2015年12月7日月曜日

Learn は「習う」だけじゃない

日曜日にテストを受けたみなさん、お疲れさまでした!テストの結果のことはとりあえず忘れて、今日から楽しいクリスマス気分を味わってください。日本語の勉強も少し休憩しましょう!
それで、今回の内容は簡単なものにしますね。

先月の投稿で英語の "have" は便利な動詞だと書きましたが、私は常日頃 "learn" も便利な動詞で、日本語とはちょっと違うなあと思っています。外国人が"Learn" を「習う」と訳して使うのを聞くたびに、何か違和感があって、日本語との違いを考えました。"Learn" は日本語では「習う」だけではありません。「学ぶ」「学習する」「勉強する」「練習する」などもあります。

90%の割合で「習う」はだれかからレッスンを受けている状態だと思います。つまり、「教えてもらっている」ことです。例えば、「料理を習っている」は料理教室に行っている、またはお母さんから教えてもらっているなどになるでしょう。
I can't drive yet. I'm still learning. :私は運転がまだできないから、習っているところです。 
この日本語の文だと、運転免許がまだなくて、自動車学校で授業を受けているということが想像できます。

でも、免許はあるのに、運転が下手だから自分で練習している場合も、上記のような英文になるのでなはいでしょうか。
同じように、料理学校には行かずに、家で自分で料理を毎日していれば、「料理を勉強している」、または「練習している」と言います。
She learns languages with ease. :彼女は語学を簡単に学べる。(「学ぶ」は「可能形」になっています)
ここでも「習う」は使いません。この文で先生がいるか、どうかは問われていなくて、語学能力の有無について述べているからでしょう。 「学ぶ」と「学習する」には「勉強した結果、そこから何かをきちんと得る」という意味があるようです。勉強や練習をしても、何も覚えてない、または何もできるようになっていなければ、「学んだ」ことにはならないのです。

自分の経験や間違いを通して、将来に役立つ何かを得た場合も「学習する」が使えます。
I'll never ever do that again. I've learned my lesson! :こんなことは二度としない。私は学習したよ!
「何を学習したか?」 それは文脈が必要になります。例えば、前の晩に飲み過ぎて、二日酔いで大変なら、「自分の飲める量を学習した」と言えますね。

それから、情報を通して何かを知った時も英語では "Learn" を使いますが、日本語ではそのまま「知る」を使えばいいと思います。
I am sorry to learn of your illness. :あなたの病気のことを知って、残念です。
「漢字やだれかの名前などを頭の中に入れる」作業には「覚える」を使います。
I am trying to learn a poem by heart. :詩を覚えようとしている。
I never learned his name. :彼の名前が全然覚えられない。(ここも可能形です)
あれ~、こうやって見てみると、「習う」を使う例が少ないですね。やはり単純な直訳ができない動詞です。こういう動詞はまだ他にもあって、「work =働く」も気になっていますので、今度書こうと思います。

では、皆さん、よい年末年始をお迎えください。そのためには風邪など病気にかからないように、気を付けることも大事ですよ。(ちなみに、私は手洗い、うがいは欠かしません。それと、電車内などで多くの人が触る所を触るのも避けた方がいいと思いますよ!)


2015年11月16日月曜日

旅に出る人へ Have a nice trip

English translation

この週末はパリで大変悲しく、ひどい事件がありましたね。犠牲者の方々の冥福をお祈りします。
同じ事件が二度と起きないことと、この悲劇が次の悲劇を生まないことを願うばかりです。

みなさんもご存知のとおり、パリは人種のるつぼの町です。そこには多くの問題や歪みがありますが、同時にその多様性が町の魅力にもなっています。特に人種や文化の単一的な日本に住んでいる私からみると、その多様性に富んだ町は特別です。
宗教とテロリズムは別物です。憎しみと暴力の負の連鎖が止みますように。皆がただ幸せに暮らせる社会になりますように。(今は不可能な希望にしか見えませんが。。。)



