2010年3月13日土曜日

「の」と「こと」の使い方

花粉症、春一番、桜の開花予想などの単語をニュースで目にすることが多くなりました。ということは、もうすぐ、春が来ますね。ちょうど今は季節の変わり目。日本の学校や会社では、3月は一年の最後の月、4月から新しい一年が始まるので、「季節の変わり目」とは天気の変化だけではなく、みんなの生活の変わり目でもあるんですね。大学の卒業に際して、はかま姿の女性を見ることもあるのでは?

さて、みなさんに質問して、答えてもらった「の」と「こと」についてですね。これに関しては、教科書や文法の本などで、みなさんはすでに色々な説明を読んだことがあると思います。そして、実はその色々な説明は私が納得できるものと、そうではないものがあります。このブログでは私が考える「の」と「こと」の使い方を書くので、みなさんが理解していることと違う点があるかもしれません。
でも、「の」と「こと」にはあいまいな点があり、日本人の使い方を見ても、どっちでもいいんじゃない?という場合があるのをご了承くださいね。

まず、「こと」の役割を説明します。文の中に「動詞を含む部分」+「こと」がありますね。「動詞を含む部分」=ある行動や状態。そして、「こと」がそれを「概念」に変えます。「概念」とは、出来事や事件、事実、事情、経験などの言葉に置き換えられるかもしれません。
文法的に説明すると、動詞+「こと」で、動詞を名詞に変えることができます。

それから「の」は「こと」と同じ役割を持っています。 ある行動や状態に「の」をつけて、それを概念化します。そして、「の」が表す概念は「事」だけではなく、「人」「物」「所」「時」「理由」など色々あります。

実際に例文を見た方がわかりやすいので、例文に移りましょう。(二つ前の投稿に出した例文を使います)
  • (A-1) 毎日ジョギングを続けることは難しい。
  • (A-3) 私は知らない町に行くことが好きです。
  • (B-3) 歌を歌うこと/のと、おどること、どっちが好き?
  • (B-5) 外国語を勉強することは時間がかかる。
動詞を含む部分:毎日ジョギングを続ける、知らない町に行く、歌を歌う、おどる、外国語を勉強する
これらに「こと」または「の」をつけると、毎日ジョギングを続けるという行為(=事)という意味になります。
B-4も似ているパターンです。でも、「の」を使うことができません。
  • (B-4) 私の趣味は絵を描くことです。(OK)
  • 私の趣味は絵を描くのです。(×)
「動詞を含む部分」+「こと」+「です」の場合「の」は使えません。動詞を含む部分」+「こと」+は/が~。の文の場合、「こと」を「の」に変えられます。この理由は、「~んです/~のです」と混乱してしまうからだと思います。(例:彼はいつ来るんですか?/来るのですか?)

次に「動詞を含む部分」+「こと」が「事実」の場合、「こと」と「の」、両方使えます。
  • (A-5)  山田さんがアメリカにひっこすことを知っている?
  • 彼女は妊娠していることがわかった。
  • 携帯が壊れていることに気がついた。
  • 私は前に彼に大阪で会ったことを忘れていた。(or 思い出した)
それから、「ことができる」「ことにする」「ことはない」など、決まった表現として使われる「こと」は「の」に変えられません。したがって、
  • (B-2) この店の名前を聞いたことがある? (OK)
  • この店の名前を聞いたのがある? (×)
今回のクイズにはなかったのですが「動詞を含む部分」がある行為を表して、さらにそれが「を」をとる場合、「こと」ではなく、「の」が良いと思います。*「こと」も使えるんじゃないかなあと思いつつ、「の」の方がやっぱり良いと思うんです。
  • 友だちは私がひっこすを手伝ってくれた。
  • 私は駅で彼が来るを待っている。
  • かぎを閉めるを忘れちゃった。
  • ダイエットをする!甘いものを食べるをやめる。
最後に「の」だけの使い方をもう一つ説明します。さっき、「の」が表す概念は「事」だけではなく、「人」「物」「所」「時」「理由」など色々あると書きました。「の」は文の内容によって、色々なものを表せるんです。
  • (A-2) 赤いくつと黒いくつ、どっちが似合う? → 赤いが似合うよ。
  • わあ、このお酒は強いな。もっと軽いがありますか?
これらの「の」は前に書いてある名詞、「くつ」「お酒」を表しています。同じ単語をくり返さないで、「の」を代用して、文をシンプルにしているのだと思います。次の文は長いけど、同じパターンです。
  • 友だちが映画を見たいと言ったので、昨日ダウンロードしたを一緒に見た。 (*「の」は映画ですね)
ここまでは、「の」は直前に使われた名詞、「くつ、お酒、映画」の代わりですが、「の」はもっと大きなというか、抽象的な単語を表すこともできます。例えば、「もの、人、所、時」などです。さらに、「の」がどれを示しているかは、直前に使われた名詞からわかるのではなくて、文の内容からわかるのです。
  • 私が生まれた東京です。 (*「東京」という場所の名前があるので、「の」が示す単語は「場所/所」になります)
  • 私が生まれたは東京です。 (上の文と同じ意味です)

