- 友だちに電話をかける (call)
- 絵を壁にかける (hang)
- ドアのかぎをかける (lock)
- お金をかけて、ゲームをした (bet)
- とうふにしょうゆをかける (pour)
- 家までかけて、帰った (run)
- 2 かける 3は 6 (multiply) などなど・・・
でも、今日は一つの意味だけに注目しましょう。まず、次の文を比べてみてください。
- 私は 旅行のことを 友だちに 話した。
- 私は 旅行のことを 友だちと 話した。
何か、違いを感じますか?1の「に」は動作の方向性を表しているので、「私→友だち」、一方通行に話している絵が見えます。2の「と」は対等の立場を表しているので、「私→友だち」と「友だち→私」お互いに話している絵が見えます。 ある本(*1)に良い例があげられています。
- 僕は 彼女に キスをした。
- 僕は 彼女と キスをした。
1は「僕が彼女に近づいていく様子」、2は「二人がお互いに近づいていく様子」が目にうかびます。 「電話をかける」の「かける」には、この「に」と同じ役割があると思います。「相手に向かって、なにかをする」 次の例も同じ意味ですね。「私→彼」の絵が見えますか?
- 私は 彼に 声を かけた。
- 私は 彼に めいわくを かけてしまった。
- 私は 彼に 大きな期待を かけた。
それから、「動詞+かける」の例には「話しかける」や「笑いかける」などがあります。これらも「ある人から相手に向かう動作の方向性」が表わされています。しかし、どの動詞にでも使える訳ではなくて、使える動詞は限られています。例えば
- 通りで友だちを見たので、私は 彼女に 呼びかけた。
- 私が 彼に 問いかけると、彼は 答えてくれた。
- 私は みんなに 真剣に 語りかけた。
- 犬が逃げてしまったので、私は 犬を 追いかけた。
- 私は 友だちに 相談を 持ちかけた。
- この会社の協力を得るために、私は 彼らに 働きかけている。
さらに、「私は友だちに話した」と「私は友だちに話しかけた」の違いは、「話しかける」は「相手の名前を呼んで、会話をスタートさせる最初の行為」です。例えば、「山田さん、元気?」と言って、話し始めることは「話しかける」です。その後、何かについて友だちに話す、または話しつづける。
また、「話しかけて来る」なら、「他の人の行為が私に向って来ること」を表しているから、「他の人→私」の絵になります。
- 急に 彼は 私に 話しかけて来た。
- 急に 私は 彼に 話しかけられた。(受け身形)
上の二つの文は同じ状況を表しています。あ~、どんどん複雑になりますが、とにかく「かける」の方向性、つまり、矢印(→)の向きがわかれば、良いのではないでしょうか?まだ、質問があれば、ぜひ聞かせてください。
(*1)『問題な日本語』、北原保雄編、大修館書店、2004
6 件のコメント:
こんにちは!
ビンスと言います(Vince)。 いつも皆さんのため、素晴らしい教育的な投稿を作ってくれて本当に有難うございます。「かける」という不思議な言葉の意味がやっとわかりました、と思います。
しかし、もう一点をお願いしたいんですけど。それは「かかる」という言葉です。「かかる」は「かける」と関係が感じられるんですけど、はっかり分からないので、・・・助けていただけないでしょうか。
ありがとう。
Vince-san,コメントありがとうございます。
「かける」と「かかる」は 確かに関係がありますね。ヒントは「かける」は他動詞(たどうし)。「かかる」は自動詞(じどうし)、そして、受け身の意味があります。
ちがいを考えてみてください。
岡本先生
夏が近づくにつれ天気が温かくなりつつありますね。私も日本の桜前線が見たいものです。ぜひ私の分も桜が咲くのを楽しんでください。
さて、また情報たっぷりの投稿ありがとうございます。
「家までかけて、帰った」という言い方は私は知りませんでした!漢字で書くと、確か「駆ける」にあたるでしょう。使ってみたいです。
「授業に遅刻しそうだったので、教室まで駆けた。」
この文はいかがでしょうか。
「大きな期待をかける」という言い方も身に付けました。
「かける」って本当に多用性のある言葉ですね。ところで、「食べかける」から「食べかけの~」という形もありますね。「おい、この食べかけのサンドイッチは一体誰んだよ!」とか言えるのではないでしょうか。
Hi Jonathan, いつもコメントありがとうございます。
「動詞+かける」には「まだその行為が終わっていない、始まったけど、途中だ」という意味もありますね。食べかけ、飲みかけ、やりかけ、言いかけ・・・
レストランでまだ「食べかけ」なのに、そのお皿を下げられたら、すごくイヤですよね?
こちらこそ、いつも面白い記事を書いていただいてありがとうございます。しかも、我がブログへのリンクを載せていただいて嬉しいです!
「お皿を下げる」という表現を私は知らなかったんですよ。まさか皿の片付けを「下げる」というなんて思いませんでした。コメント欄も勉強になりますね。
とにかく・・・うん、嫌ですよ。「まだ食ってんだから下げんな!」って感じです。〈笑〉
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