では、日本語の話を始めましょう。
Have a good day, Have a good weekend, Have fun など、"have" を使った英語の表現はいくつでもあります。というか、いくつでも作れますね。でも、日本語には "have" のような便利な動詞がありません。(以前の投稿「Have a good weekend」に書きましたが)
そういう訳で、Have a nice trip と Have a nice flight も直訳することはできません。直訳はしなくても、旅に出る人に向ける日本語の表現はあります。
Have a nice trip. :旅行を楽しんで来てね。
Have a nice/safe flight. :気を付けて、行って来てね。 
こんな風になるでしょうか。日本語特有のおもしろい点は「来てね」が最後に付いていること。この「来る」は「私たちが今いる所に戻る」という意味ですね。「旅行に行くけど、必ずここに戻ってください」というメッセージが含まれています。
旅行を楽しんで来てね。: Enjoy your trip and make sure to come back.
気を付けて、行って来てね。: Take care and make sure to come back.
そう言えば、子どもの時学校の遠足の度に、先生たちに「家に帰るまでが遠足ですよ。」と言われたことを思い出しました。目的地に着くことが遠足の終わりじゃない、目的地から学校に戻ってもまだ終わりじゃない、学校から帰宅するまで遠足は続いているのだから、最後まで注意して行動してくださいと先生たちは言っていました。

次に、辞書によると、"flight" は「便」(びん)ですが、「いい便」とか「安全な便」、「私の便」という使い方はしません。ただし、次のような使い方はできます。

  • 直行便
  • 朝/昼/夜の便
  • 100便
  • 行きの/帰りの便

"My flight is late." と言いたい場合、「私の飛行機/フライトは遅れている。」となるでしょう。

それから、旅行や外出に関連する表現で "I am on my way." と英語で言いますね。これを直訳して「(私は)途中です。」というのも間違いです。正しくはこうです。
I am on my way (to school). : (学校へ)行く途中です。/(学校へ)向かう途中です。
「途中」は「出発地から目的地までの間」を表すだけでなく、「何かを始めてから終わるまでの間」も表します。次のような言い方もできます。

  • 食べている途中で、席をたたないでください。
  • 食事の途中で、席をたたないでください。
  • 試合の途中、旅行の途中、出張の途中

ところで、最近は日本に来た中国人観光客が大量にお土産(みやげ)を買うことがよく話題にのぼります。これを表す「爆買い」(ばくがい)という新しい単語もできました。日本人も家族、友だち、同僚などにお土産を買って帰ることが知られていますが、爆買いはせず、少しずつ買っているような気がします。
確かに素敵なお土産を買ったり、もらったりするのは楽しいですが、無料のお土産「土産話」も良いものですよ。
土産話: 旅行の経験を話して聞かせること
先日、外国人の友だちが京都に初めて行きました。美しい旅館に感激したこと、人混みの人気スポットでいらいらしたこと、静かなお寺で日本の文化をゆっくり味わえたこと、彼らの京都観などを話してくれて、聞き手の私もお土産話を楽しみました!

2015年10月25日日曜日

フランス旅行

今月は6年ぶりにフランスへ行って来ました!久しぶりのフランスはとっても楽しくて、「この雰囲気がやっぱり大好きだ♡」と実感しました。今回の旅の目的はパリに住んでいる友人たちに会うことと、シャンパーニュ地方への小旅行でした。
私はぶどう畑のある町へ旅行するのが大好きなんです。ワインが好きですし、ぶどう畑が広がる景色はどこもとても美しいので、フランスのボルドーをはじめ、カリフォルニアのナパ、南アフリカのケープタウンの近く、日本では山梨と長野のワイナリーを見に行ったことがあります。
シャンパーニュではぶどう畑の間を自転車で回って、本当に気持ち良かったです。ぶどうの収穫後でしたが、緑の葉が少し紅葉していて、そんな丘の斜面がどこまでも続いています。絶景でした!