  • 私がロンドンに住んでいた1998年です。 (*「1998年」という年があるので、「の」が示す単語は「時」になります)
  • 私がロンドンに住んでいた時期は1998年です。 (上の文と同じ意味です)

  • (A-4) このステーキがおいしいは神戸牛を使っているからです。 (*「~からです」があるので、「の」が示す単語は「理由」です)
  • このステーキがおいしい理由は神戸牛を使っているからです。 (上の文と同じ意味です)

つまり、「動詞を含む部分」+「の」だけを見ても、「の」の意味は推測できません。大切なポイントは後ろの部分、どんなキーワードがあるか、チェックしなければなりません。また、「の」が表している「場所、時、理由」は「こと」ではないので、ここで「こと」を使うことはできません。

これに関連して、次の文を見てみましょう。
  • 私の家は学校のとなりにあるから、いつも子どもたちが遊んでいるが見える。
この「の」が示すものは「いつも子どもたちが遊んでいる様子」ですね。そして、そういう様子や場面を表す時に使う単語は「こと」ではなくて、「ところ」です。(例:もうすぐ会議が始まるところです) したがって、この「の」は「ところ」に変えることができますが、「こと」はできません
  • 私は彼女がピアノを弾いているを聞いていた。
  • 私は彼女がピアノを弾いているを聞いていた。
このような場合は「こと」ではなくて、他の概念に置き換えられるので、「の」は使えるけど、「こと」は使えないという理解を私はしています。

以上、長くなってしまいましたが、みなさんの理解と同じでしたか?では、お疲れさまでした!

18 件のコメント:

マシュー さんのコメント...

すごい勉強になりました。長いけど、最後まで読んだので、よかった!

minako okamoto さんのコメント...

マシューさん、長い説明を全部読んでくれて、ありがとうございます。これを書くのに、私も色々考えましたが、やっぱり難しいトピックだと実感しました。

Ken さんのコメント...

岡本さんの説明が私の理解にほぼ似合ってて嬉しいです。思ったほど日本語には苦手ではないという事で、自信が湧いてきました。

随分勉強になりました!

minako okamoto さんのコメント...

Kenさん、コメントありがとうございます。色々な理解があるので、私のが絶対正しいとは言えませんが・・・
例えば、ある本では"A nomalizer, "no" indicates that the speaker of the sentence is somehow involved with the action."と書いてありますが、私は必ずしもそうは思いません。
「日本語を教えることは簡単じゃないよ」と私が言うこともあると思います。

連理の枝 さんのコメント...

私は、中国人に日本語を教えていますが、授業で、この「こと」「の」の使い分けがよくわからず困っていました。
文法ハンドブックでは、「の」のつかえない「こと」については説明があるのですが、「こと」が使えない場合の説目がじゅうぶんではありませんでした。

この説明を、見つけて非常にわかりやすかったです。ありがとうございました

minako okamoto さんのコメント...

連理の枝さん、コメントありがとうございます。お役に立てて、うれしいです。

中国で日本語を教えていますか?

何か質問があったら、教えてくださいね。

匿名 さんのコメント...

