2010年8月18日水曜日

「くれてやる」の意味

前回の投稿で「くれてやる」の意味やニュアンス、使い方がわかりますか?という質問をしました。今日はその答えを書きます。
アニメで「くれてやる」を聞いたことがあるというコメントをもらいました。実は、私も最近マンガで「くれてやる」を見つけたので、それについて考えてみたのです。実際の生活で、私は「くれてやる」を使ったことがないし、他の人が使ったのを聞いたこともないと(多分)思います。

まず、「くれる」と「やる」を二つに分けましょう。そして、「やる」の方を見てみましょう。
やる」は教科書でも説明されているから、みなさんも知っていますね。「くれてやる」の「やる」は「あげる」と同じ意味で、使い方は「年上→年下」「目上→目下」「人間→動物/植物」の場合に使われます(注意:「やる」は他の意味もあります。)

  • 毎朝、私は花に水をやる
  • 私は妹に勉強を教えてやった

ただし、「やる」には「私が上の人、相手は下の人」という意味があるので、その印象は「えらそうな感じ」です。ちなみに、日本人はこんな印象を「上から目線(めせん)」と表現しています。植物や動物に対してなら、問題ありませんが、会社や友だちの中で「上から目線」の「やる」を使うと、「失礼」とか「不愉快」に感じる人が多いでしょう。私は「やる」は使わないで、「あげる」をいつも使っています。

次に、「くれる」です。日本語の教科書には下記のようなことがたいてい書いてありますね。これはみなさんも理解しているはずです。

  • 他の人が自分に、または自分側の人にものをあげる
  • 他の人が自分に、または自分側の人に何かをする

でも、国語辞典(*1)を開くと、別の意味も書いてあるんです。

  • 自分が相手にものを与える。
  • 自分が相手に対してある行為をする。
  • 相手を自分より低い者として、いやしめる気持ちを込めた言い方。
  • 「くれてやる」の形になることが多い。

つまり、「やる」と同じ意味、そして同じ使い方です。例文も「鳥にえさをくれる」。

したがって、「くれてやる」の元の意味は「あげる+あげる」=「あげる」ということですね?!

前回、私が出した例をもう一度見てみましょう。


兄と弟がゲームをしていて、弟が勝ちました。

弟: やった、僕が勝った。お兄ちゃん、僕にあの時計をくれる?

兄: くれてやるよ。

兄の「くれてやるよ」は「あげるよ」という意味です。兄は弟に時計をあげます。ただ、ここには二重の「上から目線」があります。だから、「乱暴」な印象があります。
さらに、その時計は兄にとって大切な物で、実はあげたくないけど、約束をしたから、弟にあげる。「恩着せがましい」です。
「上から目線」「乱暴」「恩着せがましい」、全て良いものではありませんね。相手をいやな気持にさせてしまいます。だから、「くれてやる」を使うことはめったに無いのです。

でも、調べてみると、方言では「くれてやる」を「あげる」と同じ意味で使うそうです。その場合は、「くれてやる」と言った人に悪気は全然ないそうです。でも、普段これを使わない人が聞いたら、やっぱりビックリしてしまうそうですよ。

*1 デジタル大辞泉、小学館

11 件のコメント:

Jonathan さんのコメント...

やはり恩着せがましい言い方だったんですね。二重の「あげる」がそうなるのが面白いですね。

「くれる」に「やる」という意味もあるのも面白いです。らんまを襲って飛んでくる人が「~くれてやる」と叫ぶのを今まで疑問に思っていましたが、やっとあの謎が解けましたね。(当時、辞書を引いたのを今、思い出しました。忘れてたみたいです。〈恥〉)

いつか使ってみたいと思いますですが、あまり使える場面がないですよね。

詳しく説明してくれて本当にありがとうございました。すてきな先生ですね!

minako okamoto さんのコメント...

そうですね、マンガやアニメなどで、けんかの場面で「くれてやる―!!」は良く使われるでしょうね。
例えば、友だちとトランプで遊ぶ時に、自分が負けてしまって、相手に良いカードをとられる場合などに、ふざけて「このaceをくれてやるっ!」と言うのはOKですね。

Marco さんのコメント...

「あげる」も少し上から目線な言い方だとおもっていましたけど、そうじゃないですか?
例えば:
A:この数学の問題がわからない!
B:僕が教えてあげよっか!

Bの言い方はちょっと「偉そう」に聞こえるが、そうでもないでしょうか。気になります!

minako okamoto さんのコメント...

Marco sanの言う通りです。
「あげる」も「上から目線」の印象があります。「私があなたのために、わざわざするんだよ」という感じですね。

でも、二人の関係や場面にもよるので、必ずしも「えらそう」という訳ではないですが・・・

親しい仲なら、「手伝ってあげるよ」「やってあげるよ」などと言っても、大丈夫です。

あまり親しくなかったり、目上の人には「手伝いましょうか」「やりましょうか」と言った方がいいですね。

Marco さんのコメント...