シャンパン地方 アイ村
ピノ・ノワールのぶどう畑


パリの友人たちは昔、私が東京で日本語を教えていた人たちです。日本を出て以来、会ってなかった人たちと、その後も定期的に会っている人たちがいますが、離れていても友情が続いていることに感謝です。
その中の一人の家に今回は泊まらせてもらいました。彼女は3年ほど日本に住んでいて、2年ぐらい前に帰国しました。でも、彼女の日本語はまだとても上手です!忘れてしまったこともありますが、日本語の言葉や表現がすらすら出て来るのは驚きです。彼女は語学の習得に優れている上に、東京で集中的に日本語を勉強したおかげで、日本語力が持続しているのだと思います。

それから、もう一つのポイントは「彼女はとにかく話したいことがたくさんある」という点です。もともとの性格が積極的で、母国語では言いたいことをほぼ全部言うし、質問したいことをほぼ全部聞くタイプです。こういう姿勢が外国語になっても、変わらないのです。それで、言いたいことを言うために勉強がどんどん進んだのでしょうね。語学の習得のためにとてもいいことですし、大切なことだと思います。

私もそうですが、外国語を話す時に「ちょっと何て言っていいかわからないから、言うのはやめよう」と黙ってしまうことがよくあります。でも、そういう姿勢が普通になってしまうと、自己表現が十分できず、フラストレーションがたまりますし、語学力も伸びませんね。外国語を通しても、自分らしくいることは当然のことですが、意外とあきらめてしまう人も多いのではないでしょうか?

皆さんもこの友人のように「どんどん勉強して、どんどん使う」という良い循環を習慣にしてくださいね。

友人のアパートからの景色。パリの夕暮れ。


2015年9月19日土曜日

現代語:やばい、微妙、うざい

今日からシルバーウィーク!降り続いた雨もようやく止みました。今年の9月はとても雨が多く、先週は茨城県と宮城県で川の水があふれ、大変な被害が出てしまいました。町の中を濁流が流れる映像はまるで津波被害の映像を見ているようでした。それから、チリでも大地震がありましたね。自然災害は仕方ないとは言え、被害者の苦労は計り知れません。

今月は文化庁による「国語」に関する世論調査(*)の結果の一部を紹介します。皆さんも「やばい」という言葉を聞いたり、使ったりしたことがあると思います。調査によると、10年前とくらべると、「やばい」の使い方が変化しているようです。

みなさんは「やばい」をどう理解していますか?私は昔、子どもの頃、「やばい」は悪いことや困ったことが起きそうな時、または起きた時に使っていました。例えば、学校に行って、教科書をランドセル(日本の小学生のかばん)から出そうとしたら、忘れたことに気が付いて、「あっ、やばい!」と言ったり、友だちと遊んでいて、転んで、けがをしそうになったら「やばい!!」と言ったりしました。

それがいつの間にか、きれいな花火を見て、「やばい、きれい!」と言ったり、おいしい料理を食べて、「やばい、おいしい!」と言ったりする使い方に慣れていきました。この使い方は「すごい」や「すばらしい」という意味になっています。
すばらしい: とてもすぐれている、好ましい
すごい、やばい: 良いことでも悪いことでも程度が強い

そして、調査結果によると、普段からこういう使い方をしているのは10代は91.5%、20代は79.1%、30代は53.9%、40代は32.8%、50代は18.2%、60代は11.4%、70代は5.1%だそうです。若ければ若いほどこの使い方をしている人が多いのがはっきりわかります。ちなみに、私はこの使い方を知っていますが、自分では使いません。

また、「微妙」も使い方が変化している言葉の一つです。
元々の意味: うまく表現できないが、何ともいえない美しさがある
現代の使い方: 白か黒か、はっきり言い切れない
元々の意味には繊細で、詩的な印象があり、きれいな言葉だと思います。漢字も美しいですが、現代語では「ビミョー」とカタカナで書くこともあって、 とても軽い言葉に変化してしまいました。私もたまに使います。

「うざい」はそれ自体が比較的新しい単語です。1980年頃から東京の八王子市付近で当時の若者が使い始めたそうです。それでも、定着したのは最近のようで、「うざい」を使う割合は10代 78.0%、20代 50.7%、30代 43.2%、40代 29.36%です。20代の使用率が意外に低いなと感じます。
うざい:わずらわしい、めんどうくさい
「うざい」は人に対してよく使われますが、 この言葉はかなりきつい印象があると思うので、使う時は気を付けてください。

日本人の友だちが多い方、テレビや漫画などを通じて日本語を勉強している方は特にこのような言葉をよく知っているはずです。このような背景があることを知れば、より一層使い方の理解が深まると思います。

