁の壺は、あなたが まり子(娘)の結婚披露宴に「至高のメニュー」を作ってくれたお礼に、私があなたにあげたものです。私があなたからそのお返しをもらうとはすみません。
状況がわかりましたか? 同じレベルの二人が話すなら敬語なしでもいいのに・・・と思っても、敬語には社会的マナーや大人の常識という意味合いも強いので、使わないわけにはいかないんですね。




2012年2月21日火曜日

同音語クイズ

時々私が引用している金田一春彦(きんだいち はるひこ)の『ことばの歳時記』(ことばの さいじき)で見つけた同音異義語の例です。
今年もそろそろ税金申告の季節が近づいて来ました。税務署から例年まわってくるあの緑色の活字がいっぱい印刷されている紙を前にため息をついている家庭も多いことだろう。ある日、ある中学生が学校の国語の試験をしょんぼりとして持って帰って来た。どうしたのかというと、その子は漢字の書き取りで間違いをして、クラス全体から笑われたという。 
さて、「深刻な表情」と書くべきところに、この子はどの漢字を書いてしまったのでしょう?みなさんはわかりますか?

ちなみに、私は先日Facebookでおかしい写真を見ました。普通、日本の小学校のテストの答案用紙には次のように名前やクラスを書くようになっています。
  
2  ねん 1  くみ  なまえ おかもと みなこ 
でも、その写真では次のように書いてありました。
何 見てん ねん どこの くみ   なまえ 言ってみい
意味がわかりますか?これは関西のやくざが別のやくざに強い口調で、「なんで俺のことを見てる?お前、どこの(やくざの)組から来た?名前を言え。」 と言っているのです。
日本の文化と日本語がうまく組み合わされたおかしい冗談です!本当に小学生が考えたのかなあ?

2012年1月24日火曜日

Nihon or Nippon

*English translation

先日、日経新聞(日本経済新聞)を読んでいたら「ニンとニッン、どっちを使うか?」という記事がありました。ニホンを使う場合とニッポンを使う場合の例や、言葉の歴史などが書かれていて、興味深かったです。皆さんも疑問に感じたことがありますか?

私が日本語を教えてきた経験では、Japan が日本語で何か知らない方もかなり多いですし、知っている方は Japan = Nippon と思っていることが多いです。私自身の日常生活では「ニン語を話す」「ニンに住んでいる」「ニン酒を飲む」など、「ニン」ばかり使って、「ニッン」を使うのはまれです。でも、特に会社名、学校名、団体名で「ニッン」が使われることが多いようです。新聞記事の中に、「2009年の閣議(内閣による議論)でニホンとニッポンはどちらも広く通用しているので、どちらでも構わない。統一する必要はない。」と決定されたと書いてありました。

私が「ニッン」を使う例として思い浮かぶのは、唯一私が好きなスポーツ、サッカー日本代表チームを応援する時に「がんばれ、ニッン!!」と言うことです。記事にもありましたが、スポーツの場合は「ニッポン」を使うことが多くて、それには言葉の印象が関係しているそうです。「ニン」はやわらかい印象、「ニッン」は力強い印象です。
この印象の違いはみなさんもわかりますか?やわらかい「ほ」の音に対して「ぽ」は力を入れて音を出しますね。この違いが日本語の特徴の一つである擬態語/擬音語を作る原点になっていると思います。

は行(はひふへほ)の印象はやわらかく、力が抜けている感じです。また、ぱ行(ぱぴぷぺぽ)の印象は軽く、はじける感じです。『日本語擬態語辞典』(*1)に書かれている例を見てみましょう。
ら:意味もなく軽薄に笑うさま。あいまいに笑うさま。また、言動が軽々しい感じ。 
これは楽しく笑うのとは違って、理由がないのにだらしなく笑っていることです。みんなが真剣に何かをしている時に、力を抜いて気味悪く笑っている人、時々いますね。
ら:①軽薄によくしゃべるさま。 ②外国語を流暢にしゃべるさま。 
外国語を上手に話すことを「ぺらぺら」というように、これにはある程度のスピードがあって 、テンポの良さが感じられます。
このようにそれぞれの行に音の特徴があります。特にわかりやすいのが「行」「行」と「行」「行」ではないでしょうか? 行は軽い、かたい感じで、行はさわやかな感じです。これに対して「」が付く行と行はあらい、不快な感じがあります。

そして、こういう音の印象は日本人だけが感じるものではなく、ある程度、万国共通だと私は思っています。例えば、英語の"pop"()という単語は先ほど述べた行の印象と同じで、「(軽く)はじける、(軽く)飛び出る」という意味がありますね。また、"crisp"(プ)も、の音から「かりかり」「さくさく」といった食べ物をかんだ時の軽快な音と同じ印象です。みなさんはどう思いますか?英語以外の言語でもこんなことがありますか?

*1 『日本語擬態語辞典』、五味太郎(ごみ たろう)、講談社、2004年
新聞記事を読みたい方はこちらをクリック⇒ 日本経済新聞の記事 

2012年1月1日日曜日

2012年元旦


明けましておめでとうございます。
今年もよろしくお願いします。
2012年が皆さんと世界にとって、すばらしい一年になりますように。
健やかに、楽しく毎日を過ごしましょうね。

岡本 美奈子 (Minako Okamoto)


直訳できない "It's a beautiful day!"

 明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!! と言いながら、最近はブログの更新をなまけています。読んでくださる方、ありがとう。 2023年は世界に平和が訪れることを心から願います。歴史を振り返ると、人間は戦争を繰り返していますね。今までの人類の半分は戦争で死ん...