アニメで「くれてやる」を聞いたことがあるというコメントをもらいました。実は、私も最近マンガで「くれてやる」を見つけたので、それについて考えてみたのです。実際の生活で、私は「くれてやる」を使ったことがないし、他の人が使ったのを聞いたこともないと(多分)思います。
まず、「くれる」と「やる」を二つに分けましょう。そして、「やる」の方を見てみましょう。
「やる」は教科書でも説明されているから、みなさんも知っていますね。「くれてやる」の「やる」は「あげる」と同じ意味で、使い方は「年上→年下」「目上→目下」「人間→動物/植物」の場合に使われます。(注意:「やる」は他の意味もあります。)
- 毎朝、私は花に水をやる。
- 私は妹に勉強を教えてやった。
ただし、「やる」には「私が上の人、相手は下の人」という意味があるので、その印象は「えらそうな感じ」です。ちなみに、日本人はこんな印象を「上から目線(めせん)」と表現しています。植物や動物に対してなら、問題ありませんが、会社や友だちの中で「上から目線」の「やる」を使うと、「失礼」とか「不愉快」に感じる人が多いでしょう。私は「やる」は使わないで、「あげる」をいつも使っています。
次に、「くれる」です。日本語の教科書には下記のようなことがたいてい書いてありますね。これはみなさんも理解しているはずです。
- 他の人が自分に、または自分側の人にものをあげる
- 他の人が自分に、または自分側の人に何かをする
でも、国語辞典(*1)を開くと、別の意味も書いてあるんです。
- 自分が相手にものを与える。
- 自分が相手に対してある行為をする。
- 相手を自分より低い者として、いやしめる気持ちを込めた言い方。
- 「くれてやる」の形になることが多い。
つまり、「やる」と同じ意味、そして同じ使い方です。例文も「鳥にえさをくれる」。
したがって、「くれてやる」の元の意味は「あげる+あげる」=「あげる」ということですね?!
前回、私が出した例をもう一度見てみましょう。
兄と弟がゲームをしていて、弟が勝ちました。
弟: やった、僕が勝った。お兄ちゃん、僕にあの時計をくれる?
兄: くれてやるよ。
兄の「くれてやるよ」は「あげるよ」という意味です。兄は弟に時計をあげます。ただ、ここには二重の「上から目線」があります。だから、「乱暴」な印象があります。
さらに、その時計は兄にとって大切な物で、実はあげたくないけど、約束をしたから、弟にあげる。「恩着せがましい」です。
「上から目線」「乱暴」「恩着せがましい」、全て良いものではありませんね。相手をいやな気持にさせてしまいます。だから、「くれてやる」を使うことはめったに無いのです。
でも、調べてみると、方言では「くれてやる」を「あげる」と同じ意味で使うそうです。その場合は、「くれてやる」と言った人に悪気は全然ないそうです。でも、普段これを使わない人が聞いたら、やっぱりビックリしてしまうそうですよ。
*1 デジタル大辞泉、小学館