*調査対象 全国16才以上の男女、調査時期 2015年1月~2月、調査対象数 3,493人、有効回答数 1,942人
 

2015年8月23日日曜日

町の中の日本語

*English translation

突然ですが、みなさんは「標語」(ひょうご)を知っていますか?標語とは「ポスターなどに書かれた市民へのメッセージ的な文章」です。日本の場合は、よくキャラクターと共に標語が書かれていて、駅などにポスターとして貼られています。写真を見れば、すぐどんな物かわかるでしょう。下の写真が標語の一例です。



これは東京都交通局が作った標語です。私がバスの中で見つけて、写真を撮りました。
このポスターでは、駅のホームに人間ではない何かおかしなものが2匹いて、ぶつかっています。それから、電車に目と口が付いていて、びっくりした表情をしています。そして、絵の上と下に標語が書かれています。
日本人はこういう物を子どもの時から常に見ているので、何も感じないのですが、外国人にはこういうイラストでキャラクターがメッセージを伝えるのはおかしいと感じるのではないですか?
ちなみに、作家の村上春樹(むらかみ はるき)氏は「日本には標語が多すぎる。」と嘆いていました。

ところで、私がこの写真を撮ったのは別にこのイラストが好きだからではなくて、この標語の中に日本語の文法のポイントがいくつか含まれているからです。上級者には簡単でしょうが・・・
  1. ながら歩き
  2. こうなるかも
  3. やめよう
1の「ながら歩き」ってわかりますか?「携帯をいじりながら、駅のホームを歩く」という意味です。見にくいですが、実際このポスタ―の右側のキャラクターは赤い携帯をいじっています。携帯に集中して、隣りの人に気が付かずにぶつかっています。
もちろん「携帯をいじりながら」だけではなく、「本を読みながら」とか「酔っぱらいながら」とか事故を引き起こすおそれのある「ながら歩き」は色々あります。
この写真で左端が映っていませんが、英文は "No mobile phones and games while walking" です。

「ながら」の使い方は簡単だよ~と思っている人が多いみたいですが、実は日本語上級者でもよく間違えて使っています。みなさんの間違いは「ながら」="while" と思いこんでいること!「ながら」="while" と訳せますが、条件が一つあります。
「ながら」:1人の人が2つの行動を同じ時間にする
  • 私は)携帯をいじりながら、(私は)歩く。
  • 彼は)音楽を聞きながら、(彼は)運転する。 
外国人の間違いは下記の例です。
  • (私は)本を読みながら、(彼女は)テレビを見ている。
  • 雨が降りながら、(私は)走った。
最初の例では違う2人の行動を表しています。次の例で「雨が降る」は私の行動ではありません。
正しい文はこうなります。
  • 私が本を読んでいる間に/時に、彼女はテレビを見ている。
  • 雨が降っている間に/時に、私は走った。OR 雨の中、走った。
2の「こうなるかも」は「ながら歩き」のせいで、「こういう結果になるかもしれません」という意味です。
こう」は「こういう風に」や「こういう事に」などにも言い換えられます。

3の「やめよう」は「やめましょう」のカジュアル形ですね。難しくありません。

漢字も一つしか使っていない、こんなシンプルな日本語の中に便利な表現が三つも入っています!日本語の教材としてはすばらしい標語ですね。みなさんの中にも標語や広告のキャッチコピーを読んで、日本語を勉強している人がいますか?

とにかく、上の3つの表現を合わせると、「携帯ばかり見て歩いていると、事故を起こす可能性があるから、止めてください」というメッセージになりますね。まあ、正しいことを言っていますが、一人一人が注意するしかありません。この標語のおかげでどのくらい事故が減っているのでしょうね??


2015年7月18日土曜日

日本語の「省略」

English translation

日本は今日から3連休。7月20日月曜日は「海の日」です。海の日は最近始まったばかりだと思っていたら、もう20回目だそうです。来年からは8月11日が新しい祝日になって、なんと名前は「山の日」です!短い夏休みしかとれない日本の会社員の休日を少しでも増やそうという国の方針ですかね?
この3連休は曇りや雨の地域が多そうですが、東京はなんとか晴れそうです。楽しい週末が過ごせるといいですね。

さて、今日は日本語の「省略」について考えようと思っています。日本語は「私」や「あなた」まで省略してしまう言語ですから、みなさんが日本語を聞いたり、読んだりした時に、「この文には何が隠されているんだろう??」と思うことがよくあるんじゃないでしょうか?

