話は年末に戻りますが、「仕事始め」の反対の言葉は「仕事納め」(しごとおさめ)。年末年始には「仕事納め/始めはいつですか?」という質問がよく聞かれます。この「おさめる」という単語の説明をしてほしいというリクエストがあったので、今日はそれを書いてみます。
まず、「おさめる」には「納める」「収める」「治める」の漢字があります。
- 納める・収める:きちんと入れる
- 収める:手に入れる
- 納める:お金や物を渡す
- 納める:物事をそれで終わりにする
- 治める:乱れているものを落ちつかせる、世の中を秩序ある状態にする
このように見ると、色々な使い方があるように思いますが、実は基本は「物事があるべき場所にある」とか「物事があるべき状態になる」という意味なのでしょう。
日本語はもともと音が少ない言語ですし、漢字で複数の意味が表わせるので、音/ひらがなが同じでも、意味が違うという場合がよくありますね。この特徴を生かして、言葉遊びを楽しんでいる作家もいます。
多和田葉子(たわだ ようこ)は『かける』という作品で動詞の「かける」を何回も使って、文章を作りました。辞書を引くとわかりますが、「かける」はたくさんの意味がある動詞です。『かける』から最初の一文を引用してみます。
枕にカヴァーをかけ、ブラウスにアイロンをかけ、掃除機をかけ、洗濯機をかける主婦の仕事にはあまり縁のないわたしでも、朝食のトマトには塩をかけ、原稿を書くためにめがねをかけ、椅子に腰をかける。(*1)
長い文の中に「かける」が7回も使われています。「掃除機をかける」と「洗濯機をかける」 は同じ意味の「かける」ですが、これ以外は全部意味が違いますね!興味のある方は続きを読んでみてください。
*1 "Read Real Japanese Fiction", editted by Michael Emmerich, Kodansha, 2010
2 件のコメント:
どうもありがとうございました
Afi san, 簡単な説明になってしまいましたが、よかったでしょうか?
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