2010年5月8日土曜日

マンガの日本語 「っていう」

今回も前回に引き続き、ワインのマンガ『神の雫』(かみのしずく)を使って、「というっていう」の表現を説明します。

④ ・・・・・という
・・・・・は X のくわしい説明や意味
前回書いたように、このマンガでは主人公、しずくと、彼のライバル、とおみね(ワイン評論家)がある難題にチャレンジしながら、話が進んでいきます。では、彼らがチャレンジする難題はどんな難題でしょうか?
しずくと とおみねは「ワインの味わいを言葉で表現する」という難題にいどむことになる。

「ワインの味わいを言葉で表現する」が難題の内容です。

また、 フレンチレストランで働くウェイトレスがある素晴らしいワインをうっかり割ってしまいました。そのワインの価値の高さを説明する時には、次のように言っています。
「それは年間700本しか造られていなくて、市場価格は20万円以上、希少価値は高く、現在日本のどの輸入代理店でも入荷した」という話は聞いていません。
そのワインについての詳しい話が「     」の中で説明されています。

⑤ ・・・・・ということです

この「こと」は「意味」と考えてよいでしょう。ですから、④のように、・・・・・の部分は「意味」の説明になります。

実は、しずくのライバル、とおみねは、しずくの父親(世界的に有名なワイン評論家/コレクター)が死ぬ直前に、彼と養子縁組をしていました。これを弁護士が説明します。つまり、この養子縁組の意味は
「とおみねさんと しずくさん、二人が 先生のいだいなワインコレクションをあらそうライバル」ということです
また、二人の女の子が2本のワインを飲み比べている場面があります。同じ名前のワインですが、1999年と2000年のワインを飲んでいます。一人が教えます。「2000年は雨が多くて、ぶどうの質がいまいちだった。」
だから、「2000年のワインの方がおいしくない」ってことだよね
別の女の子が、「質の良くないぶどう」が意味することを確認しています。

では、最後に最近よく使われている表現、 ⑥ X っていうか
最初に X と言ったものの、自分の表現をあれこれ考えて、Y の方がより良い表現として、使われています。
例えば、初めてワインの素晴らしさを知ったしずくは、最初はこう言います。「ワインってすごい!」。でも、「すごい」は日本人がどんな場合にもすぐ使う表現ですね。それで、彼は「すごい」だけでは何か足りないと思ったのでしょうね。次に、こう言います。
ワインってすごいっていうか、奥深い。
「すごい」 (X) だけじゃなくて、ワインの世界は「奥が深い」 (Y) 、もっと勉強することがあるという表現の方が、ふさわしいと思ったのでしょう。

また、高くない普通のワインを飲んだ人がそのワインのおいしさにびっくりした時、次のように言いました。
おいしいっていうか、私が知っている高級ワインに全然ひけをとらない。
ここでは、「おいしい」 (X) では、表現が足りないと思い、「他の高級ワインと同じくらいおいしい」 (Y) と表現を追加しています。

ただし、最近は「っていうか」の使い方が変化してきています。より良い表現を探しているというより、相手とは言いたい内容が違う場合、つまり「あなたの言いたいことはともかく、私の言うことを聞いてよ」という気持ちを表す時に使っていると言えるでしょう。(*1) 例えば、 最近見たダイエット食品のコマーシャルでは、ダイエット中の二匹の猫が会話をしています。
猫1: 最近、運動やってる?
猫2: やってるっていうか、(このダイエット食品を)食べてる。

この「っていうか」の使い方は、運動をやっているか、どうかは関係ないよ、このダイエット食品さえ食べていれば、やせられるよ、という意味を含んでいます。

そして、このような使い方は相手の話を受け流して、自分の思いついたことをただ口に出しているだけで、相手のことは考えてはいないように聞こえます。ですから、この使い方に対して、「子どもっぽい」とか「教養がない」という印象を感じる人も多いでしょう。(*1)
ですから、私たち日本人が「っていうか」を使う時は気をつけないといけないですね。

「という/っていう」は単語と単語、またはフレーズと単語をつなぐために使われているので、それ自体に特に意味がないとも言えるでしょう。でも、本やマンガなどを注意深く読むと、この「という/っていう」がすごくたくさん使われていることに気がつきます。話す時にはその使い方を知る必要がありますが、読む時には、それを読み流しても文全体の意味はわかるのではないでしょうか?

*1:『問題な日本語』、北原保雄編、大修館書店、2004年

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