まず、主語の省略について簡単に書きます。2人で会話をしている時に主語がなくても「私」について話しているのか、「あなた」について話しているのかは大体わかりますよね。
でも、2人の会話の中に他の人(第3者)が出て来た場合、もちろん初めて第3者に触れる時にはその人の名前を言うはずです。(そうじゃないと、だれのことかわかりませんね。)
そして、次にその人について話す時、その名前は言わずに、会話をしているかもしれません。(いつもではないと思います。)
それでも、だれについて話しているか、話者たちがはっきりわかる理由は動詞にあります。
会話の内容を考慮すると、その行為をした人(主語)が必然的に決まる動詞があります。例を3つ挙げます。

  1. あげる、もらう、くれる:例えば、「くれる」を使ったら、主語は「私」ではない。
  2. 敬語:例えば、「いらっしゃる」を使ったら、主語は「私」ではない。
  3. Someone said - 言いました(言った)、言っていました(言ってた):「言ってた」を使ったら、主語は「私」ではない。("I was saying" の場合は「私」もあり得る。)

(どうして「くれる」と「いらっしゃる」と「言ってた」を使ったら、主語が私ではないの?という説明は今回は省略しますが、その質問がある人は下記のコメントに書いてください。)

つまり、ここでのポイントは「日本語では主語が省略されていても、動詞から主語を推測できることがよくある」ということです。どの動詞が使われているか、注意深く聞く(読む)ことが大切です。

次はとても短い省略文を紹介します。日本に住んでいる方は何回も聞いたことがあるはずでしょう。

  • 私はビール。
  • 日本は長いんですか?

「私はビール。」を英訳したら、"I am beer." ですよね。これでは、まったく意味がありませんが、この文をレストランでビールを注文する時に言えば、意味を成すんです。この省略文の完全な形は
私はビールにします
ここで「します」は "choose" や "decide" の意味なので、「(メニューの中から)私はビールを選びます。」と言っているのです。動詞がなくても、状況から意味が判断できるので、動詞を省略してしまうのでしょうね。

次の「日本は長いんですか?」の英訳は "Is Japan long?" です。たしかに、日本は北から南まで長いですけど、この質問の本来の意味は "Have you been in Japan long?" です。この省略文の完全な形は
あなたが日本にいるの(時間)は長いんですか?
ずいぶん省略されましたね。 これも初めて会った人に質問するという状況があれば、意味を成すことになります。

最後の例は、文法的には省略形ではないですが、動詞が使われていません。
Q. もう田中さんに会いましたか?
A. まだです。
この「まだです」には「まだ会っていません」という意味が含まれています。 本来の文は「会っていません」という否定なのに、「まだです」という肯定文で表しているのがおもしろいですね。
もともと、「まだ+です」は「まだ~していません」という意味なので、「~」の部分(動詞)は前の文から判断するということです。

ところで余談ですが、先日バイリンガルの日本人と食事に行った時におかしいことがありました。その友だちが日本語と英語を混ぜて話していたところ、お店の人が彼女に「日本は長いんですか?」と聞きました。彼女の英語は完璧ですが、外見は完全な日本人なので、日本人に対してその質問をするのは変だな~と私は感じました。「海外は長かったんですか?」の方が自然な質問だと思うのですが・・・

2015年6月21日日曜日

「古いさん」はだれ?

