八重葎 茂れる宿は 人もなし まばらに月の 影ぞすみける
(やえむぐら しげれるやどは ひともなし まばらにつきの かげぞすみける)
簡単に説明すると、「草が茂って、荒れた家には人がいない。すき間のある屋根からもれる 月の光が澄んでいるだけだ」という さびしい情景をうたっています。(*1)
「すき間」という単語の「間」が今日のテーマです。「間」の意味は「物と物、人と人、所と所などにはさまれた部分」、または、「ある時から別の時までの長さ」、「二つのものの関係」などですね。
漢字「間」を分解すると、「門」+「日」になりますが、新選漢和辞典(*2)によると、元は「門」+「月」で、「門のあいだから月光がさしてくること」を意味していたそうです。上の短歌の情景と似ていませんか?
次に、「間」の発音を見てみましょう。音読みは「カン、ケン」で、訓読みは「あいだ、ま」です。
カン:時間、空間、期間、中間、週間 など
ケン:眉間(ミケン)、世間(セケン)
ゲン:人間 (多分、これだけ)
ま:居間、昼間、客間、晴間、手間 など
発音が多いですが、発音の基本的な規則性は「もう一つの漢字との組み合わせ」から見えてきます。「音読み+音読み」、「訓読み+訓読み」です。
「間」の場合は、「他の漢字の音読み+カン」と、「他の漢字の訓読み+ま」が基本のルールです。例えば、まの例の「昼間」は訓読み+訓読みの「ひる+ま」で、意味は文字通り「ひるのあいだ」です。これに対して、「夜間」というのは「よるのあいだ」という意味ですが、発音は音読み+音読みの「ヤ+カン」です。つまり、発音は漢字の意味によるという訳ではありません。
そして、カンが少し変化したものが、ケンやゲンです。でも、「音読み+音読み」の規則にはしたがっています。
もちろん、基本的ルールの例外もあります。まの例の「客間」(お客さん用の部屋)は「客」の音読み「キャク」+「ま」になっています。ただし、「客」には音読みしかありませんし、「間」が「部屋」の意味の場合は「ま」と発音するので、「音読み+訓読み」の組み合わせになったのでしょう。「部屋」を意味する「間」の他の例は、居間、日本間、洋間などがあります。例外はかなり複雑ですね。
「漢字はおもしろい」という外国人の声をよく聞きますが、それぞれの漢字の音読み・訓読みを覚えるのはとても大変なことです。気を長く持って、がんばってくださいね。
ところで、今日は良いニュースがありましたよ。みなさんの日本語の勉強のはげみになるニュースです。日本に10年間住んでいるイラン人女性が日本語で小説を書き、文学界新人賞をとりました。すごいですね。
(*1)『花にもの思う春』、白州正子、平凡社、1997年
(*2)「新選漢和辞典-第七版』、小林信明編、小学館、2003年