とても勉強になりました。ありがとうございました。なお「置き換えれられる」は「置き換えられる」ですね。

Minako Okamoto さんのコメント...

本当だ、間違っていますね。訂正します。
ありがとう。

LEE さんのコメント...

いつも悩んでいたところだったんですが、お陰様ですごく勉強になりました。ありがとうございます。

Minako Okamoto さんのコメント...

Lee さん、長い投稿を読んでくれてありがとうございます。自分でも読み返すのが面倒なぐらいです・・・

itumo さんのコメント...

こんばんは!大変いい勉強になりました!
さて、一つお聞きしたいんですが、日本語のセンスについて。
例えば、森さんが発言するのを聞きました。
私は森さんが電車から降りるのを見ました。

なぜ、発言した、電車から降りたのではないでしょうか。

Minako Okamoto さんのコメント...

itsumo さん、コメントと質問ありがとうございます。

日本語のテンス(時制)についての質問ですね。

森さんが電車から降りる:Mori is about to get off. まだ電車の中にいて、降りていません。

森さんが電車から降りた:Mori has got off. もう降りて、駅のホームにいます。

「どっちの場面を見たか」によって、テンスを選びます。ただ、「電車を降りる→電車を降りた」の行為は一瞬ですから、どちらを使っても意味の違いはほとんどないと思います。

でも、「森さんが発言したのを聞きました」は変な感じがします。森さんが話している時に、それを見たり、聞いたりしているはずですから、「森さんが発言する/しているのを聞いた。」がいいですね。

基本的に、日本語では文の最後の動詞がその文のテンスを持っています。

会社へ来る時、部長に会いました:最後の動詞「会いました」から過去のことだとわかりますが、「会社へ来る」という行為は「部長に会う」前に行われたので、過去形になりません。

わかりましたか。

itumo さんのコメント...

わかりやすく説明していただき、ありがとうございました!
これからもよろしくお願いします!笑

匿名 さんのコメント...

はじめまして。「の」と「こと」について調べていたところに、大変分かりやすい説明を発見し、とても勉強になりました。ありがとうございます。

機能語の前に付く名詞句について調べているところなのですが、それについて質問があります。「イ形容詞+の」「イ形容詞+こと」でも名詞句になりますが、下記の文の違いは何なのでしょうか。二つを並べると、①の方が自然に感じます。

①12月は忙しいのに加えて、出費も多い。
②12月は忙しいことに加えて、出費も多い。

また、状態の動詞を名詞句に変えた場合、こちらも①の方が自然に感じます。
①雨が降っているのに加えて、風もひどくなってきた。
②雨が降っていることに加えて、風邪もひどくなってきた。

色々な文献をチェックしてはいるのですが、なかなか納得できる説明が見つかりません。お教え頂けたら大変ありがたいです。
よろしくお願い致します。

Minako Okamoto さんのコメント...

浜さん、返事が遅くなりました。私は二つは同じものと考えています。
違いは浜さんのご指摘のとおり、「の」の方がスムーズに聞こえることだけだと私は考えています。
「の」と「こと」が入れ替えできる他の例文も全て、「の」の方が自然に聞こえます。皆が話しているうちに「こと」をさらっと言えるように「の」に変化していったのではないでしょうか?
「と言う」が「って言う」に変化したように。どう思われますか?

匿名 さんのコメント...

ご返信ありがとうございます。
なるほど、言いやすいように語が変化していったということですね。
私もそうではないかと思いながら調べていたのですが、結論を記している文献が見つからなかったので実際はどうなのだろうと、すっきり出来ずにいました。
ありがとうございました!

austinding さんのコメント...

勉強になりました、ありがとうございます。
日本語の勉強はすでに五年目になりましたが、「の」と「こと」の違いは初めて気付きました。
今までずっと勘で使っていましね、最近ある台本を翻訳し始め、勘だけじゃ足りなくなってきた。笑

Minako Okamoto さんのコメント...

austinding san, コメントありがとうございます。
そうですね、翻訳を始めたら、勘ではできないでしょうね。
これをきっかけに、文法や規則も勉強してみてください!