2009年6月18日木曜日

雨と水

日本は今、梅雨(つゆ)の季節です。今週は夜ににわか雨が降ることが多くて、月曜日と火曜日の夜は帰宅時どしゃ降りの雨の中をあるいて、びしょ濡れになってしまいました。今日は小雨が降ったり、やんだりしています。

初夏と夏の間に「梅雨」という雨の季節があるし、「秋の長雨」という時期もあって、日本は雨の多い国ですね。ですから、日本語にも「雨」を表す単語や表現が多くあります。上記のほかにも、夕立ち(ゆうだち)霧雨(きりさめ)雨模様雨男/雨女などなど。

雨は「空から降ってくる水」ですから、今日は「水」に関連する事を書こうと思います。
まず、「水」とは冷たいものです。これは今日のテーマの基本です。そして「温かい水」や「熱い水」という表現はありません。水が温かく/熱くなると、それは「お湯」になります。ちなみに、水が凍ると、「氷」になります。

次に、「やかんに水を入れて、火をつけて、??をわかす」と言うでしょうか?「わかす」とは「水を熱くすること」なのに、日本語では「水をわかす」とは言いません。「お湯をわかす」と言うのです。

これに対して、ある本(*1)で、英語では次のように言えると書いてあります。
The kettle was not quite boiling when Miss Somers poured the water on to the tea, ........ Miss Griffith, the efficient head typist, ......said sharply : "Water not boiling again, Somers!"                   Agatha Christie, "A Pocket Full of Rye"

それでは、次に下の例文を見てください。どれが正しいでしょうか?

  1. 水を 冷やす。(ひやす)

  2. 水を 冷ます。(さます)

  3. お湯を 冷やす。

  4. お湯を 冷ます。

正しい答えは1と4です。「冷やす」とは「冷たい物をもっと冷たくすること」で、「冷ます」とは「冷たくないものを冷たくすること」です。例えば、

  • このビールはあまり冷たくないから、もっと冷やそう。

  • このお茶は熱くて、飲めないから、ちょっと冷まそう。

また、「冷やす(ひやす)」と「冷ます(さます)」は他動詞ですが、「冷える(ひえる)」と「冷める(さめる)」は自動詞です。

最後に、雨の話に戻ると、日本の歌には「雨の歌」が多いそうです。雨が恋に泣く人の涙と結びつくのでしょう。そして、その背景に日本的なものがあるという説明を読みました。(*2)

日本でお米を作る過程の田植えは長雨の時に行われる。昔の日本人は田の神様を迎えるこの時期に、恋愛生活を中止する習慣があった。恋人たちは会いたくても会えない時期を雨と共に過ごしたので、その記憶が日本人の心に残って、「雨」と聞くと、せつない気持ちになるのだろう、という訳です。

興味深いですね。日本の歌を聞く方は、そんな日本人の心理状況を想像しながら、今度聞いてみてください。

*1) 『ことばと文化』、鈴木孝夫、岩波新書、1973年

*2) 『天声人語 自然編』、辰濃和男、朝日新聞社、1988年

3 件のコメント:

Jonathan さんのコメント...

極めて面白い記事でした!「冷える・冷やす・冷ます・冷める」の四つの言葉の違いはよく理解できていませんでしたが、この記事を拝読したらぴんときました。

和英辞典を引くと、どの言葉も「to cool down」もしくは「to become cool」という定義が載っているんですが、これだけ説明不足ではありませんか。(それ故、和英辞典をできる限り使わないようにしているわけです。)

雨の表現も揃えてくれてありがたいです。とても役立つ記事ありがとうございました。

minako okamoto さんのコメント...

和英辞典は「冷える」と「冷める」の使い分けができる日本人のために作られた辞書ですから、英語の説明が足りないことがあるでしょうね。
上級者のみなさんは日本語の単語を日本語で説明してある国語辞典を使ってみてもいいですよね。

Jonathan さんのコメント...

そうですね、和英辞典は日本人向けのものなんですね。時々それを忘れてしまいます。〈笑〉普通は広辞苑を使いますが、定義が長くて複雑なこともあるんですね。でも、日本語の単語がわかるように国語辞典が一番かな。