6月、雨の季節です。日本は雨が多い国なので、雨の言葉がたくさんあると言われていますが、その一つに「雨男・雨女」があります。
雨男・雨女:その人が出かけたり、何かしようとしたりすると雨降りになると言われる男性・女性
私は「雨女」です。しかも、強力な雨女です。私が旅行をする時はいつも必ず雨が降ります。たいてい初日が雨です。ちょっと思い出してみても、去年の金沢旅行も高知旅行も雨でした。先月のゴールデンウィークの京都も雨が降りました。そして、今月の瀬戸内海の島めぐりの時も冷たいと雨と風に震えていました。。。だから、私はもう驚きませんが、私と一緒に旅をする相手は気の毒ですね。

さて、今日は "old: having lived a long time" について考えてみます。みなさんも知っている通り、"old: having been in existence or use for a long time" は「古い」ですね。そして、「古い」の反意語は「新しい」 (new) だけで、「若い」 (young) は反意語ではありません。では、"I am old." は日本語では何と言うのでしょうか?

「老人」「年寄り」という単語がありますが、これは英語で "the elderly" "senior citizens" です。「私は老人です。」という言い方はしません。30才の人が "I am old." と言いたい時に、「私は老人です。」と言ったら、変ですよね?
「老人」や「年寄り」は「老人の人口が増えている。」、「お年寄りから戦争の話を聞く。」などのように使います。

では、"I am old." は?
私は若くない。: I am not young.
こういう言い方もよくします。
私はもう若くない。: I am not young any more.
これなら、話し手自身の基準で 「old =若くない」が使えますね。 「若い」は一般的な年齢の定義もありますが、主観的に年齢の幅を表せる単語です。
結局、 "old: having lived a long time" にあたる形容詞は日本語には無いということです。こういう風に私が説明すると、生徒のほとんどが「日本人は本当に丁寧な人たちなんだね。」と言ってくれますが、私は「そうかな?多くの日本人は電車の中でお年寄りが立っていても、席をゆずらないよ。全然、お年寄りに親切じゃないよ。」と答えます。これは言葉の問題ではなく、心の問題ですよね。

おっと、日本語の説明に戻りましょう。
「若くない」の他に、「年をとる」という表現があります。これは "get old" と訳すことができます。
He is too old for you to marry. :あなたと結婚するには、彼は年をとりすぎている。
「彼は若くないから、あなたと結婚できない」という風にも訳せますが、最初の方が自然な言い方だと思います。

 私が今教えているある生徒は「古いさん」という言葉を作りました。彼はこの造語を "old person" の意味で使っています。もちろん彼は「古いさん」は本当の日本語ではないことを知っていて、私はこの単語がかなり好きです。意味を端的に表していて、さらに「さん」を使うことで失礼な感じがありませんね。皆さんはどう思いますか?使ってみますか?



2015年5月21日木曜日

神戸の隣の町、芦屋(あしや)ツアー 【N2の表現とともに】

今月の初めはゴールデン・ウィークでした。私は京都に1日、神戸の近くに2日間行って来ました。京都では少し雨が降りましたが、新緑が雨に濡れて、いっそうきれいでした。

村上春樹(むらかみ はるき)氏がおすすめしていた京都のお寺、毘沙門堂(びしゃもんどう)。


今日のブログでは神戸の近くの町、芦屋のことをN2の表現とともに書いてみます。

日本人にとって、「芦屋」といえば、高級住宅地。芦屋市は山から海にかけて、広がっています。
私たちは車に乗って、まず山の上に向かいました。さすが日本一の高級住宅地だけあって、大きい家が並んでいます。
山を上るにつれて、住宅地が高級になっていきます。最後は有料道路を通ってからでないと、行けない所になります。その地域の住人は毎回出かけるたびに道路の料金を払うんですよ。

最初の目的地は有名建築家、安藤忠雄(あんどう ただお)が設計した家。コンクリートの建物が緑の木々の間に建っています。

元々はファッションデザイナー小篠弘子(こしの ひろこ)の自宅だった。

こんな素敵な家に住んでみたいものだなあ。

ただ、山の上や途中に住むということは、学校に行くにしろ、会社に行くにしろ、帰宅するにしろ、いつでも坂を上り下りしないといけないんですね。大変そうです。

ところで、神戸は港があることから、昔から外国人が多く住んでいた地域です。その影響もあって、近くの芦屋にはフランス風やドイツ風のパン屋やら、レストランやらがたくさんあります。
アメリカの建築家、フランク・ロイド・ライト (Frank Lloyd Wright) もここに家を造りました。日本の家屋のスタイルを残しつつ、彼のスタイルも表現されていて、とても面白い建物です。

高台にあって、海も見える眺めの良い家。元々は酒蔵の当主が住んでいた。

続いて、坂を下りて行くと、駅などがあり、風情のある芦屋川に沿って、さらに行くと、浜に到着します。海が近くなるにしたがって、再開発されたような町が広がり、整然とした場所に大型スーパーやら、ドラッグストアやら、新しい住宅地があります。便利な反面、どこの町にもある個性のない場所です。正直に言って、こういうエリアにはつまらないものがあります

こんなおかしなチャペルもあります。結婚式用のにせものです!