なるほど、これですっきりしました!
ありがとうございます!

Chris さんのコメント...

岡本さん、こんにちは。
昨日は、「気前」という単語の意味を確認する時、岡本さんの投稿のお陰で注意して、意外にこの「くれてやる」を見付けました。辞書には「金品を惜しげも無く人にくれてやるかどうかという観点から見た、その人の性質。」と書いてあります。
岡本さんのこの投稿を読む前に、この「くれてやる」という言い方を一度でも見たことがないと思いました。この単語を調べるのは初めてではありませんが、前に全然知らなかったので、脳に大したものではないものとして濾過されたのかもしれませんね。
そして、「くれる」の意味もちょっと確認しょうかなと思って、そうしました。やはり、面白いものを発見しました。
Iの2の項目で、このようなものがありました。
「2 〔けいべつしている相手に物を〕与える。
用例?作例
目もくれない〔=△自分の関心事では無い(顧みるに値しない)ものとして、無視する〕」(辞書はMicrosoft Bookshelf 3.0の
搭載した第五版の新明解国語辞典です。)
「目もくれない」という表現は何回会っていますが、前にずっとこの「目もくれない」ものの立場に立って、このものがくだらないすぎるので、人にちょっと見ることもくれない(可哀相ではないか、はは)と思っていました。この思うように、何とか意味も通じるようですね。でも、もともと人の立場に立つべきなのでしたね。これも日本語は表現の立場では物より人のほうがましだという不文律に吻合するでしょう。本当に面白かったですね。
ところで、私は「くれてやる」とは二重の「あげる」とは思いませんが。前の「くれる」なら、大分「施す」と言えるでしょう。実質的な動詞です。後の「やる」は文法的作用の補助動詞です。それで、意味では「施してやる」と見られるでしょう。
でも、なぜぞんざいみたいな「くれてやる」が辞書の解釈のような書き言葉の文に用いられたのでしょうか。もしかして、ほとんど使われない人に何かを施すという意味の固定した言い方ではないでしょうか。
それ以上、ありがとうございます。

minako okamoto さんのコメント...

クリスさん、

私が「くれてやる」は二重の「あげる」と書いた理由は、大きな意味で考えた場合、「くれる」も補助動詞の「やる」も「あげる」の意味を含んでいるからです。
「くれる=施す」という説明はもちろん、正しいです。ただ、「施す」も「あげる」の意味を含んでますね?

「気前」の説明で辞書に「金品をくれてやる・・・」と書いてあったのですね。辞書の説明としては、乱暴な印象を受けます。
それに、「くれてやる」は「あげるのはもったいないけど、俺はいっぱい金があるから、金のないお前たちにあげるぜ!」という感じがあります。
「おしげもなく」と「くれてやる」は合致しないと私は思います。

「金品をおしげもなく人に与える/あげる」の方がいい説明になると思います。

Chris さんのコメント...
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Chris さんのコメント...

岡本さん、ご返事、ありがとうございます。
やはりその言い方は辞書の解釈としてはふさわしくない感じがするのですね。岡本さんの言ったようなほうがもっとふさわしいと思います。
ご返事を読んだあと、もうすこし考え直しました。私は岡本さんの解説に反対したというわけではありませんでした。二重のあげると言ったのはあくまで問題をもっと理解しやすくする方法だけです。私は何か心理的原因なので、「くれてやる」の「くれる」をひとつもっと実質的な動詞で標記したかったのです。この原因を聞いたら、たぶんずっと「くれる」に対する意味と使い方の印象なので、「やる」と一緒にすれば、ちょっと違和感があるというわけかもしれません。所詮、これは全部私自分脳内の調整なのですが、この知識を身に着けるのがなによりですね。
ところで、私の認識上の狭さと未熟の原因で、もし何か失礼なことと変なことを言ったら、岡本さんはおかしく思わないでください。私はよくそのような問題に緊張しています。時には自分なりの考えを言いますが、論争する意味なんて全然ないのです。私も日本人の友達と討論の過程に自分が日本語を話す時の考え方をもっと自然的な、日本人らしいように修正したいのです。

minako okamoto さんのコメント...

Chris san,
クリスさんの解釈を書くことについて、全然気にしないでください。私も色々な意見を聞いた方が勉強になるので、ありがたいです!
クリスさんが日本語について、深く考えていて、またそれを日本語で表現できることが素晴らしいと思いますよ。

Chris さんのコメント...

岡本さんに褒めて励ましでいただいて、ほっとして、超うれしいです。あいがとうございます。
それでは、私は遠慮せずに、問題の究明にどんどん努力し続けていきましょうよ。