私はゴールデンウィーク中に仕事はほとんどしませんでしたが、ふだん忙しくて考える時間がないことを考えたりしました。その一つがこのブログについてです。長い間このブログを書いていて、昔書いたことは私の考えが足りなかったり、今は考えが変わったりしたこともあります。それで、これから少しずつ前の投稿をなおしたり、改善したりするつもりです。それだけではなく、新しいテーマで書くことも続けます。といっても、二つを毎月することは難しいので、どちらか一つになりそうです。
今回は最初の書きなおしです。テーマは「たら」と「なら」の違い。「たら」「なら」に限らず、日本語には "if" の表現が多いのでややこしいですよね。
では、まず「たら」のニュアンスを感じるために、「時」と「たら」を比べます。
「北海道出身のAさんは大学時代の友だちのユキに会う」という場面設定をします。
B:Aさん、いつユキさんに会うの?
A:今度 北海道に帰った時に ユキに会うよ。この会話では「帰る時」が大事です。「時」に焦点があります。
B:Aさん、今度 北海道に帰ったら、何をする?
A:北海道に帰ったら、ユキに会うよ。「たら」は "What if?" の感じがあり、条件の後で何をする?という「結果」に焦点があります。
日本に行ったら、何をする?
長い休みがあったら、どこに行く?上の質問からも "What if?" の感じがわかりますか?
そして、「たら」の「た形」には完了の意味があるので、その条件を達成した後で、後半の文が来るという時間的順序も大切です。
日本に行ったら、すしを食べよう。
長い休みがあったら、アイスランドに 行く。
【2つの行動の時間的順序】日本に行く→すしを食べる、長い休みをもらう→アイスランドに行く続いて、「なら」について。
C:Dさんは日本に行ったことがあるよね?私は夏休みに日本に行くかも。
D:いいね!日本に行くなら、おいしいラーメンを食べてね。「なら」は "If that's the case," の感じがあります。「あなたが言ったことが本当なら」 (If the thing you said before is true, ) という「条件」に焦点があります。
E+F:今、私たちは渋谷にいるよ。Gも来る?
G:EとFがいっしょにいるなら、私も行く!これはEとFがいっしょにいるという現在の状況を受けて、「それが事実なら/その条件があれば」Gは行くので、こんな英訳はどうでしょうか? ”Are you guys are actually together in Shibuya? If so, I'm coming." 「なら」は前に言ったことを条件にするので、"if so" =「それなら」という使い方も便利でしょう。
いっしょにいるHさんが暑そう。
I:(Hが)暑いなら、 冷たいものでも飲もうか?Hが「暑い」と言ったわけではありませんが、Iは現在の状況を受けて、「あなたが暑いことが事実なら」という意味です。
現在の状況について仮定する場合は、色々な "if" の表現の中で「なら」が一番ぴったりだと思います。
次に、「たら」と「なら」を同時に考えてみます。「たら」と「なら」の文が同じ意味にはならない場合。
JとKが同じ部屋にいます。Jはかばんからタバコを取り出しました。
K:Jがタバコをすうなら、外に行ってください。 (Are you going to smoke? If so, please go outside first.)
【2つの行動の時間的順序】 外に行く→タバコをすう「たら」と反対の順序です。「タバコをすうこと」は「外に行く」前に完了していないので、た形(すった)を使わないことがポイントです。「たら」はこの場合に使いません。
これに対して、「なら」は時間的順序については自由です。C+Dの例文「Cさんが日本に行くなら、おいしいラーメンを食べてね。」では「日本に行く」→「ラーメンを食べる」という時間的順序ですが、問題なく使えます。
次の例で「たら」も「なら」も両方使うことができますが、印象は少し異なります。
L:わー、この写真の本きれい!買いたいな。
M:Lが買ったら、私にも見せて。
L:Lが買うなら、私にも見せて。「たら」の文は「買う→見せる」がセットになっている気がします。「買った後に見せて」というリクエストが強い印象があります。
これに対して、「なら」の方は、「本当に買うの?それなら、 私も見るチャンスがある」という弱い印象でしょうか。
どちらも使えるので、小さい差を気にし過ぎるのも良くないと思います。他の "if" の表現も含めて、最初は使えない場合の規則を 覚えていった方がいいかもしれませんね。