関西に住んでいる方は一度「芦屋ツアー」をしてみたら、いかがですか。楽しいですよ。それができない方にはおすすめの本があります。谷崎潤一郎(たにざき じゅんいちろう)の小説、『細雪』(ささめゆき、The Makioka sisters )は芦屋を中心に大阪や神戸、京都などが舞台になっています。この本を読めば、芦屋の雰囲気がわかると思います。また、この小説を基に映画も作られているので、そちらもおすすめです。




2015年4月9日木曜日

Every day is 毎日, but every child is NOT 毎こども

*English translation

東京ではあっという間の桜の時期が終わったかと思ったら、急に寒くなって昨日はみぞれが降りましたね。まったく春らしくないですが、春の天気は不安定なものです。
みなさんは今年の桜を楽しみましたか?

さて、今日のテーマは「毎」と "every"の考察です。「毎日」「毎週」などは簡単で便利な単語なので、日本語の教科書の最初の方に出てきますよね。でも、実は「毎=every 」とは限らないことを知っていますか?上級者の方たちはきっと気が付いているでしょうね。
毎:その時はいつも
every: regular occurrence at specified intervals
「毎=every 」と訳せるのはこの定義が一致する場合のみです。ご存知のように、日 (every day)、朝 (every morning)、年 (every year)、回 (every time) など「時」を表す場合に「毎」を前に付けることができます。他には食 (every meal)、試合 (every match) のように "every time"の意味があれば、「毎」を使えるという訳です。

また、"every five minutes" は「5分毎(ごと)」になります。他の時間の場合も同じようにできます。

では、他の場合は?英語の辞書(Oxford Advanced Learner's Dictionary)の定義と例文を見ながら、考えていきます。
every: refer to groups of three or more which are seen as wholes
「個々の集団を全体として見る」ということなので、 「全て」「全部」「みんな」などの言葉を使うといいと思います。次の例文を訳してみます。(私の訳なので、他の訳し方もあるでしょう。)
  • Every child in the class passed the examination. このクラスの子どもたちはみんな試験に合格した。
  • I've got every record she has ever made.  彼女が今までに作った(出した)レコードを全て持っている。
または、「どの~も」という言い方もできます。
  • クラスのどの子どもたちも試験に合格した。
  • 彼女が出したどのレコードも持っている。/彼女が出したレコードはどれも持っている。

次に "each" の意味と重なる "every" はどうなるでしょうか?
every/each: every person, thing, group etc. considered individually
「二つ以上の物や人の一つ一つ」に焦点を当てる場合は、「それぞれ」や「一~一~」が合うと思います。

  • He enjoyed every minute of his holiday.  彼は休みの一分一分を楽しんだ。 (日本語だと、「一秒一秒」の方が自然です。)
  • They were watching her every movement.  彼たちは彼女の動きを一つ一つ見ていた。
  • Each of us has a company car.  私たちはそれぞれ、会社の車を持っている。
  • He gave us 5 pounds each.  彼は私たち一人一人に5ポンドをくれた。/彼は私たちに5ポンドずつくれた。

毎年春に咲く桜は日本人にとって大切なものです。それはただの花ではなく、時の流れや人生の変化などを強く感じさせるものです。一つ一つの小さな花は人生の一秒一秒にも似ていると私は思います。桜は日本中のどの町にも植えてあるので、どこに住んでいても、日本人は桜とともに成長しているのです。



