2009年2月7日土曜日

日本語の"I"

先日 韓国人の友人からおもしろい話を聞きました。

まず、韓国と日本のことを少し話すと、この二つの国は似ているようで、違うよう。親近感があるようで、歴史の問題のせいで反発感もある。習慣や考え方を比べると、すんなり受け入れられる事と、びっくりしてしまう事があるんです。

日本のことを知っている西洋の方たちは、「日本は礼儀作法が厳しい」「日本では上下関係(年上の人と年下の人の間の関係)が大切なんだ」「仕事の時はいつも敬語を使わなくちゃ」とか、日本で気をつけなければならない事がたくさんあると思っていますね。

でも、私は韓国のそういう話を聞く度に、びっくりしてしまいます。韓国は日本以上に人間関係のマナーが厳しいんです。例えば、上司や先輩にお酒をすすめられたら、断わってはいけない。必ず飲まなければならない。さらに、目上の人の前でお酒を飲む場合は、目上の人に飲んでいる姿を見せないように、体の向きを変えて飲む!!

また、「友だち」という言葉の定義は「同じ年齢で気の合う人」であって、年上や年下の人と仲良くなっても、その関係を「友だち」と呼ばないそうです!それは「先輩」または「後輩」でしかないそうです。

日本でこういう事はないでしょう。

ところで、私の韓国人の友人(私たちは同じ年ですから、友だちです)は日本に来る前に、韓国で日本語を勉強しました。そこで先生に「日本で、大人の男性は【僕】を使ってはいけない。【私】を使うべきだ」と教えられたそうです。

ですから、彼は日本に来て、会社で【私】を使って話しました。それなのに、日本人の同僚はみんな、【僕】を使っている。その時、彼は「自分が韓国人だから、日本人たちは自分に対して、ていねいではない、失礼なんだ。これは人種差別だ!」と感じたそうです。

しかし、しばらくたって、彼はその日本人の同僚から、「どうして【私】を使うの?【私】はかたすぎる。【僕】を使った方がいいよ。」と言われて、日本人の【僕】の使い方を習いました。
仕事場でも毎日一緒に働いている同僚と話す場合は、【僕】を使って、カジュアルに話すのが普通ですね。会議、またはお客さんや初対面の人と話す場合は、【私】と言った方がいいでしょう。【僕】を使ってしまっても、大きな問題ではないし、動詞で敬語を使えば、文全体がていねいな感じになるので、大丈夫です。

友だちと話す時に、【私】を使う男性はいないでしょう。相手が年上でも仕事の外の人なら、【僕】を使っても問題ありません。

もう一つおもしろい話は、この友人は日本人からは「【僕】を使った方がいい。」と言われたのに、外国人の友だちからは 「どうして、あなたは【私】を使わないんですか?それは良くないよ。」と言われるそうです。外国人の方が日本人より「ていねいであること」に気をつかっているようですね?
失礼な態度をとらないようにすることは大切ですが、ていねい過ぎるのも変な感じになってしまいます。そのバランスをとりながら、日本語が話せれば、自然な日本語になるのだと思います。

ここで、【僕】に関する歴史(*1)を紹介します。【僕】は江戸時代には主に漢文(漢字だけで書かれた文章)の中で使われていた書き言葉でした。意味は「あなたの僕(しもべ)」、つまり、「めし使い」です。この時、【僕】は自分を「めし使い」と呼ぶためのけんじょう語だったんですね。それが今では、話し言葉になり、目上の人に対してや、フォーマルな場合に使わない方が良いことになっています。
また、1952年に国語に関する会議があり、そこで「【僕】は男子学生の言葉であるが、社会人となったら、【私】を使うように教育上、注意すること」と文部大臣(the minister of education)に意見が提出されました。このことから、【僕】が【私】より「ていねいではない」と見なされていたことがわかりますね。でも、今は【僕】は「ていねいではない」と思う日本人は少ないのではないでしょうか? 親しみが感じられる言葉だと思います。

個人的に、私は【僕】は好きですが、【俺(おれ)】はあまり好きじゃないです。ちなみに、【お前】は大嫌いですね。

(*1)『ことばと文化』、鈴木孝夫、岩波新書、1973年

5 件のコメント:

Alistair さんのコメント...

ありがとうございました。

本当に面白かったです。私はこの問題について悩んでいました。本当は英語の"I"が使いたいですけど、日本語にはそういうような一人称はないですよね。

前の彼女に「あなたに俺と僕は似合わないよ「私」を使って欲しい」と言われました。確かに似合わないですけど、「私」は丁寧すぎると感じて使いたくなかったのです。結局優しくて、おとなしい友達が「俺」を使うことに気が付いて私も使うことにしました。

「俺」が好きとは言えないですけど、友達と話す時「俺」の方がましだと思っています。

どうして俺とお前が嫌いですか。友達と話す時「僕」は子供っぽくないですか。

minako okamoto さんのコメント...

Alistairさん、コメントありがとうございます。
「俺」も悪くはないと思います。友だちと話す時に使うのは失礼でもありません。
ただ、「僕」の方がやさしい感じと、親しみがあって、私は好きです。
「お前」は男性と男性の間で使うのは問題ないと思いますが、私が男性から「お前」と言われたら、私はすごく怒ります。「その男性は自分の方がえらいと思っている」と私は感じます。「お前」は上の人から下の人に話している感じです。
でも、これは私の意見です。
人によって、感じ方はちがいます。おもしろいですね。
Alistairさんの前の彼女の意見と別の女性の友だちの意見もちがうと思いますよ。

Jonathan さんのコメント...

へ?僕、数日前にコメントをしたはずですが・・・。失敗したでしょう。残念です。

とても面白い記事でした!僕も【俺】か【僕】かどっちを使えばいいか自然に聞こえるか考え込んだ頃がありました。結局【僕】にしました。一人の日本人の女性の友達に聞いたら「【僕】のほうが優しそうに聞こえてジョンさんに合うと思う!」と言われたんです。自分でも【俺】に何か威張っている姿勢が入っているじゃないかなと思います。そういうことでもないかもしれませんが。

ここで、質問したいことがあります。僕は女性の友達に【きみ】を使ってもいいと思いますか。【お前】はやっぱり【俺】と同じように僕に合わないと思いますが、【お前】じゃないと何と言ったらいいですか。岡本さんは【お前】と言われるのが嫌なようですが、【きみ】ならどうですか。【きみ】にも、上の人から下の人に話しているという感じが入っているんですね。(日本語の上下関係って時々とても面倒くさいですよ!)他にお勧めはないでしょうか。

よろしくお願いします。

minako okamoto さんのコメント...

「きみ」はテレビドラマや映画、マンガ、歌などでよく使われていますよね。でも、実際の生活ではあまり使わないと思います。私も他の人から「きみ」と呼ばれることはないです。
「きみ」と呼ばれても、失礼な感じはしませんが、めったに使われないので、「親しさ」は感じられません。私の名前を知らない人が名前の代わりに「きみ」を使うことはあるでしょう。このことからもわかるように、「きみ」は「他人ぎょうぎ」な印象です。
一番良いのは相手の名前を呼ぶことです。名前だけ、または「さん」や「ちゃん」を付けることによって、印象や相手との関係を表せますね。

Jonathan さんのコメント...

そうですか。面白いです。ありがとうございました!