2015年2月9日月曜日

Haruki Murakami が好きな方へのおすすめ

冬はやっぱり毎日寒いですね。外出するのも寒いと一層疲れてしまいますが、帰宅後の私の楽しみは「村上さんのところ」を読むことです。これは作家の村上春樹(むらかみ はるき)さんがファンからの質問などに答えて、ファンと交流しているサイトです。期間限定なので、楽しめるのは今だけです。
読者からの質問は時々だらだらと長い場合もありますが、村上氏の答えはシンプルで、とても読みやすいと思います。作品に関することから、人生に関すること、いたって普通のことまで、村上氏の色々な面がわかりますよ。

私が今のところ一番好きなやりとりはこれでした。他に笑ってしまうものもいっぱいあります。

2015年1月25日日曜日

直訳できないー "I hope you had a nice trip"

*English translation

東京では寒い日が続いています。空気がとても冷たいです。でも、この冬はまだ雪がちゃんと降っていません。1月1日に小雪が舞いましたが、それだけです。2月には大雪が降るでしょうか。

さて、日本語の学習を始めて間もなく、外国人が知りたがる表現の一つが "I hope" です。初心者に簡単に教える際に私はとりあえず「~といい」という表現を教えます。ただ、これはとりあえずの表現です。なぜなら、「~といい」は英語の "I hope" と同じようにいつも使えるわけではないからです。例えば、英語でよく言う "I hope you had a good weekend." は日本語にはそのまま訳せないんですよ。それで、今日はこの点について書いてみます。

まず、次の英文を日本語にしましょう。 "I hope it will be warm tomorrow." 
明日はあたたかいといい
「明日はあたたかい」の部分が話し手の希望で、この部分の終わりは動詞の辞書形か、名詞/形容詞の普通形(つまり、ですがない形) にします。「と」は仮定 (if) を意味します。したがって、この日本文の直訳は次のようになります。
"If it is warm tomorrow, it would be good." 
辞書には "hope" の日本語は「望む」や「希望する」とありますが、こんな場合には使われません。
日本語では仮定の表現を使うだけで、話し手の「望み」や「希望」を強く表す言い方はしないんですね。おもしろいです。

では、仮定表現を使った例文をもう少し見ましょう。
"I hope you (will) have a nice trip." これは未来のことについての希望です。
  • 楽しい旅行だといいね。(名詞文)
  • 旅行が楽しいといいね。(形容詞文)
  • 楽しい旅行になるといいね。(動詞文)

次に、現在のことについての希望。"I hope you are having a nice trip."
  • (あなたが) 旅行を楽しんでいるといいな。
この仮定の文は将来のことや現在のことを仮定する (assume) 場合には使えますが、過去のことに対しては使えません。
もともと、仮定の「と」は過去形の動詞を前に取りません。

では、過去のことについての希望はどう言うのでしょうか。"I hope you had a nice trip."
  • 楽しい旅行だった?(名詞文)
  • 旅行は楽しかった?(形容詞文)
  • 旅行楽しんだ?(動詞文)
このように、相手に質問をして楽しかったか、どうかを確認するのがいいでしょう。とっても基本的な文で、簡単ですね。

でも、"I hope" について色々考えていたら、「一筋縄(ひとすじなわ)ではいかない」ことを発見してしまいました! だから、一回では説明しきれないので、数回に分けて書こうと思います。とりあえず、今日のところはここまで。次回、また!





2015年1月3日土曜日

2015年 お正月

明けましておめでとうございます。2015年が始まりましたね。
みなさんの新年の抱負は何ですか?日本語をもっと勉強すると決めた人もきっといますよね。がんばってください!
私の抱負はもっと仕事をがんばること、もっと日本語について考えること、そして(趣味の面では)絵を描くことです。今まで絵は見るばかりだったんですが、今年はクリエイティブになってみようと思います。日常の物事への視点が変わっていく気がしています。

みなさん、今年もよろしくお願いします。
岡本 美奈子 (Minako Okamoto)


直訳できない "It's a beautiful day!"

 明けましておめでとうございます!今年もよろしくお願いします!! と言いながら、最近はブログの更新をなまけています。読んでくださる方、ありがとう。 2023年は世界に平和が訪れることを心から願います。歴史を振り返ると、人間は戦争を繰り返していますね。今までの人類の半分は戦争で死ん...